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毎日読書メモ(56)『尻尾と心臓』(伊井直行)

現代日本の小説家の中で大好きな作家の五指に入る伊井直行なんだが、何故か賛同者がなかなか見つからない。

初期作品『草のかんむり』、『さして重要でない一日』なども好きだったが、強く推したりしないまましばらく忘れていて、『濁った激流にかかる橋』が読売文学書を受賞し、新聞の書評で紹介されていたので読んでみたら、ぶっ飛ぶような衝撃を受けた(2000年頃)。それから、読んでいなかった本を立て続けに読んだらどれもすごく面白い(『雷山からの下山』、『湯微島訪問記』など)。残念ながら、この『尻尾と心臓』以降、新作は刊行されていない。会社員小説についての考察なども面白く(本人の小説もこの『尻尾と心臓』を含め、会社員小説であることも多い)、すごく気になる。また新刊が読みたいぞ!

この『尻尾と心臓』(講談社)は、文庫になってないようだ。愛読者がもっとアピールしなくてはいかんのだろうか。うむむ。

本屋で発見。不覚! 伊井直行が新刊出しているのに気づいていなかったとは! 伊井の王道を行く立派なサラリーマン小説。東京出身で、彼女と結婚するために九州の会社に就職した主人公は、あるミッションを帯びて東京の子会社へ出向し、コンサル出身の営業ウーマンと、子会社の見えない壁に立ち向かう。壁を突破する苦難。様々な人間関係。息苦しく、手に汗握りつつ読む。そして、秘書かくあるべし、という、物語の肝部分のエピソードが腑に落ち、色々考えさせられた。佳き小説。(2016年7月)

『濁った激流にかかる橋』は現在は講談社文芸文庫に入っています、是非!

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