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苦しみ学のススメ 4

この世に苦しみがあるというのであれば、
この、苦しみの意味って何だろう?
苦しむことで、何が生まれてくるんだろう?

苦しみは、できるだけ避けたいという気持ちがあるのは人情といえよう。
苦しみを避けるのではなく、向き合ったとき何が起きるのであろうか。

「苦労は買ってでもしろ」。
約30年前にいわれた言葉である。
新入社員だった私は、先輩社員に同行して、OJTを受けていた。
とある酒販店に訪問したときに、その酒販店の専務がかけてくれた言葉だった。当時の私にはまったくその言葉の意味深さが理解できていなかった。大学時代テニス部だった私は、「苦しい練習がないと上達できないし」程度に軽く受け止め、分かった気になっていた。

その直後、実際に自分が担当をもって営業し始め、まったく思い通りに製品が売れないという辛い経験が続いた。格好とか、プライドとかかなぐり捨てた熱意や工夫や、その中で得意先と少しずつ人間関係が築かれ、やっと少しこちらを向いてくれるようになって、なんとか製品が動き出す。そのとき味わったささやかな充実感のなかで、「苦労は買ってでもしろ」という言葉が脳裏に去来した。この言葉の意味をかみしめ、少しその意味が分かってきた自分を嬉しくなったのを覚えている。

苦しみから逃げることなく、全面的に、完全にそのなかにとどまり、どんな思考の運動もなく、苦しみを和らげようとしたり慰めを求めたりせず、あくまでもそれから離れることなく、自分のなかの苦しみをあるがままに観察するとき、そのときには人は、たぐいまれな心理的変容が起こるのを見る。

インドの哲学者クリシュナムルティは、その著『生の全体性』(270ページ)において述べる。

「たぐいまれな心理的変容」。

苦しみから逃げること無く、
苦しみを体験し尽くすとき、
苦しみに対峙するとき、
生まれ出る。

苦しみの探究は続く♪

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