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大学院へ行くメリット(理論編)

こんにちは、公立高校で英語教員をしているHIPPOと申します。
私は長期派遣研修として、現在大学院の修士課程に在籍しています。
この1年間で私が感じた、現役英語教員が大学院で学ぶことのメリット、特に今回は現役教員が理論を学ぶことについて書いていこうと思います。
尚、私は国際系の研究科で言語学(第二言語習得等)を学んでいますので、いわゆる教職大学院ではありません。

結論としては次の点です

  1. 指導の方向性を考える根拠にできる

  2. 生徒の間違いを分析することができる

  3. 言語の奥深さを知ることができる

  4. 批判的・論理的思考を鍛えることができる


  1. 指導の方向性を考える根拠にできる
    私が修士課程の一年目を終えて感じたのは、第二言語習得理論(SLA)を学んでも、それだけで英語の授業が上手になるわけではないということです。しかし、理論を学ぶことのメリットはあります。まずは、指導の方向性を考えるときに参考にできることです。
    例えば、近年は学校英語教育全体としてオーラルのアウトプットが重要視されていますが、話す活動をたくさんすることが外国語習得で最も大切なのだろうかと考えたとします。SLAを学んでいくと代表的なところでは、インプット理論、インタラクション理論、アウトプット理論など、様々な考え方があることがわかります。そして行き着くのは、万能な教授法は無く、インプットも、インタラクションもアウトプットも必要なんだということがわかります。インプットばかりの一方的な授業は問題であるとわかると同時に、アウトプット偏重した授業もまた問題であるということもわかります。今挙げたのはほんの一例ですが、このように授業の大きな方向性を考える際の根拠を持てることは理論を学ぶメリットだと思います。

  2. 生徒の間違いを分析することができる
    生徒の間違いに対し、「勉強不足だからできないんだ」という一言で片付ける事もできます。しかし、例えばSLAでは文法の習得順位の研究もされており、その結果から中学1年生で学ぶ三単現sのは、比較的習得するのが難しい文法であることがわかります。「高校生にもなってまだ三単現のsもわからないのか」と考えるのではなく、「この文法は習得が難しいからできなくても焦らなくて良い。長い目でみながら指導しよう」と考えられるようになります。

  3. 言語の奥深さを知ることができる
    私は専門の第二言語習得理論の他にも、統語論・意味論・形態論などの授業も履修しています。内容は私にとってはかなり高度で複雑だったため、授業や課題についていくのも一苦労でしたが、それらの授業では言語の奥深さを知ることができました。例えば、英語には日本語には無い不定冠詞のaや、複数形があるため「英語は数に敏感な言語」であり、「日本語は数は気にしない言語」であると思われがちです。大きく見ればそのとおりかもしれませんが、例えば、someという単語は可算名詞・不可算名詞のどちらにも使えます。しかし、someにあたる日本語である、「いくつかの」は可算名詞を、「いくらかの」は不可算名詞を修飾します。語を詳細に考えていくと、実は日本語の方が数に敏感なケースもあるということです。
    英語の授業では、生徒の興味をどう引くかがとても重要です。高校の授業の中でも、言語学界隈でしか知られていないような内容を取り入れていくことで、言葉の面白さを感じてくれる生徒はいるのではないかなと感じています。

  4. 批判的・論理的思考を鍛えることができる
    大学院の授業で印象的だったのは、授業担当の教授が教科書の内容に対して「これはおかしい」とはっきりと批判することでした。そして、学生に対しても「常に批判的であれ」と指導していました。一方、高校の授業では教科書に書いてあることはあたかも真実であるかのように扱われています。これが、高校まで学びと大学(院)での学びとの大きな違いだと思いました。言い換えると、大学以上ではより自分の頭で考えることを要求されるということなのだと思います。はじめは、書いてあることにケチをつけているだけのように感じていましたが、実は批判的な意見こそ、その分野の研究をもう一歩前にすすめるために必要不可欠なものなのです。批判的思考能力は研究だけでなく、日常生活でも重要だと思います。例えば、ニュースを見た時に「それは本当なのか」「どんなデータに基づいているのか」「どんな方法でデータをとっているのか」と考えることができれば、ただ報道を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えて自分なりの解釈ができるようになります。批判的に物事を考えるのは、いうほど簡単なことではないですが(私もまだ苦手です)、今の高校生にかけている力のひとつなのではないかなと思いますし、授業でも取り入れていけば少しずつ身に付けていけるのではないかなと思います。
    さらに、教員の働き方に関しても、前年踏襲で続いていることを「本当に意味のあることなのか」と立ち止まって考え、改善案を出したりあるいは、廃止を提案することもできるようになると思います。


大学院で学びなおしてみたいと考えている先生方は多いのではないでしょうか。少しでもそんな先生方の参考になれば嬉しいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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