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【社長インタビュー】アジアでナンバーワン、そしてオンリーワンのワイン商に―前編―

エノテカは国内に60店舗のワインショップを展開しているため、皆さんの目には“ワインショップ”として写っているかもしれません。
 
ショップでワインをお客様に販売するだけではなく、エノテカはワインの買い付けから通信販売、卸売り、そして国際事業まで展開しているワイン商です。
 
現在、エノテカの代表取締役社長を務める堀慎二は、長年エノテカの国際事業部を舵取り、発展に尽力してきました。
 
しかし入社当時の経営は赤字。とてもうまくいっているとは言えなかった国際事業をどのように先導してきたのか。
 
そして社長となった今、何を目指しているのか。

代表取締役社長:堀慎二
業界の異なる4つの事業会社にて海外を舞台とした「営業」と「企業経営」に従事。2006年には当時の駐在国にあったタイ国立マヒドン大学経営大学院を卒業する。その後2014年にエノテカへ入社。国際事業部にて香港、シンガポール、中国、韓国、台湾、タイでの事業拡大を成功させ、2022年エノテカ代表取締役社長に就任する。

アジアで認められる“エノテカ”になりたい

―まずは堀社長が目指す経営について訊かせてください。
 
もともとエノテカという会社は日本のワインショップとしてスタートしましたが、この10年で国際事業を始め、アジアでの発展に力を入れてきました。
 
その中での一つの新しい目標は「アジアで認められるエノテカになる」ということ。これが今目指している姿です。
 
これまで私がエノテカで国際事業をやってきたから思い入れが強いというのもあるのですが、もう一度改めてエノテカという会社を考えた時に国際事業をやっていること自体がエノテカの一つの強みなのではないかと思うんです。
 
これまでは、基盤となる国内事業があって、その力を使って国際事業を発展させてきました。それが今、国際事業を大きくしていくことが国内事業の強みにもつながっていくと考えています。
 
―これからエノテカをどのような会社にしていきたいですか?
 
「アジアでナンバーワンかつオンリーワンのワイン商」になっていくということを、2030年の目標として掲げています。
 
オンリーワンの存在というのは、エノテカはワインショップ、通販、卸売りという3業態を国内で展開していること、そして国際事業においても香港、上海、杭州、深セン、台北、ソウル、釜山、シンガポール、バンコクなどアジア主要都市にワインショップ及び卸売り展開していること自体が唯一無二の存在です。
 
それぞれの国にも良いインポーターというのはいると思うんですが、それをアジア全体で展開しているというのが、他にはないエノテカの強みであると思っています。
 
グローバルな視点を持ち、経営を進めていくことでワイン業界のリーディングカンパニーとしてエノテカにしかできないワインビジネスの新しい世界を展開していきたいと考えています。
 
そしてもう一つ、エノテカの社員一人一人が「この会社で働いて本当に良かった」と感じてもらえるような会社にしていきたいです。

水滴石を穿つ

―これまでの国際事業の成長について、まずは堀社長が入社した当時の状況から教えてください。
 
私がエノテカに入社した当時(2014年7月)は、アジア4地域(香港、シンガポール、中国、韓国)に進出していました。その時は海外拠点をまとめる機能はなく、私の入社と合わせて海外事業部(現在の国際事業部)が設立されたんです。
 
ですが当時の売上高は現在の3分の1、売上構成比も全体の10%程度、事業も大赤字という状況。社内でもややお荷物のような事業に見られていたのかなと思います。
 
そんな状況から始まったので、まず3ヶ月は現地の状況を把握することに充てました。これまでの経験から、状況が分かっていない中で焦って何か手を打つというのは良くないと分かっていたからです。
 
そして現地を視察して分かったことは、そこにはものすごく頑張っているメンバーがいて、今は赤字でも事業の将来性をひしひしと感じました。
 
だからこそ、早急に黒字化させ事業の継続を決めることが私の使命となったのです。
 
―赤字からのスタート、大変だったことは何ですか?
 
