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内視鏡専門医試験の申請書類【2025年版】通過率、症例要約記載例

内視鏡専門医試験(2025年7月実施予定)の申請書類に関する情報です。


1.書類審査の通過率は99%以上


まず最近の専門医試験審査結果について
「申請数」、「書類審査通過数」、「受験数」をご覧ください。

2019~2021年度については、申請数全体の99%以上が書類審査に通過していることがわかります。

はじめにこの記事で最もお伝えしたいことをまとめると
「書類審査は出せばほぼ通るので、細部は気にしすぎず早めに出しましょう
ということです。


2019年度専門医学術試験(2019年7月27日実施)結果報告
https://www.jges.net/news/2019/11/15/22002


2020・2021年度 専門医学術試験(2022年2月27日実施)結果報告
※現在学会HPに掲載なし

※2022年度については
「申請数:1236」に対して「書類審査通過数:1036」と200人が書類審査通過していないように見えますが「受験数:1228」と申請数の99%以上が受験しています。
これはおそらく2020~2021年度の書類審査通過者がCOVID19流行に伴う特例措置で延期する選択をして2022年7月に試験受験した影響で、書類審査通過数が申請数よりも少なく表記されているものと考えられます。
つまり2022年度に「新規に申請した方」が約1036名、
2020年度~2021年度に「既に書類審査通過し延期して受験した方」が約200名いて、合計申請数が1236名になったと思われます。

2022年度専門医学術試験(2022年7月24日実施)結果報告
https://www.jges.net/news/news-specialist/2022/11/30/62212


2022年度の報告だけ見た方は「書類審査で200人落ちるの?」とびっくりして書類を作りこんでしまいそうですが
 ★申請数全体の99%以上が書類審査に通過している
と思われます。形式さえ守っていれば細かい内容は気にせず早めに提出!を重視しましょう。

ちなみに2022/4発表の結果報告と2022/11発表の結果報告で2020・2021年度の合格数に乖離があるのも、COVID19の流行に伴う特例措置で試験受験を延期した方がおり最終的な合格者数が変わったためと思われます。(下図赤枠)


2.症例要約の記載例

専門医試験の提出物は以下の通りです。
締め切りは2025年2月末日(消印有効)です。
「書類に不備があった場合の訂正ができるよう期日に余裕をもって」提出することが推奨されています。

消化器内視鏡学会HP
会員メニュー→「資格申請」→「専門医申請の記入要綱」過去の書類より抜粋

申請書①~⑨については「専門医申請の記入要綱」(https://www.jges.net/sennmonni202501から閲覧可能)に記入例があります。「内視鏡治療症例要約20例」についてどういった内容が求められているか分かりにくい方もいると思いますので参考となる記載内容を例示します。

なお治療症例要約20 例の中には
 ①切除術(ポリペクトミー、EMR、ESD)
 ②止血術
 ③狭窄拡張・ステント挿入

の「3手技を必ず含むようにして下さい」と「専門医申請の記入要綱」1ページ目に記載がありますので、ご留意ください。

参考までに私が受験した際に提出した際は以下のような内容でした。
 ・ESD(食道、胃、大腸) ×6
 ・下部EMR ×4
 ・下部Ipポリペクトミー ×1
 ・大腸ステント挿入 ×1
 ・S状結腸軸捻転の内視鏡的整復 ×1
 ・胆管ステント留置 ×2
 ・食道異物(PTPシート)に対する異物除去術 ×1
 ・胃アニサキス症に対する虫体摘除術 ×1
 ・止血術(EVL) ×1
 ・止血術(出血性胃潰瘍に対するクリップ留置) ×1
 ・内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS) ×1

提出時に運よく症例数が多い施設にいたので手技のバリエーションを豊富にしようと意識しましたが、試験を終えた後の感想としてはこれら提出症例の内容が試験の合否に関わる可能性は非常に低いと思います。
試験の点数などが公表されないので断言はできませんが、受験者の方々の話からすると合否は基本的に学術試験の点数のみで決まると思われます。
施設によっては滅多に止血術や狭窄拡張術に関われない場合もあると思いますので、例えば
 ・EMR/CSP ×18
 ・止血術 ×1 (ポリープ切除後のクリップ留置など)
 ・大腸ステント挿入 ×1
でも3手技を含んでおり、症例要約として問題ないと思われます。内視鏡学会の方も丁寧に答えてくださるので、不安な方は事前にメール等で問い合わせても良いかと思います。

