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「そちらの赤い服の女性」と言ってしまった件

#多様性を考える

先日、会社(外資、テック系)のイベントでお客さんを50人ほどお招きしてセミナーのようなことをした。前半はレクチャーやワークショップ形式でのやりとりをして盛り上がったあと、最後に質疑応答のセッションで締めくくる。質疑応答の時間は、質問のある人は手を挙げて、司会者(私)が順番にあてるとそこへマイク係が走ってゆくという流れ。

複数名の手が上がっていたとき、私はマイク係に向かって「そちらの三列目の赤い服の女性が早かったので、お願いします」と言った。口にした瞬間、しまった、と一瞬思ったのだけど、撤回するのもおかしいのでそのままにした。

そして赤い服の女性(に見える人)にマイクが渡り、質疑応答を終え、イベント自体はとてもうまく行ったのだけど。あとになって、参加していたチームメンバーから「ワカメさん、赤い服の女性、って言いましたよね」「女性かどうか、わからなくないですか」「赤い服の方、って言った方がいいですよね」と言われる。

はっ!!!! やっぱりそうだよね。口にした瞬間、間違えたとは思ったんだ私も、ありがとう、と伝える。

性別というのはバイナリーではない(男か女かでは二分されない)というのはもう社会のコンセンサスだし、ましてや目の前の人が男性に見えるか女性に見えるかという判断も思い込みによる推測に過ぎない。

例えば自分のチームの部下についても、厳密には私は彼らの性別を知らない。おそらくこの人は男性(女性)だろうな、と言った推測は私なりに持っているし、人によっては「私のことは三人称は彼、He/Himで呼んでください」と明示してくれるのでこの人の性自認は男性なのだなと理解するけれど、それがじゃあ果たして生物学的な事実なのかといったデータとして持っていないし、確認するべきではないと思っている。ザッツまさに個人情報、ナン・オブ・マイ・ビジネスというやつだ。

ましてや、性的指向についてはさらに分かりようがない。私から、「あなたは異性愛者ですか?」と言った立ち入った質問はしないし、同じ理由から異性愛者であろうという前提での会話もしない。相手が開示してきた場合は、そっと受け取るけれど、女性に(見える人)に対して「彼氏はいるの?」と聞いたりはしない。

ついでに言うと、部下の年齢のデータも持っていない。特に必要な情報ではないのと、年齢で差別されていると感じられるリスクの方が大きいので余程親しくならないと聞かない。日系の大企業だと誰が何年入社で何歳、みたいな情報はまず最初の挨拶がわりに交換するというからずいぶん違う文化だ。

・・・といった運用でもう何年も会社員をやっていて、こんな話、私の父や母にしてもきっと意味が不明だろうな、と思う。別に彼らが悪いわけではないと思うのだけど、この30年で世界はすっかり様変わりしてしまったし、もうきっと元には戻らないだろうと思う。

だから、時には「うわ。こまか!」と言いたくなる日も正直あるし、「そんなこと言い出したら相手が本当は人間じゃなくてアリクイの可能性だってあるじゃないか!なんでジェンダーにだけ注目するんだ!動物種はいいのか!!」とかもはや意味不明な反論をして地団駄を踏みたい気持ちの時もあるのだけど。そうはいっても無駄に誰かを傷つけたりしないように注意しながら、それでもしょっちゅう間違えながら、そっと指摘されては反省して修正する、の繰り返しで生きていて、これが企業文化が進化すると言うことなのだと受け止めている。

きっとこういうのは完璧でなくても、毎回わずかでも改善することに意味があるはずだと信じつつ。


今日も一日、お疲れ様でした。


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