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【社長インタビュー】アジアでナンバーワン、そしてオンリーワンのワイン商に―後編―

エノテカはワインの買い付けからショップ販売、通信販売、卸売り、そして国際事業まで展開しているワイン商です。
 
前編では国際事業についてお届けしましたが、ここでは国内事業の発展についてお伝えします。
 
2020年以降、新型コロナウイルスやその他の取り巻く環境の変化で様々な困難もありましたが、今後の国内事業はどのように成長していくのでしょうか。
 
社長の堀慎二に話を訊きました。

代表取締役社長:堀慎二
業界の異なる4つの事業会社にて海外を舞台とした「営業」と「企業経営」に従事。2006年には当時の駐在国にあったタイ国立マヒドン大学経営大学院を卒業する。その後2014年にエノテカへ入社。国際事業部にて香港、シンガポール、中国、韓国、台湾、タイでの事業拡大を成功させ、2022年エノテカ代表取締役社長に就任する。

人生が一変

―2020年以降、新型コロナウイルスの影響により様々な影響があったかと思います。働き方も変化しましたよね。
 
そうですね。私個人の話になりますが、これまでは1年の6、7割は海外にいる生活だったので、この2年半、全く海外に行けなかったのは人生が一変したように思えました。
 
最近はだんだんと海外出張も再開してきています。
 
海外に行けない間はオンラインでのコミュニケーションになりました。それでもできないことはないんですが、対面に勝るものはないというのも実感しましたね。
 
ただ、大変だったことはたくさんありますが、個人的には日本社会にとって、変われる一つのチャンスだったのかなとも思うんです。
 
―具体的にはどのようなところで感じますか?
 
今思えばどうしてそんなことをしたのかなと思いますが、昔、朝起きたら大雪が降っていたことがありました。けれども会社に行かなきゃというのがあったので、とにかく駅まで行ってみたんです。
 
駅に着くと電車は止まっている、何時になったら乗れるのかも分からないのにみんながそこで立って待っていた……そんな状況がコロナ禍前は普通にあったと思います。
 
今じゃそんなこと起きないですよね?電車が止まっていたら「じゃあ、家で仕事をしようかな」と、在宅で仕事をする人が多いと思うんですよ。
 
このようにコロナによって今までなかった選択肢が生まれたと思います。
 
日本社会全体が個人の働きやすさだったり自由度だったりを高めようとしています。これは素晴らしいことだなと思っていて、最終的に創造性につながると思っています。
 
ある程度、自分で考える時間やいろんな人と交わって話を聞く時間は大切で、インプットを作る時間がないときは新しいアウトプットはできません。
 
そういうものの時間をちゃんと取れるような会社や社会構造になっていくことは、日本が伸びていくには非常に大切なことかなと思っています。

―経営という面ではどのように捉えていますか?
 
新型コロナによる規制や感染状況の変化も激しく、市場の浮き沈みが以前より激しくなってきており、難しい舵取りを迫られることが多くなっています。
 
例えば、新型コロナやロシア・ウクライナ戦争の影響でコンテナ需要のひっ迫による海上運賃の値上げ、瓶・コルク・ラベルなどの資材コストの上昇、ガス・電気などのインフラ料金の高騰など様々なコスト上昇が懸念されています。
 
今後、ワインに留まらず世界的な物価上昇が世界経済に与える影響を考慮しながらビジネスを進めていく必要があります。
 
また、ワインの輸入ビジネスはそもそも輸入にかかるリードタイムが長い中で、この状況下によってさらにコントロールの難しさに拍車をかけており、コロナ禍以降、お客様にワインを安定供給することの難易度が上がってきている状況です。
 
資金面でも負荷が高くなってきているほか、激しく変動する為替に対しても対応が求められ、非常に多くの要素を考慮・把握・予測しながらワインの輸入ビジネスを遂行していく必要があります。
 
このように将来を予測することが難しい中、変化していく環境に迅速かつ柔軟に対応しなければなりません。

転換期を迎え思うこと

―そんな変化が激しい社会ですが、これまでの国内事業の成長をどのように感じていますか?
 
