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逆流性食道炎と食道裂孔ヘルニア

以前の記事で内視鏡検診の重要性を述べました。

「胃がん」を含む多くの「がん」は早期の段階では無症状であることが分かっています。つまり、全く症状がなくても定期的に内視鏡検査(胃カメラ)を受けることで初めて「がん」は早期発見が可能となります。

一方で、多くの方は"何かしらの症状"が出てから初めて「胃カメラを受けてみよう」と受診される方が多いです。

今回は受診のきっかけになる症状で特に多い胸焼け・呑酸症状(酸っぱいものがあがってくる)・ノドのつまり感に関連する逆流性食道炎食道裂孔ヘルニアについて解説します。

逆流性食道炎ってなに?

正常な状態では、下図(左)のように食べ物は口から食道を通って、胃に入ったのちに、胃酸(消化液)によって消化され、十二指腸・小腸側に流れていきます。

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この"上から下へ"の胃酸(消化液)の流れが、何かしらかのキッカケで逆流することによって、食道炎症が起きた状態が、逆流性食道炎です。

食道裂孔ヘルニアって?

逆流性食道炎とセットで診断されることが多いのが、食道裂孔ヘルニアです。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「腰」のヘルニアなら聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?

例えば腰のヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア)の場合、腰の背骨と背骨をつなぐクッションの役割を果たす「椎間板」が外に飛び出してしまうことにより、様々な神経根症状(神経が圧迫されることによる症状)が出る整形外科領域の病気です。

椎間板ヘルニア図

この「正常な位置から飛び出す」ことを「ヘルニア」と呼びます。

食道裂孔ヘルニアの場合は、胃と食道の境目でベルトのような役割を果たしている横隔膜の隙間から、胃の一部が食道側へ飛び出しまっている状態のことを指します。

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これによって、胃から食道への逆流防止機構が働かなくなり、胃酸が逆流しやすくなる一因になります。

逆流性食道炎の重症度

逆流性食道炎の重症度の評価には、内視鏡で見た際の程度により下図のように分類されます(ロサンゼルス分類)。

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「食道と胃の境目(食道胃接合部)」をみているところですが、一番左の図(正常の図)でいうと色の薄い右側部分が食道側、色の濃い左側部分が胃側の粘膜です。逆流性食道炎のない、正常な状態では、食道側の粘膜の細い血管がうっすらと透けて見えているのがわかると思います。

ここに炎症が加わると…まず最も軽い段階では、食道側の粘膜が白く濁って、血管が透けて見えなくなります(Grade M)。

さらに炎症が加わると、食道粘膜に赤い"ひび割れ"のようなものが入り、これが5mm未満までならGrade A、5mm以上ならGrade B、というように分類されます。

そして、これらの"ひび割れ"が隣同士くっついた状態に広がるとGrade CGrade D(全体の3/4周〜全周性の炎症)、といった具合に進んでいきます。

逆流性食道炎は必ず治療が必要?

胃カメラをして"逆流性食道炎"です。と言われると、「病気があるなら治療しなくてはいけない」と考える方が多いのですが、実際はその必要はありません。

実は最も程度の軽いGrade Mの逆流性食道炎まで含めると、約3人に1人程度は、内視鏡で見た際に逆流性食道炎があります。

この中で治療の対象となるのは、胸焼けや呑酸症状、ノドのつまり感など、なにかしらかの症状がある場合だけです。

症状がない場合は、今後の悪化を防ぐためにも、次の項に示すような生活習慣の改善が望ましいです。(※但しGrade C〜D相当の強い炎症がある場合は、症状がなくても内服治療を受けることをお勧めします。)

逆流性食道炎の原因と生活習慣

逆流性食道炎の原因はザックリと分けると下記の3通りがあります。

食道胃接合部の締まりが悪い(食道裂孔ヘルニア食道下部括約筋の弛緩)、高い腹圧③胃酸過多

ご自身の生活習慣で気をつけることができることとしては、減量(肥満・内臓脂肪過多の場合は減量することで明らかに症状の改善が期待できます)、姿勢の改善(猫背など。デスクワークやスマホ時間の長い方は特に注意)、食習慣の改善(高脂肪食・甘いもの・アルコール・炭酸飲料・カフェイン飲料などの過剰摂取を控える、水分をまめに摂取する、就寝前2時間以内の食事は控える)、禁煙、などが挙げられます。

今日のまとめ

内視鏡を受けるきっかけになる症状で特に多い胸焼け・呑酸症状・ノドのつまり感に関連する逆流性食道炎食道裂孔ヘルニアについて解説しました。

ご自身の生活で改善できる点はないか、生活を見直してみましょう。

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