ここから治療症例要約の記載例をいくつか載せます。個人情報等に配慮し実際の内容から改変しています。あくまで参考としてください。

内視鏡治療手技名:内視鏡的粘膜切除術(EMR)
診断名:腺腫内癌
病理診断名(病理No. P00-000000):tubular adenocarcinoma in tubular adenoma
・治療要約:
S状結腸 ○○mm大強発赤調Isp腺腫内癌疑いに対してEMRを行い、出血は認めなかった。切除後に同部位へクリップを留置し、ネットを用いて病変を回収して終了した。(内視鏡写真を2枚貼り付け)
・経過要約記載例:
○年○月に近医で便潜血陽性を指摘され、〇〇病院で○年○月に行った下部消化管内視鏡検査でS状結腸に強発赤調○○mm大隆起性病変を認め腺腫内癌疑いと診断、EMR適応病変と判断され○年○月○日に上記病変に対してEMRを行った。病理結果は Well-differentiated tubular adenocarcinoma in tubular adenoma, ○mm(carcinoma)/○mm(adenoma), tub○, pTis (M), Ly0, V0, pHM0, pVM0で、特殊染色の結果異型腺管の一部の範囲においてp53が強陽性を示し高分化相当の管状腺癌(tub1)と考えられ、いわゆる腺腫内癌の所見であった。癌は粘膜内に留まっており脈管侵襲は認めなかった。以降定期的に内視鏡的経過観察を行う予定である。

※コメント・・・20症例のはじめの方は気力があり治療要約を長めに書いていたのですが、途中から疲れてきて文章が短くなりました。
文章が短くて空白が目立つ症例については、実際の内視鏡画像を余白に印刷して体裁を整えました。
切除術全般で「経過要約」については「診断契機→治療→病理結果→その後の方針概略」というイメージで書くと分量や体裁が整いやすかったですが、量にこだわらず簡潔な内容で十分だと思われます。

内視鏡治療手技名:内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
診断名:S状結腸癌
病理診断名(病理No. P00-000000):tubular adenocarcinoma (tub○), ○x○mm, type0-IIa, pTla (SM, ○○μm)
・治療要約:
AV○○cmのS状結腸早期大腸癌に対してESDを行った。GIF-Q○○で病変を視認し、左側臥位で画面左側が重力方向となることを確認し画面右側より局注を開始した。肛門側から画面右側をU字切開後に同部位から剥離操作を追加した。スコープが剥離粘膜下へ潜り込める状態まで剥離をすすめ、口側から画面左側へ剥離と切開をすすめた。腫瘍の深部浸潤を疑う所見は認めず、全周切開後に重力を利用しながら剥離をすすめ病変を一括切除した。

・経過要約記載例(上記とは異なるESD症例の例示):
近医で便潜血陽性を指摘され○○病院へ紹介され、○年○月○日に行った下部消化管内視鏡検査でS状結腸に○○mm大の 0-IIa 病変を認めた。病変は全体的に緊満感に乏しかったが中央部に陥凹した局面あり悪性が否定できず、また襞にまたがる位置に存在しEMRでの一括切除は困難と判断しESDを行う方針となった。○年○月○日に上記病変に対してESDを行い、病理結果は〇〇, Ly0(D2-40), V0(EVG), pn0, pHM0, pVM0 で病変全体が癌と考えられる病理所見であった。経過観察目的の内視鏡検査で再発所見を認めず、以降定期的に内視鏡的経過観察を行う予定である。

※コメント・・・治療要約はもっと短い文章でよいと思われます。少し長めに記載した一例です。

内視鏡治療手技名:止血術(クリップ留置)
診断名:出血性胃潰瘍
病理診断名(病理No. ):(病理検査なし)
・治療要約:
○年○月○日に出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血術を行った。胃内に凝血塊と食物残渣の貯留を認め、観察可能な範囲で胃体中部から胃体下部に合計○個の潰瘍性病変を認めた。それぞれの潰瘍底を洗浄し観察すると比較的サイズの小さい体中部の潰瘍性病変にoozingを伴う露出血管を認めた。Forrest 分類Ibにあたる湧出性出血を伴う露出血管に対してクリップ留置を行い止血し た。クリップ留置後にwater jetで洗浄しクリップが脱落しないこと、止血が得られていることを確認して処置を終了した。

・経過要約記載例:
もともと心房細動に対して近医で抗凝固薬を処方されており、○年○月頃から腰痛に対してロキソプロフェンNaなど鎮痛薬を処方されていた。○年○月○日頃から倦怠感を自覚、○月○日の○時に吐血および下血 を認め救急要請し○○病院に搬送された。来院時の血液検査でHb○g/dLまで低下しており輸血療法、上部消化管出血に対する内視鏡的止血術を行った上で入院加療となった。再出血を認めなかったが入院後に心不全の増悪を認め、入院下で心不全治療を継続中である。

※コメント・・・病理検査を行っていない症例は(病理検査なし)と記載しました。提出時に入院継続中の症例もありました。

内視鏡治療手技名:大腸ステント挿入
診断名:進行大腸癌
病理診断名(病理No. 00-00):Tubular adenocarcinoma, pT●N0M0, pStage IIa

