思弁逃避行 17.チュロスを片手にポップコーンを観る

 チュロスが食べたい。
 そう思っても中々気軽に手に取ることができない。それがチュロスだ。
 チュロスは映画館やテーマパークでお馴染みのお菓子で、スペインあたりで生まれた棒状の揚げドーナツのようなものだ。外はザクっと硬く、中は柔らかい。シナモンシュガーがこれでもかという程まぶしてあり、そのざりざりとした食感もまた良い。
 しかし悲しいことにチュロスを出来たてで取り扱っているのは、前述の通り映画館やテーマパークくらい。なので私はチュロスのために映画館へ行くのだ。

 映画館へ行くと、いつもキャラメルポップコーンの香りが立ち込めている。この匂いを嗅ぐと、映画館へやってきたことを実感できる。もし映画館がシトラスミントの香りで充満していたらと思うとゾッとする。映画館を映画館たらしめているのは、あのキャラメルポップコーンの香りなのかもしれない。
 しかし、ここで私が求めているのはチュロスだ。味付けがまばらで、無味のものが2割ほど混じっているキャラメルポップコーンなんて目じゃない。見てみろ、チュロスの抜かりない味付けを。くまなくシナモンシュガーまみれだぜ。
 無事チュロスを購入し、ついでに観る映画の上映時間を待っているとき私は思い出した。チュロスを持つ人は映画館において圧倒的マイノリティなのだ。あたりは皆ポップコーンにドリンクのセット。そのおかげで砂糖まみれの揚げ棒ドーナツを持ち歩く私の姿はひどく間抜けだ。ドリンクとチュロスで両手が埋まっている様子はさながらワンパク小僧。なんだか自分が卑しく思えてきた。
 もしここで私が注文したものがポップコーンならば、ドリンクと一緒に運べるトレイを渡してもらえるが、私にはそれがない。なぜならチュロスを選んだからだ。おかげでシアタールームへと続くチケットカウンターで少し手こずるハメにもなる。なぜチュロスを選ぶ者に苦行を強いるのか。

 冷静に考えてみると本来ポップコーンを持っている様子も十分間抜けだ。とうもろこしの種を爆発させた塩/キャラメル味の山。なんて頭の悪そうな食べ物だ。極め付けはあの“容器に対する量”だ。
 漫画に出てくる白米の如く山盛りで提供されることが常識となっている食品は、はたしてポップコーン以外にもあるのだろうか。思い浮かんだローストビーフ丼や海鮮丼などは、どれもその山盛りという量を特筆し、ウリにしている気がする。しかしポップコーンに「山盛り!」といった注釈が付いているところは見たことがない。なぜならそれがポップコーン界の当たり前だからだ。
 さらにポップコーンの量は止まることを知らない。トレイなどが下にあろうものなら、そこにあふれる前提でじゃんじゃん盛る。居酒屋の日本酒なのだろうか。あれは升に溢れるサービスだったのだろうか。

 私はそんなことを考えながら、食べ物にしてはみっともない程長いチュロスを頬張る。それにまぶされた異常な量の砂糖をボロボロとこぼしながら、またふと思う。ポップコーンは狂っている。皆、目を覚ましてくれ。

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