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田口ランディ『聖地巡礼』(毎日読書メモ(407))

過去の日記を読み出したら、なんだか懐かしいやら興味深いやら。忘れていたことなども色々思い出す。通勤の電車の中でせっせと読書をしていた時期だった(まだ携帯電話をどっぷり見ちゃう習慣はなかったから、今よりしっかり読書していたと思う)。この時期にかなり読んだのが田口ランディだったな、と懐かしく思い出す。

田口ランディ『聖地巡礼』(メディアファクトリー)に取り掛かる。屋久島とか、天河弁財天とか、水につながって、聖的霊的な場所を、作者と編集者たちがどさ回っているルポ。ちょっと突込みが浅いかなー。でも興味深い。

田口ランディは比較的、おおっこの言い回しは素晴らしい!、みたいな感じのない人(言文一致の文章はまさにネットで文章を書き流していた人独特の雰囲気)なんだけど、今日読んでいいな、と思ったところを、ちょっと長くなるけど書き写してみる。(『聖地巡礼』メディアファクトリー pp232-233)

しみじみとしたい旅だった。
帰ってきて、振り返って、東北の果てに、自分と繋がっている場所があると思うとなぜかほっとする。
原稿を書いて、インタビューに応えて、手紙の返事、保育園の送り迎え、新しいファクスの説明書を読み、テロ事件について考え、家計のやりくり、編集者との打ちあわせ、初校を戻して、今夜のご飯に、あれやこれや...。全く、現実ってのは凄い。なにもかも塗りつぶして死ぬまで現在進行形だ。
でも、この現実を生きるために必要なのは、きっと豊かな心の物語だ。私は私が生きるために聖なる場所が必要だ。魔法と祈りが必要だ。それは現実とは表と裏の関係である。どんなに裏の物語が荒唐無稽でも、それが裏の物語であることを自覚していれば、表と裏は矛盾しない。
表と裏は、ふたつでひとつだ」

『聖地巡礼』メディアファクトリー pp232-233

何故か、この部分がすごく心にしみたんだよね。この本はこのことが言いたいがための本なんだな、と思った。
(2004年9月の日記より)

#読書 #読書感想文 #田口ランディ #聖地巡礼 #メディアファクトリー

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