・治療要約:
○年○月○日に横行結腸癌による大腸閉塞に対して大腸ステント留置術を行った。肛門から横行結腸閉塞部までは便塊が少量認められ、横行結腸AV ○○cmの部位に全周性の2型進行癌の所見を認めた。スコープ通過は困難で、透視下でワイヤーを腫瘍の口側へ挿入し続いて造影カテーテルを挿入、造影剤(ガストログラフ ィン)を注入し狭窄部の長さが約○○mmであることを確認した後にNiti-S大腸用ステント (CDT〇〇) を留置、ステント内腔が開通したことを確認して処置終了した。

・経過要約記載例:
○年○月○日から右下腹部痛を自覚していた。 同年○月○日○時頃の食事摂取後に腹痛が増強し救急要請、来院後に複数回嘔吐あり、画像検査で横行結腸癌による大腸閉塞と診断され同日入院と なった。○年○月○日に内視鏡的ステント留置、○月○日より飲水開始、○月○日より流動食開始、○月○日に 5分粥まで食上げしその後閉塞症状認めず○月○日に退院となった。術前検査後の○年○月○日に腹腔鏡下横行結腸切除術を行い、病理結果はTubular adenocarcinoma, ○x○mm, ~~であった。術後経過良好で○月○日に退院となった。


※コメント・・・「狭窄拡張・ステント挿入」は施設の環境等により関われる機会が限られている先生も多いと思います。内視鏡的胆管ドレナージ術(Endoscopic Biliary Drainage)など、胆管ステントや膵管ステントの方が書きやすいかもしれません。

内視鏡治療手技名:胆管ステント挿入、EST
診断名:総胆管結石
病理診断名:Chronic cholecystitis, no malignancy

・治療要約:
○年○月○日に総胆管結石による胆管炎に対して胆管ステント挿入による胆管ドレナージ術を行った。JF-〇〇Vで乳頭にアプロー チすると乳頭開口部の形状は結節型で、隔壁型の膵胆管合流形式を想定し見上げ法で胆管挿管を行った。傍乳頭憩室を認め、胆管走行に注意しながら胆管造影行ったところ陰影欠損を認め総胆管結石として矛盾せず、 EST小切開を行ったところ少量のoozing を認め凝固波で止血を行った。出血リスクを考慮し採石は二期的に行う方針としチューブステント(7Fr7cm)を留置して胆汁流出があることを確認し処置終了した。

・経過要約記載例:
○年○月○日から腹痛と嘔気を自覚した。症状が持続するため同年○月○日に近医を受診し血液検査で胆管炎疑いと診断され、加療目的に○○病院を紹介され受診した。○○病院で行った画像検査および血液検査所見では胆嚢結石、総胆管結石、胆管炎および胆嚢炎の所見を認め同日内視鏡的ドレナージ術を行い○月○日に総胆管結石を採石後、○月○日に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行われ、その後経過良好で退院となった。

※コメント・・・経過要約はこの程度の内容で十分であろうと思います。

記載例はここまでです。


3.消化器内視鏡専門医取得のメリット


私自身は内視鏡手技がすごく好きで消化器内科を選んだため専門医取得に対して意欲があったのですが、受験を考えている方皆がそうではないと思います。所属施設の事情など様々な理由で受験を検討しているものの、専門医取得のモチベーションが上がらない方も多々いると思います。特に普段消化器内科を専門として診療されていない先生方は、ご自分の専門領域を持ちながら試験準備を進めることや試験について質問できる医師が身近にいない環境に大変なストレスを感じられることと思います。

そんな方に向けて、少しでも専門医資格取得のモチベーションが上がればと思い消化器内視鏡専門医資格を取得するメリットとして分かりやすい点をいくつか挙げます。

【消化器内視鏡専門医資格取得のメリット】
1.指導施設などの施設基準を満たす材料になるため就職に有利
2.医院開業等にあたり標榜が可能
3.地域の自治体が実施する検診等で専門医資格を求められた場合に対応可能
4.内視鏡業務のスポットバイト等において、専門医資格を有する条件付きで(上記要件を満たすこともあり)給与設定が高い求人がある

4については意外と知られていないかもしれません。内視鏡専門医資格を前提とした求人自体少ないですしあくまで付随的な価値なので参考程度ですが、内視鏡専門医を有することで給与が一般的な内視鏡バイト(相場は下記画像程度と思います)の1.5倍~2倍に設定されている求人をみることがあります。働き方の可能性が広がることが、受験者の皆様のモチベーションに少しでも繋がればと思います。


4.最後に

内視鏡専門医試験は私にとってこれまで医師として受けた試験の中で最も臨床に有用で試験勉強が楽しかった試験なので、これからも最新の情報に触れながら知識を更新していきたいと思っています。これから試験を受ける皆様が効率よく試験準備を進め、結果として臨床でひとりでも多くの方により良い医療を提供する一助になれば幸いです。

最後まで目を通していただきありがとうございました。

Dr Y


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