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毎日読書メモ(98)「芸術新潮」2021年9月号:はじめてであう安野光雅

子どもの頃から安野光雅が好きだった。父がだまし絵みたいなものに凝っていたので、だまし絵の展覧会でエッシャーなどと並んで展示されている安野光雅も見たし、それ以前に、わたしと弟が買ってもらっていた「こどものとも」「かがくのとも」(福音館書店)で、リアルタイムで『さかさま』『なかまはずれ』『ふしぎなさーかす』『ふしぎなきかい』を読んだ。そこからもうだまし絵の世界で、科学への入り口でもあった。『算私語録』(現在は朝日文庫)などのエッセイも、感心しつつ読んだ。『ABCの本』『あいうえおの本』(福音館書店)で絵の中に描きこまれた細かいものを全部書き出してみたり(フレーム的な唐草文様はウィリアム・モリスへのオマージュだったらしい)、『旅の絵本』(全8冊・福音館書店)を眺めながら青い乗馬服の旅人と旅をしたり。津和野に旅行して、安野光雅美術館をいそいそと訪れたのもよい思い出。わたしの人生、ずっとずっと安野光雅と一緒だった。気が付くと、新しい絵本や、装丁を手掛けた本がいつも店頭に並んでいた。昨年暮れに亡くなられるまで、ずっと。

雑誌「ユリイカ」と「芸術新潮」で安野光雅追悼号を出したので、とりあえず「芸術新潮」9月号を買ってきた。でもじっくりじっくり味わいたいなら、2016年に刊行された「別冊太陽237 安野光雅の本 (別冊太陽 日本のこころ 237) 」というムックが盛りだくさんで素敵だ。「芸術新潮」の特集は逆説のように「はじめてであう安野光雅」という名前。お別れなのに。

絵本だけでなく、画家としての様々な活動を紹介していて、わたしがあまり馴染みのない作品なども出ていて、まだまだ見てみたい安野光雅があるな、と思った。渋谷にあった児童書専門店かつ出版社「童話屋」の田中和雄さんのインタビューが面白かった。童話屋で刊行した「美しい数学」シリーズの絵本も懐かしい。

エッセイ集『空想工房』(現在は文春文庫)の中に、当時、安野光雅が知り合いに出していた年賀状の図版が入っていて、鮮明に記憶に残っているのだが(まだ中学生の頃だったと思う)、それが「芸術新潮」の中で紹介されていて、すごく懐かしかった。

京都の料亭和久傳が、京丹後市に「森の中の家 安野光雅館」という美術館を2017年に建てたということなので(安藤忠雄の建築物だそうだ)ぜひとも行ってみたいと思って、特集のページを閉じた。

本棚に何十冊も残っている安野光雅の本、そして、安野光雅が装丁した「ちくま文学の森」「ちくま哲学の森」「ちくま日本文学全集」、本棚の一等地を占めている100冊以上の安野光雅を、じっくりじっくり味わって、これからも生きていく。


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