何か変化を起こすためにはチーム全員が同じ方向を向いてないといけません。そのためには自分が言うことに耳を傾けてもらい、一人の人間として信じてもらうことが必要でした。
 
ただ、「自分のことを信じてほしい」と言ったって、関係性ができているわけでもありません。現地のメンバーにとっては、突然彼らの上で海外事業を管理するものが現れたことでこれからどうなることやらと、驚いたことでしょう。
 
なので最初に心掛けたのは、日本本社は“サポーター”だということを認識してもらうこと。現地の会社に対して単に指示を与え、管理する存在ではないと分かってもらうことでした。
 
日本本社に相談すればメリットがある、問題を解決してくれる、など頼られる存在となれば、自然と相手から相談がきて、情報も集まってきます。
 
相手が何を求めていてどのようにしたらこちらのことを聞いてくれるのか、そして信じてくれるのか、そこを考えました。
 
その上に時間もありませんでしたからね……。
 
時間との闘いの中で経営陣も説得しながら現地のメンバーにもついてきてもらう、ということに最も腐心しました。
 
そしてついに2017年の3月期、黒字化となりました。あの瞬間は今でも鮮明に覚えています。
 
―約2年で黒字化したということですね。
 
なんとか最初の使命を果たすことができました。
 
今では日本本社と海外現地の間で関係がしっかり構築されているので、非常にスピーディに物事が進められるようになりました。それが事業発展の礎になっていると思います。
 
そんな国際事業部は現在、国内の各事業(ワインショップ、通販、卸売り)と同等の規模まで大きくすることができ、さらなる成長も期待できます。
 
あの時、諦めずにやり続けて良かったな、と今となっては言えますね。

―まさに堀社長の座右の銘である“水滴石を穿つ”ですね。
 
はい、社長になってからこの「水滴石を穿つ(すいてきいしをうがつ)」という心構えを大切にしてほしいと社員にも伝えています。
 
小さなことも継続することで大きな成果になるという意味です。
 
失敗を失敗で終わらせたら失敗ですが、成功するまでやり続ければ、最終的にそれは成功になるわけで、失敗を恐れず、チャレンジスピリッツを大事にする風土を浸透させていきたいと考えています。
 
地道に少しずつ積み上げていけば、それは崩れずに強固なものとなって続いていくと思うんです。
 
華やかで目立ったことをやりたいと思いがちだけども、意外と長く続けるためには地道なことをやり続けることが大切だと思います。
 
そういうことをきちんとやっていること自体が大切ですし、そこを評価する会社にしていかなくてはならない。課題を解決した結果だけでなく、プロセスまでを評価できるような会社にしていきます。

アジアナンバーワンに向けて

―今後の国際事業についての展望を教えてください。
 
現在日本、香港、シンガポール、中国、韓国、台湾、タイの7カ国に展開している中で、アジア全域での展開を狙っています。
 
もちろん現地の法規制等によりまだ外資単独で事業展開できない国もあるのですが、今後はベトナム、マレーシア、フィリピンなど東南アジア地域への新規進出の可能性も探っていきたいと思います。
 
「アジアにエノテカあり」と生産者、そしてワインラヴァ―の皆様にも思ってもらえる会社になってきたいです。
 
ワイン好きの方は旅行が好きな方も多いと思います。そんな方々がアジアどこに行ってもエノテカの美味しいワインと触れ合うことができる、そんな状況になったら良いなと思います。

香港エレメンツ店

―「アジアナンバーワン」に向けての秘訣は何ですか?
 
それぞれの国にはそれぞれのインポーターがいます。それでも外資系であるエノテカが海外に進出してもビジネスができているというのは、エノテカの大事なDNAが浸透しているからだと思います。
 
一つは美味しいワインを消費者に届けたい、というこだわりを持ってやっているということ、そして取引している素晴らしい生産者、また、物流、倉庫、お店で一貫した温度管理をしているということがエノテカの強みだと思うんです。
 
ワインの知識を持っているスタッフがきちんとワインを説明して、お客様のニーズに合わせた提案を愚直にやっているからこそ、日本でも海外でも支持されるワインショップ、ワイン商でいられます。
 
何かが突出しているということより、総合的な力を上げていくこと自体がエノテカしかない世界を作っていくことになるのです。
 
実際、まだまだそのDNAが浸透しきれていない国もあります。そこを盤石にしていく、それが最終的にはそれぞれの国でエノテカが成長してくことにつながると思います。
 
一朝一夕でなかなかできないというのがこのビジネスです。コツコツとやり続けて基盤を作っていくことが海外ビジネスをやっていくうえで大切なことだと日々感じています。
 
今後も“水滴石を穿つ”の精神で邁進していきます。