経済成長とは何か?

もう20年以上前、学生だった頃、僕は化学工学を学んでいた。
化学プラントに限らない様々なプラントやシステムの最適な運転を追及する実践的な学問で、この分野に出会って初めて、大学での勉強が楽しくなったのをよく憶えている。

その化学工学には、基本的かつ重要な概念として、”物質収支”というものがある。

原子は消滅したり、新たに生成したりしないという質量保存の法則に基づく概念で、ある系(一つの反応器の場合もあるし、地球全体も一つの系だ)において物質は増えも減りもしないという大原則だ。

要するに、総和としての物質は増えない。ある物質が増えているように見えたとしても、見えていないところでちゃんと減っている物質がある。


一方で、経済成長って、成長というだけあって、増えたり減ったりする。
一般に、国内における生産活動の結果として生み出された付加価値の総額である国内総生産(GDP)などの推移によって経済規模が成長しているかどうかが測られ、高度成長期においては、高い時には20%/年以上の成長を見せていた。

物質は増えないのに、経済は増える?
物質は増えないのに、付加価値は増える?
これはどう捉えたらいいのだろうか?

結論としては、やっぱり物質は増えない。
だから、経済が増え続けることはない。

経済規模が増えたということは、その分何かが減り、物質収支が成り立っているはず。パッと思いつくのは、地球の資源だ。

その地球の資源は当然有限なので、経済が成長し続けることはなく、どこかで衰退するか、少なくとも長期にわたる横ばい状態になる。
太陽光など地球外のエネルギーがあるんじゃないかとも一瞬思ったが、きっと太陽系全体で物質収支は成り立つはずだし、太陽はいずれ消える。何十億年も先だけど。

だから、永遠の経済成長はありえない。
経済成長が人の幸せと結びついて考えられる時代が長く、現在もまだその真っ只中だけど、限界が見えてきていると感じている人も多いだろう。


そうすると、僕らは何か違う成長を志向しないといけない。
人間は成長を求める、今日より明日が良くなることを望む、という前提に立った考えだけど、この前提は真だろう。

では、何の成長を求めるといいのか?

おそらく、それは(お金や物質を獲得すること以外で得られる)心の喜びだと思う。
心の喜びが増えていくことがこれからの成長であり、誰かの心の喜びを増やすことが付加価値になる。

そして、心の喜びは物質ではない(はずな)ので、収支はイコールではなく、増える一方というのも可能なんじゃないだろうか。

全く、定量的ではないけど、本来の経済成長とは、心の喜びの成長なんだと思う。

そして、そのためには、お金のためではなく、ミッションのために働くことがやっぱり大事だと思う。
自分軸と他者軸、2つの視点が合わさったミッションのために働き、自分の得意を磨き、誰かの心の喜びを増やす。

もちろん、貨幣に変わる交換手段がない以上、対価としてのお金を得ながら生きていくことになるけど、そのお金は自分の喜びを増やしてくれた相手に渡せばいい。

こういう変化の時期だからこそ、自身のミッションが何かを見つめ直し、少しずつでも動き出してみるといいのではないだろうか。

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