知的な狂気を感じた美術展@「エドワード・ゴーリーを巡る旅」
渋谷の松濤美術館で、「エドワード・ゴーリーを巡る旅」を楽しんできました。
◆世界一残酷な絵本作家
日本でも人気の絵本作家、エドワード・ゴーリー(1925‒2000)はアメリカ生まれ。
幼少のころから絵を描き、古今東西の文学を読みながら育ち、出版社をつくり、絵本作家になった人です。
彼の作風から、ヨーロッパ的な香りがするように感じていたのですが、西洋文学だけでなく、日本の源氏物語も読んでいたとのこと。そんな豊富な読書経験から、あの独特のストーリーが生み出されたのだと思うと興味深いものがあります。
ちなみに、エドワード・ゴーリーで検索すると、「世界一残酷な絵本作家」というワードが出てきます。グリム童話とか、ドイツの絵本『マックスとモーリッツ』とか、残酷な物語はほかにもありそうですが、現代の日本で人気のあるのはゴーリーなのかもしれません。
◆狂気を感じる緻密さ
会場内は、撮影禁止。小さな原画がずらりと並んでいました。
ゴーリーは、原寸サイズで描いていたため、どれも絵本サイズの作品なのですが、小さいのにびっくりするくらい緻密。見ていると、細かくてめまいがしそうになります。
私も、趣味で細密画を描いているのですが、細部までチマチマと描く作業は、正気ではできないことだと感じるときがあります。妥協せず細かく細かく集中的に描き込んでいるときは、自分でも何かトランス状態に入っている感じがするのです。筆を持つ右肩がコチコチになり、腕がしびれて我に返ることもあり、そんな狂気じみた部分がないと、緻密な作業はできないと感じています。
ゴーリーは、『不幸な子供』の背景を細かく描きすぎて疲れたため、5年間も執筆をストップしていたと図録に書いてありました。
◆英語解説は…
各作品には、日本語解説のみでした。
ただ、「ゴーリーの本づくり」のコーナーでは、英語入り原稿などが展示されていました。
ゴーリーは、タイトルや謝辞、テキストの文字まで自分の手で書いています。会場で、彼の美しい英文原稿を見ることができたのは嬉しかったです。
名作絵本の原語タイトルを二つ、挙げておきます。
The Hapless Child
The Doubtful Guest
『うろんな客』は、本当に名訳ですね。
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