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米澤穂信『本と鍵の季節』(毎日読書メモ(466))

米澤穂信『本と鍵の季節』は、2018年に単行本(集英社)が刊行されたときに1回読んだのだが、昨年秋、続巻『栞と嘘の季節』(集英社)が刊行され、『本と鍵の季節』は集英社文庫になったので、新刊を読むまでにおさらいがてら読んでおこうと再読。

北八王子の高校に通う高2で図書委員の堀川次郎と松倉詩門のバディもの。米澤穂信の高校を舞台とした小説と言えば、誰もがデビュー作である『氷菓』をはじめとする古典部シリーズ(角川文庫)、それとがらっと趣向を変えた小鳩君と小山内さんの小市民シリーズ(創元推理文庫)をすぐ思い出すだろうが、図書委員バディのこの小説は、どちらともまた違った、ダークな(他の作品にもダークさはあったけれど、それよりも更に登場人物の中にある闇に踏み込んだ感じが)、そして切ない、大人になることを求められた少年の物語、と言う感じ。
どの小説に出てくる高校生たちも冷静沈着で達観しているよな、と思っていたが、その中でも群を抜く松倉詩門。なのに、自ら糊塗しているものを次郎に知ってもらいたくて、ヒントをばらまいているところに、子どもらしさの片鱗が見える。

図書委員として仕事をしている二人の姿に郷愁を覚えるわたしは勿論高校時代、図書委員をやっていた。彼らの通う高校の図書室は、校舎のはずれにあって、訪れる人も少なく、仕事で来た図書委員たちがたまり場にして、内輪的盛り上がりで更に他の利用者を阻害してしまったり、というような雰囲気に描かれているが、わたしの通っていた高校の図書館は学校の中心にあり、施設もかなり充実しており、利用者も多かった。でも、委員としてカウンターで当番をして、他の委員の友人と仲良く話したり、仕事を手伝ったり、新しい本と出逢ったりというインティマシーが、この小説を読むことで思い出されてならなかった。
次郎と詩門に相談をもちかける人たち、校外でたまたま遭遇した人たちのダークさ、それぞれの抱える苦しみ、それを細々としたヒントから手繰り寄せるバディ。
巻末で、彼らの未来が全く見えない…と思ったが(敢えて厚い友情というように描かないようにしているから)、これが続巻にどうつなげられるのか。

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