国内で卸売り、ワインショップそして通販の三つの事業があるというワインインポーターは他にはなく、これがエノテカの一つのユニークネスだと思います。
 
それをこの規模で両立し、創業から30年成長し続けたことは素晴らしいですし、特にこの10年の成長スピードは非常に早かったと感じています。
 
これまでの国内事業の発展があるからこそ、生産者が第一に「エノテカと取引したい」と言ってもらえる今があると思うんです。
 
国内事業が大きく成長し、盤石な基盤を作り上げることができたからこそ、現在のような国際事業の展開が可能になっています。
 
一方でこれまでは国内市場の拡大とともにエノテカも成長してきましたが、ここ数年、国内のワイン市場は成熟してきています。
 
ようはこの先、日本において大きな市場成長というのはそう簡単には起きないと思うんです。
 
成長市場から成熟市場へ移行しているのが今の日本のワイン市場です。

人口も減っていく見通しです。このような市場環境の中で、どのようにエノテカが今後のワイン事業を展開していくのかを考える転換期にきていると私は考えています。

GINZA SIX店

―そんな今後の国内事業の展望を教えてください。
 
今、世の中はスマートドリンキングが浸透し始め、これまでよりアルコールを飲まなくなっている状況です。
 
そんな中では、より選ばれる存在になっていかなければビジネスとしての継続性が難しいということになります。
 
まず、競争相手からシェアを取るためにはエノテカを選んでもらえるような存在にならなくてはならないというのが一つだと思います。
 
そしてもう一つ、エノテカが自ら市場を創出していくこともあるかもしれません。
 
例えば「若者の酒離れ」は言われていますが、実際に全ての若者がワインを知っているのか、ワインを飲んだことがあるのか、というとそうではないと思うんです。
 
ということはワインの世界の面白さや素晴らしさを知ってもらえる接点が増えたら、顕在化していなかった層が市場として存在しうることもあるかもしれません。
 
だからこそ、今までと同じことをやっているだけではなく、新しい領域をエノテカとして広げていくことができればまだまだ成長の余地はあると思います。
 
そういったチャレンジを会社としてやっていくべきだと考えています。
 
ただ、会社として進んでいく大きな方針は変わることはありません。
 
それは創業当時から理念として掲げている「For All Wine Lovers」。これは変わることはありません。

ワインの世界で生きる幸せ

―最後に、堀社長にとってワインとは?
 
一つの共通言語のツールとして非常に大きいものだなと日々感じています。
 
元々、私はワイン業界の人間ではありませんでした。エノテカとの接点はワインというよりも海外ビジネスでしたので、ワインと深く付き合うようになったのは入社してからです。
 
それまでワインを飲む機会はあってもそこまで傾倒していたわけでもなく、正直、入社をしてからワインを好きになりました。
 
入社して現在、9年目。ワインと深く付き合っていくと素晴らしいものだなと感じる瞬間がたくさんあります。
 
ワインは毎年新しいヴィンテージが入ってくるので、追求するのに尽きない飲み物ですよね。永遠に学んでいけるものというのが楽しい点です。
 
海外ビジネスをしていると世界でいろんな人に出会います。語学を習得し各地域の文化や慣習、考え方を知ることが第一となりますが、その上でワインを知っていると、より相手の壁を乗り越えていけるハードルが低くなると感じます。
 
ワイン業界だけでなくてもワインが好きな人やまだワインを全然知らなくてもワインを交わすことで、交流を深めていくことができるのはワインの良さだと思います。
 
今では私も一人のワインラヴァ―として、仕事、プライベートの両面で毎日楽しくワインと向き合えることができています。
 
そんなワインの世界で生きていけることは非常に幸せなことです。