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tiktokで「#本」を調べてみた。

10代の中高生に人気というtiktok。
いつか自分も使いこなしたいと思いつつ
アプリをインストールして数か月、ようやく使い方を心得てきた。

tiktokは、アジアで人気の動画投稿SNSで
15秒ほどの短い動画のなかで笑える・楽しめるものを中心に
それぞれの日常や、ペットの動画、幼い子の動画などが
世界各地から投稿されている。

tiktokもInstagramやTwitterのように
ハッシュタグが頻繁に使用されている。

ふと思い立って「#本」と検索してみた。

すると、10代の「本音のおすすめ」がたくさん紹介されていた。

「住野よるさんの小説が好き」
「交換ウソ日記おすすめ!」
「佐野徹夜さん最高」
「君は月夜に光輝くがいちばん好き」
「野いちごさん好き」
「神様の願いごとまじ読んでみて」
「いぬじゅん!神!!」
「いつか、眠りにつく日めっちゃいい」 
(一部表現変更していますがだいたいこんなテンションです)

などなど、住野よるさん以外知らない作家さんの名前がたくさん出るでる。

「い、いぬ?じゅん? 誰だろう」
と調べてみる。
タイトル、出版社、装丁で内容を想像する。

ああ、うちにない類の本だなぁ、とわかる。

どうして仕入れていないのか、なんとなく自分の中に理由はある。

もう一度、「#本」のタイムラインを眺める。
そこに書かれてあるコメントを読む。

人物や動物、イラストの描き方がメインのtiktokで
わざわざ「本」を紹介しているほど、お勧めの本。

そこにあるコメントを読んで
「なぜこの本が必要とされ、売れているのか」を考える。

少女マンガでもよさそうなのに、「小説」として
売れている理由はどこにあるんだろう。

自分が中学生・高校生だったら、この本を読むだろうか。
感動するだろうか。薦めたくなるだろうか。

なんせ、中学校では『赤毛のアン』高校生では『ハリー・ポッター』に夢中だったからなぁ…(遠い目)


◆本屋に置きたいか、置きたくないか

・・・・・・私の目指すまちの本屋は
「薦めたい本」ばかりでなく「必要とされる本」も置きたい。

これらの本は、どっちだろう、と考える。
正直「迷う」

どうして置きたくないのかというと、
置いてもいいんだけど、でも、そっちじゃなくて
こっちを薦めたいからーーーみたいな本が、やっぱりあるからであって。

たとえば、今回の類だと

キーワードは
「願い」「儚い」「悲恋(成就もあり)」
「美少女」「冴えない青年」「二人だけの世界」

これらをキーワードにお薦めするとしたら

『若きウェルテルの悩み』(ゲーテ)
『初恋』(ツルゲーネフ)
『悲しみよこんにちは』(サガン)
『こころ』(夏目漱石)
『伊豆の踊子』(川端康成)
『たけくらべ』(樋口一葉)

とかだろうか……

要は青春小説だから
『車輪の下』『ライ麦畑でつかまえて』『走れメロス』
なんかもいいかもしれない。

これらの古典にあって、先の本にないもの。
「歴史」です。

あるんですよ、古典にも、青春小説が。
ずーーっと、ずーーっと青春は普遍なのです。
それを古典は、証明しているのです。
いろんな世代の読者が、この「青春」を通ってきたのです。

最近の青春小説はすぐ映画になるしコミカライズされるし
読んだものの想像を自分の内面で巡らせる間もなく
映像や漫画化されてしまわないかい?

古典はねぇ、ないんです。ないというか、むしろありすぎて、
好みの映画を選べるなんてこともあるし、
それでより自分の内面の求めているものを知ることができる。

こっちの世界も、楽しいよって思うのです。

◆「共感の嵐」はやがて風化する

一方で、古典になくて新しい小説にあるもの、もある。
「旬」。これに尽きる。

新しく出る小説はそのときの「時代」が反映されている。
たとえば、最近の小説だと専業主婦の母親が出てくる物語が少なかったり、
女子高生も「僕」と言っていたり。なぜかオタク言葉だったり。
携帯電話も、古典にはない。

中高生にとって「共感性」が高いのはどちらかといえば、
やはり新しい小説になる。

ただ、「共感」は長続きしない…というか「共感」と「消化」は
とても似ていると思っていて
「共感」はあくまで「共感」=「自分の内面の肯定」にしかならないので
一瞬の支えにはなっても環境や年齢の変化で風化していくように思えてならない。

もちろん、10代にはその「共感」こそが支えになっている下地が、日本の女子高生文化にはあるのだけれど。


◆古典と新作、並列して青春小説を並べたい

「旬」である新作小説は、
「今」を生きる彼らにはとても読みやすい本だと思う。
その横で、ちょっと、たまにはいわゆる「古典」にも手を伸ばしてほしいと思う。

どちらにより「衝撃」を受けるか。
一週間後、どちらの内容がより印象に残っているか。
読み比べてみてもらえるといいなぁ、と…

うちにはまだどちらの本もないけれど
(えぇ、ないんですすいません)
置くことになったら、ぜひ並列して置いてみたい。

そして薦めたい。

「あなたは『共感』(新作)を求めますか?
 それとも『衝撃』(古典)を求めますか?」

とかなんとか言ってみたりして。

(終)



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せんぱくBookbaseは「本屋が育つ本屋」として
2018年6月にオープンしました。


今、町から本屋が姿を消すなか「本屋をやりたい」という方が
増え、
本好きにとっては居心地の良い場所が増えました。
しかし、そのほとんどは東京に集中しています。
 
「東京ばかりではなく、もっと身近に本屋が来てくれないかな」
「本好きばかりが集うのではなく、
 最初のきっかけを提案できる本屋もあるといいな」

と思いながら、本屋講座や独立系書店を見学しているうち、
自分でもできる本屋の形があるのかも、と思い、生まれたのが
「本屋が育つ本屋」=シェア本屋という形でした。

シェア店主と呼ばれる人とともに
本業と体調、そして家族を優先しながら
仕事のやすみにお店に立ち、仕入れを行い、対面販売する。
シェア店主とともに、運営について話していく。

ここで経験を積んで、定年後とか、引っ越し先でお店を開く。

本屋のなかった町に、本屋が生まれていく…

そんな未来を描いています。(HPより)

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