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僕は君のことがわからない。だから、頑張ろうと思う。

政治ってものがよくわからなかった。

教科書に書かれている歴代の総理大臣の名前や選挙制度、憲法の条文、テレビで映される踏ん反り返ったり突っ伏して寝ている政治家、住民にとっては騒音以外の何者でもない近所を大音量で走り回る選挙車。

政治という言葉から連想されるのは、そんなもんだった。
現代の若者としてあるまじきかもしれないが、選挙にもほとんど興味が無かった。投票には行くけど、政治家たちにはほとんど期待してなかった。

政治の世界で繰り広げられていることは、どこか他人事で、自分の周りの世界は自分でなんとかすれば良いと思っていた。

だが、僕が高校の教科書から学んだことは、政治の一側面でしか無かったのだ。
そんなことに気づかせてくれた一冊の本を紹介したい。

東京大学教授の宇野重規先生の書いた「未来をはじめる:「人と一緒にいること」の政治学」。この本が、僕の中で政治のイメージをガラリと変えてくれた。

政治の本と聞くと身構えてしまうかもしれないが、この本ほど政治について噛み砕いて優しく伝えている本は無いと思う。まさに、「伝える」のお手本のような本。本書は宇野先生が、私立女子校の生徒を相手に、政治について語った5回分の講義をまとめたものだ。

聞き手が高校生なので、当然わかりやすい言葉、伝わりやすい事例を用いて、政治の歴史や意義を紐解いていく。特に、第3章「人と一緒にいることの意味」では、ルソー、カント、ヘーゲルなど、現代社会の教科書でちょろっと出てくる難しい顔をした哲学者たちの考えを、「教室内のイジメ」をテーマに扱っており、誰もが自分ごと化して読むことができるはずだ。この本を通すと難しい哲学や政治の話も頭の中にすっと入ってきて、非常に親しみ深く思える。

互いに違う意見を持った人たちがどうやって一緒に暮らしていくか、これが政治

本書の中で、一番印象に残っている言葉だ。政治とは、国会議事堂で行われているものではなく、普段の僕らの生活のすぐそばにあるものなのだ。

社内政治なんて言葉がある。根回し的な意味で使われることが多いが、本当は意見の違う人同士がどれだけ歩み寄れるか、もしくはどれだけ譲歩できるかをとことん話し合うことこそが、社内政治なんだと思う。そんな綺麗事ばかりが通用するわけじゃ無いかもしれないけど、綺麗事だと言って見向きをしないのではなく、誰かが綺麗事をうわべだけのものから引きずり出す必要があるんじゃ無いだろうか。

インターネットはどんどん世界を繋げていった。繋がった世界の中では、新しい価値観が沢山生まれ、マイノリティだったものがどんどんと表に出て承認されている。これまで圧迫されていた自分の価値観が市民権を得て、誰もが「自分らしく」生きれるようになった。

僕は様々な価値観が表に出てくるようになった世界は、とても良い世界だと思っている。生きづらいより、生きやすい世の中の方が絶対にいい。だが、そのいろんな価値観が共存する世界を今後作らないといけない。

そのためには、政治にいかに感情を盛り込んでいくかが大事だ。頭でわかっている状態と、心から腹落ちしている状態にはズレがある。意見の差異や理解の差異をどう乗り越えていくか。僕にはまだ答えは出ていない。

人は結局自分のことしかわからないと思っている。100%で相手のことを理解することは不可能だ。結構してても、血が繋がっていても、自分以外のことを完全に理解はできない。

理解はできない。わからない。だからこそ、頑張るのだ。
わからないなりに、わかろうとするのだ。矛盾しているかもしれないが、誰かと生きるとはそういうことなのだと思う。

僕は君のことがわからない。
だから、僕は君のことをわかろうと頑張りたいと思う。

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