大海の航海を終えた気分。
「あさきゆめみし」で大体のあらすじをとらえ、林望の現代語訳を読み、そしてこのアーサー・ウェイリー版全4巻を読了。
このウェイリー版によって私は、紫式部と同時代にこれを読んだ人たちが味わったであろう物語の世界感を味わうことが出来た。毬矢・森山の姉妹による「源氏物語」は他の誰の訳よりもあの時代の香りを纏っている。
作家ヴァージニア・ウルフは
とこの本を絶賛した。
第12帖「須磨」
自ら須磨に退去するゲンジに、ムラサキが詠む
その一瞬を贖いたいような恋をあなたもしたことがないだろうか。
第19帖「薄雲」
求めてやまなかったフジツボの死を悼み、ゲンジが嘆く心情
第49帖「宿木」
コゼリ(中の君)がウジを懐かしみ
あなたの孤独は誰かを傷つけない。
第52帖「「蜻蛉」
ウキフネの失踪を悲しむカオル
川に身を投げたウキフネに、『ハムレット』のヒロイン、オフィーリアが重ねられる。
ウェイリー版の源氏の装丁はクリムトだが、蜻蛉がある巻はこの「オフィーリア」でもありだったろう。
第53帖「手習」
イモウト(妹尼)がウキフネを諭す
源氏物語が織りなす登場人物の心情は、平安時代の人々のものだけではない、現代にも通じる。喜び、悲しみ、愛おしさ、恥、苦難、弱さ、そのどれもがそのどれかが、今の私たちに通底する。