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【美術展】国宝・燕子花図屏風1/2@根津美術館

公開している期間が短いので、混まないうちに早めに、ということでスライドレクチャーがある日を狙って来館。残念ながらお庭の燕子花はまだほとんど開花していなかった。
10時の開館とともに入館したが、平日にも関わらず人出は多め。多めといっても押し合いへし合いなほどではなく、燕子花の前にあるソファに座って落ち着いて鑑賞もできるくらい。

2024年4月19日(金)


<印象深かった絵>
「四季草花図屏風(しきそうかずびょうぶ)」伊年(いねん)印 根津美術館蔵

薄い絵具の層から透けて見える金が美しい。
一双の左右下隅に捺される「伊年」という印は、俵屋宗達の工房・俵屋の商標的な印章、いわばブランドマークのひとつであったと考えられている。

根津美術館

左隻の「茄子」がなんとも愛らしい。


「桜芥子図襖(さくらけしずふすま)」伊年(いねん)印 大田区立龍子記念館蔵
川端龍子が妻子の菩提を弔うために作った持仏堂と仏間の間の仕切り

フライヤーの裏面

裏面では実物のきらびやかさが伝わらないが、こんなに美しい襖で仏間が彩られていたらさぞかし龍子の妻子も喜んでいるんじゃないかしら。


「梅図刀掛(うめずかたなかけ)」尾形光琳筆 江戸時代(18世紀)

のびやかな梅の幹の湾曲は刀の反りを配慮したものだろう

「琳派コレクション」根津美術館

この説明書きに、そこにはない刀の刀身が見えるようで、ゾクリとした。
なんなら、そこに刀が掛かっていたのならよかったのに。

蝶番の金具には光琳梅とも呼ばれる意匠化された梅花があらわされる

「琳派コレクション」根津美術館

刀を置く凹みが艶やかに丸みを帯びている。そうになるまで、長く長くここに実際に刀がかかり使われてきたのだろう。


「業平蒔絵硯箱(なりひらまきえすずりばこ)」伝 尾形光琳作 江戸時代(18世紀)
蓋に烏帽子(えぼし)に狩衣姿(かりぎぬ)姿の在原業平
(ありわらのなりひら)といわれる貴公子があらわされている。
業平は昔から美男の代名詞とされているので、こういった意匠のモデルになったのだろうな。
現代でいうと、イケメンの顔のアップが施されたお習字のお道具箱(^^♪。
業平の顔がしもぶくれで茄子のようで、ほんと可愛らしかった。


「菊紋唐草蒔絵雛道具」木屋製 明治時代(20世紀)
掛け軸の「雛図」とともに展示されていた雛道具の精巧なミニチュア。ちっちゃな箪笥、机、長持、茶道具など、茶せんなんて髪の毛くらの細さなんじゃないか、っていうくらい。

「誰が袖図屏風(たがそでずびょうぶ)」江戸時代(17世紀)

フライヤー裏面

右隻に亀甲つなぎの唐織、双六盤、左隻に上段は子供用の振袖、下段に桜花模様の振袖、硯箱と冊子などが描かれている。

「これは誰の袖なのか」。そう呼ばれるジャンルの絵があるのをここで知った。
秘められた室内空間を覗き見て、そこに掛けられた美しい衣裳を愛で、薫きしめられた香りをイメージし、ひいてはそれを着る人の面影をしのぶ。はたまた閉じられたその障子の奥で今何が展開されているのか、いたのかの艶っぽい想像が掻き立てられる。

この絵を見て、「後朝(きぬぎぬ)」という言葉を想起した。
後朝:衣を重ねて掛けて共寝した男女が翌朝別れるときそれぞれに身につける、その衣。
「しののめのほがらほがらと明けゆけばおのがきぬぎぬなるぞ悲しき」<古今和歌集>
”明け方になって空がだんだんと晴れやかに開けゆくころ、それぞれが自分の衣を再び着て別れてゆくのは悲しいことだ。

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