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マリー・ローランサンとモード(Bunkamuraザ・ミュージアム)

 渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「マリー・ローランサンとモード」展(2023/2/14-2023/4/9)に行ってきた。京都市京セラ美術館(4/16-6/11)、名古屋市美術館(6/24-9/3)の巡回あり。

マリー・ローランサンとココ・シャネルは、同じ1883年に生まれ、面識もあったが、お互いに距離を置いた存在でありつつ、同時代をそれぞれ独自のスタイルで駆け抜けたクリエーターだった。今回の展覧会にも「マドモワゼル・シャネルの肖像」(1923年作、オランジュリー美術館蔵)という作品が出展されているが、シャネルが肖像画依頼したのに、ローランサンの絵の仕上がりが気に入らず、でもローランサンも自分の筋を曲げず、結局納品されなかったという曰く付きの一品。


ローランサンの作品の女性たちは、モヤモヤしたドレスを身にまとっていることが多く、あまりモード、という印象はなかったのだが、キュレーターがうまく作品を選び、筋書きを作ると、なるほど、そういう切り取り方も出来るのだな、と感心する仕上がりに。また、ドレスよりも帽子が印象的、と帽子が格好いい作品を並べてあって、それにも膝を打った。帽子コーナーは写真撮影可能だったので紹介。

青と黒の帽子をかぶった少女
白い羽飾りの黒帽子をかぶった乙女
羽根飾りの帽子の女、あるいはティリア、あるいはタニア
帽子の乙女
日よけ帽をかぶって立つ女

ローランサンが舞台装置や衣装で参画しているバレエ、プーランクの「牝鹿」は、企画書や絵だけでなく、日本で上演されたときの映像も上映されていて、また、シャネルが衣装を担当したバレエ、ミヨーの「青列車」の映像も流されていた。
シャネルが確立したモダン・ガールのドレスの系譜を幾つかの衣装を展示して紹介し、また、マン・レイが撮影した、「シャネルの服を着た社交界の女性たち」の映像も面白かった。カール・ラガーフェルドが2011年のシャネルのオートクチュール・コレクションで、ローランサンをイメージしたピンクのドレスを発表していて、実物や映像も展示されていた。

エピローグの部にあったラガーフェルドのドレス


さて、わたしがマリー・ローランサンの名前を初めて知ったのは、小学生時代、松谷みよ子の「白いお部屋」という短篇を読んだ時だった。自分の住む小さな部屋にバニラエッセンスを振り撒きよい香りにしたり、ローランサンの絵に使われている色合いだけでまとめてみたり。その後印刷物でローランサンの絵を見て、その甘い雰囲気に惹かれ、初めて実物を見たのは1980年頃、玉川高島屋で開催された「バラ色の夢 永遠の乙女たち マリー・ローランサン展」の時だったか。その後は都内開催のローランサン展は必ず行き、蓼科にあったマリー・ローランサン美術館も何回か訪れた。ローランサン美術館はその後四谷のホテル・ニューオータニ内に移転し、そこにも行ったが(わたし以外お客さん入ってなくて、大丈夫かい、と思った)、ここも閉館…組織としては残っているようで、Facebookで情報発信はされているし、今回の展覧会でも、何割かの作品はマリー・ローランサン美術館の収蔵品だ。観たことある作品も沢山あり、気持ちはまるで同窓会である。

今回はシャネルとの対決(いや対決じゃないけど)という切り口で展覧会を構成しているので、カルチェ・ラタンとか、アポリネールとの恋愛とか、そういう部分はまるっと割愛。
画風の変遷とか、そういうアプローチもなく、時系列展示でもないので、ローランサンの画業を振り返る、というイメージはなし。
ちなみに章構成は、
I レザネ・フォルのパリ 「ローランサンとパリ社交界の女性たち」「エティエンヌ・ド・ボーモン伯爵の舞踏会」「シャネルを身にまとう社交界の女性たち」
II 越境するアート 「ローランサンとバレエ・リュス『牝鹿』」「シャネルとバレエ・リュス『青列車』」「ローランサンと装飾美術」「ローランサンと二コル・グルー」「アール・デコ博1925」
III モダンガールの登場 「1910年代:ポワレからシャネルへ」「シャネルの帽子店」「ローランサンと帽子の女たち」「1920年代:モダンガールの登場」「1930年代:フェミニンへの回帰」「1930年代のローランサン」
エピローグ:蘇るモード
となっていた。

学芸員の気持ちのよく伝わる展覧会だった。Bunkamuraザ・ミュージアムのサイズにしては作品数少な目だったのと目玉作品みたいのがないので、どこかに人が滞ったりすることもなく、ゆっくり見られた。会場は若干寒かったかも。
土曜の夕方に行ったが、全く混雑なし。女性客が多かったが、熱心に見ている男性客もあり。一人で来ている人が多く、静かだったが、平日の日中だともっと女性客が連れ立って来ているのかもしれない。
東急百貨店本店が閉店してしまい、アフターの愉しみが減じてしまった感はいなめないが、やはり、見に行ってよかったと思える展覧会だった。

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