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経営者の解像度を高くするために、経理が「可視化」すべき3つの項目

今回の記事は、会社の状況に関する経営者の解像度を高めるために、経理が「可視化」すべき項目についての話です。

言うまでもなく、会社経営では、日々あらゆる意思決定が行われていますが、事業環境の不確実性が高ければ高いほど、一定の仮説を立てる必要があります。

そして、より良い仮説を立てるためには、経営者が必要な情報を必要な時に把握できる状態をつくることが重要です。


仮説⇔検証のループ

経営者は、全社的な観点で中長期的な成長のために、筋の良さそうな仮説に限られた資源をどれくらい投下するかの判断を迫られますが、判断はいくつかの仮説を前提に行っているため、現状を分析し、仮説を立て、実行した結果から学習し、より良い仮説に生かすというサイクルをいかに早く行うかが大事です。

その際、当然ですが、現状をより正しく把握することが仮説の精度に大きく影響を与えます。

想定と比べて、また他の比較対象と比べて、何が良いのか、悪いのか。原因は何か。解像度が低ければ課題もわからないし、立てる仮説も打ち手も悪くなります。

次に、仮説が正しかったのか、間違っていたのかを検証するためには、正しく「測定」し、その結果を「分析」する必要があります。

これができないと(例えばあらゆる仮説の要素が混在した結果しか見えないと)仮説が間違っていることにも気づかずに、資源を無駄に使ってしまうことになりかねません。

また、測定が遅いと、課題認識や学習のタイミングが遅くなり、次の仮説の立案と実行が遅くなってしまいます


個人的には、この仮説検証のサイクルのうち、「測定」と「分析」は経理がリードするべきだと思っています。経理は、会社のすべての事業活動の結果の数字を扱っており、部分最適的な発想やバイアスが働きにくい立場であるからです。

もちろん、部分的には各部署の方が詳細情報があるため、必要に応じて、部署で管理している情報を集約する必要がありますが、客観的に、全社的な観点で評価する意味では、経理が最適だと思います。

(以前、経理こそ会社の成長に貢献するという強い思いを持つべきだという記事を書きました。合わせてお読みいただけると幸いです)

そして、「測定」と「分析」を行うために大事なのが「可視化」です。つまり、経営者が解像度高く会社の状況を把握できる状態を作ることです。

では、何を可視化すればいいのでしょうか?


経理が可視化すべき3つの項目:「資源(お金)」「効率」「成長」

会社は、限られた「資源」を活用し、いかに「効率」よく「成長」できるかが勝負であり、可視化すべき項目も、基本的には「資源(お金)」「効率」「成長」の3つだと思います。

1つ目の資源(お金)については、お金のフローとストックを可視化すること。具体的には、過去何のためにどれくらいの資源(お金)を使い、現在どれくらいの余裕があり、将来のためにどれくらい資金を確保すべきなのかを見えるようにすることです。

特に、ミッションごとに何にどれくらいの資源(お金)を使っているのかを把握することは意外とできていなかったりします。

今ある現状のリソースは所与ではありません。例えば年収500万円の人が10人いれば、ざっと5,000万円/年の投資を毎年行っているのと等しいです。

また、同じ5,000万円を使う場合でも、半年で使うのか、3か月で使うのかで仮に成果が同じでもスピードが異なります。

当然、資源(お金)には限りがあるので、すべての仮説検証を同時並行に行うことはできません。資源(お金)のかかり方も、広告費のように常にコントロールができるものもあれば、家賃のように一度決めると一定程度固定で発生してしまうものもあります。あらゆる選択肢の中でより良い思えるものに、貴重な資源を投下する必要があります。

そこで大事な2つ目の視点は「効率」です。

効率は、一言でいうと投資対効果です。特定の資源あたりの売上高の増加、もしくは一定の成果に対しての費用の削減です。具体的には、利益率やROEなどで当初の想定等と比較されますが、ここでも、ミッションごとに資源(お金)が把握できていないと、誤った理解・判断につながります。

また、新規事業や新規プロダクト開発と既存事業の営業部署では、効率を判断する期間が異なるように、ミッションによってどれくらいの期間で効率を判断すべきかも異なります。この期間の見積もりも学習→仮説立てに影響します。


3つ目は「成長」の視点で、基本的に「売上高」の伸びを意味しています。

もちろん、最終的には利益(もっというとキャッシュフロー)が大事ですが、基本的に売上が伸びないと、利益もキャッシュも伸びません。

そのため、会社の成長を支えるドライバーがどこかを探すことは非常に重要です。

例えば、商材別の売上だけでなく、好調の商材については、どの顧客セグメントからの売上が多いのか。顧客数が多いのか、頻度が多いのか、平均単価が増えているのか。調子の良い原因を理解し、それがスケールできる場合は、どれくらいの資源が必要なのか等を考えていきます。

また、売上高は内部の要因だけでなく、市場規模やその成長可能性、競合との関係等の外部環境にも左右されるため、場合によっては、外部の情報も参考にする必要があります。



「資源」「効率」「成長」の3つの項目をしっかりと可視化し、経営者の解像度を高めてより良い意思決定と学習を導く。これを経理が担うことで、経営者はやるべきことが相当クリアになるはずです。

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