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「普通」の幸せってなんだろう?

「普通」の幸せとはなんだろう。

そう考えたのは、お盆休みを利用して、大学時代の友人たちと北海道に旅行をした帰りだった。

彼らは一緒のバンドサークルのメンバーで、かれこれ7年近い付き合いになる。

台風が過ぎ去ったにも関わらず、6日間中5日間は雨が降っていたが、初日からジンギスカンをたらふく食べ、そのままの足でカラオケに行き深夜2時まで歌った。

次の日から3日間は北海道で行われている野外ロックフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO」を、ほぼ雨の中堪能した。サッポロビールをわんこそばのように次から次へと飲み、SAMURAIのスープカレー、みそラーメン、じゃがバターなど北海道の味を流し込む。夜中の2時にはDJブースのそばで石野卓球をバックグラウンドミュージックにイエーガーマイスターをもう一踏ん張りのガソリンのごとく摂取する。半分フラフラのまま午前3時30分から東京スカパラダイスオーケストラのステージを唯一の晴れ間と共に全身で受けた。

仮眠の後は、片付けもそこそこ風呂に入り、札幌の街でまたしてもビールを飲む。夜は海鮮の美味しい居酒屋から、再びジンギスカン。流石にビールには飽き今度はハイボール。

翌日はウイスキー余市の蒸留所まで行き、そこで買ったウイスキーとチョコやチーズをつまみに最後の晩餐よろしく、やっぱり飲む。サッポロビールは体に残らないのだろうか?最終日の空港でも飽きたらず2缶空けて、ようやく東京に戻って来た。流石に飛行機の中では寝ていた。

僕はここで旅行の中身を自慢したいわけでも、サッポロビールがただただ美味しいことを伝えたいわけではない。随分と久しぶりに「普通に」楽しかったと思ったことを残したいと思ったのだ。

実は、旅行に行く前までは少しばかり「時間の無駄ではないか」と思っていた。例えば、ロックフェスで自分が見たいアーティストが無い時間帯や、車の移動時間など、有効活用できる時間がちらちらと目についてしまった。普段の休みであれば「夜の飲み会までは1冊本を読もう」とか「文章を一本書こう」とか、何かしら生産的な活動をしないといけない強迫観念がまとわりついていた。だが、今回の旅行は生産的な活動はほぼ何もしていない。ただただ、時間とお金を消費して、楽しさを買い続けた。

ここ最近、周りに独立して頑張っている友人たちが増えて、「6日間も何もしなくていいのか! みんなみたいに頑張らないとダメなのでは!」と心のどこかで思っていたモヤモヤは、帰ってくるときにはすっきりと無くなっていた。

なぜ「普通」を享受することが怖かったのか。旅行の名残を引きずりながら、冷静になった頭で考えてみた。

それは、自分が「普通じゃない」と思いたかったからだ。

自分は周りの人が休んでいる間も努力していて、周りとは違う人なんだと思い込みたかっただけだと気づいた。一度「普通に」楽しいを長時間受け入れてしまうと、そっち側に引っ張られてしまうと思っていた。

だけど、本当は「普通じゃない」と思い込みたい人ほどその考え方は実は「普通」だ。「普通」も「特別」も関係なく、自分が「楽しい」と思った瞬間を自分の価値観で受け入れることが大事なんだ。

消費している時間も楽しいし、こうして苦しみながら文章を生み出している時間も楽しい。「楽しい」は「楽しい」で種類も優劣もなくて、全部等しく「楽しい」なのだ。

周りが休んでいる間に努力している人はやっぱりすごいと思うし、自分が登る山の高さに応じて休む時間の長さは変わってくる。高みを目指せば目指すほど、当たり前だけど時間もかかるし、一緒に登る人も減ってどんどん自分との戦いになってくる。

だからといって、立ち止まっちゃダメなわけでも、消費するだけで1日を終えちゃだめなわけでも無い。自分の納得感の問題にすぎないと言われてしまうとそれまでかもしれないけど、まぁ、たまには休んだっていいんだ。

人はパンがなければ生きていけない。しかし、パンだけで生きるべきでもない。私たちはパンだけでなく、バラももとめよう。生きることはバラで飾られねばならない。

これは、國分功一郎の著書「暇と退屈の倫理学」の一説だ。この文章が僕の言いたいこと全てを代わりに語ってくれている。

幸せにも「普通」や「特別」は無く、パンを食べてもバラを飾っても幸せだと感じる瞬間を大切にしたい。そう気づかせてくれた旅行だった。

7年経っても変わらずバカができる友達がいることも、独立して必死に頑張っている友達がいることも、両方誇りで幸せだ。

これからもよろしくお願いします。


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