見出し画像

毎日読書メモ(13)『伯爵夫人』(蓮實 重彦)

改めて、蓮實重彦の経歴など見ていたが、東京大学の総長をつとめていたのが60歳から64歳まで。『伯爵夫人』を発表したのが80歳目前の2016年。
体力きちんと蓄えて長生きしたいね、と、変な感想をあらためて持った。
新潮文庫になっているけれど、もう読む人はあまりいないのかな...。

--
三島賞・蓮實重彦『伯爵夫人』を単行本が出る前に読もうと、雑誌(新潮 2016年 04 月号)を借りてきた。うわー、こんなの電車の中で読んじまってどうしようという、あからさまな隠語連発のエロ小説。回転扉の回るばふりばふりという擬音、女性がイっちゃうときのぷへーという声、この2つの音が文章中で何回も繰り返される。主人公の青年(子爵の孫)は、当たり前のように、使用人の女性たちに、射精して汚した下着と自分のものを清めさせ、従妹と裸身を見せ合い、でも寸止めのように、ことをなすには至らず、謎の同居人の伯爵夫人に言葉責めで翻弄される。
伯爵夫人とは何者だったのか。熟れた○○○を持つ、稀代の高等娼婦が、青年の祖父に、巴丁巴丁で出会った伯爵に、露西亜の秘密工作員に鍛えられ、性愛の技術で何かを動かした。動かした? それは青年を翻弄するための方便だったのか? ホテルの秘密の茶室とは一体なんだったのか? 言葉は技術だ、と感じ入らされる技芸を尽くした文章の先に、作者は何を残したかったのか? これが、彼の所に勝手にやってきてしまった物語なのか? インタビューの際にあんなに蓮實重彦が怒ったのは、読んでいればあんな通り一遍のインタビューなんてしないだろ、と思っていたからだったんだな。
(2016年7月)

#読書 #読書感想文 #蓮實重彦 #伯爵夫人 #第29回三島由紀夫賞 #三島賞 #新潮文庫

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?