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毎日読書メモ(246)『ニキの屈辱』(山崎ナオコーラ)

山崎ナオコーラのことがもっとわかりたい、と思って、『ニキの屈辱』(河出書房新社、現在は河出文庫)を読んでみた。
若くして名声を得た写真家ニキと、アシスタント募集に応募して、ニキのそばにいるようになった加賀美の恋愛物語。基本的に、ニキと加賀美、二人しか出てこない小説。ひたすらに二人の関係性と、写真という芸術に向き合う態度だけが描かれる。
立場的にはニキが圧倒的に強く、加賀美は決して逆らわない。最初は付いてこさせるだけで、道具を運ばせることすらしてくれなかったニキが、少しずつ加賀美に心を許し、彼女にとっての写真の極意を少しずつ加賀美に伝えるようになる。
それは、恋愛小説というよりは二つの美しい孤高の魂の物語。お互いに寄りかかっていない。その、しんとした輝きが心に染み入る。
最後の、二人で会うシーンで、ニキが「屈辱だ。カノッサの屈辱だ」と言う。そこで、二人は対等になる。二人の恋愛がどういうものだったかを、お互いようやく認識する。
そして、ニキも加賀美も、更にくっきりと写真を撮れる人になっていくのだと感じさせる。ちょっと寂しくて、明るい光のさすエンディング。

カバー写真は川島小鳥。写真の小説だったので、このカバー写真のインパクトもまた作品の一部のように見えてくる。

#読書 #読書感想文 #山崎ナオコーラ #ニキの屈辱 #カノッサの屈辱 #河出書房新社 #川島小鳥

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