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夫は、出産に立ち会うべきか。

僕はもともと、出産に立ち会うつもりはなかった。

理由は至極単純。血や臓器を見るのが苦手だから。健康診断で採血するときは、常に明後日の方向を向いている。医療ドラマの手術シーンも苦手だ。『TOKYO  MER』は毎週観ているが、手術シーンはやはり明後日の方向を向いている。『救命病棟24時』的な番組は、だいたい観れない。

出産前には親族をはじめいろいろな人に「出産には立ち会うの?」と聞かれたが、そのつもりがない旨を伝えると「えー!せっかくの機会なのに」と立ち会わないことに理解を示してもらえることはほとんどなかった。

もっとも、コロナ禍においては感染防止のために立ち会いを禁じられるケースがほとんどのため、「夫たるもの出産に立ち会うべきである」という無言の圧力を感じることは、平時よりも少なかったのだろうと思う。

しかし、結果的に僕は出産に立ち会うことになる。というのも、妻が入院した病院は、少し大げさに表現するならば「四の五の言わず夫は出産に立ち会えや」というスタンスの病院だったから。お見舞いは禁止だが、夫に限定して出産の立ち会いを可能にしているというのだ。

厳重な感染対策を講じた上で、誓約書的なものにも署名。数週間前には立ち会いにあたっての、簡単な研修的なものも受けさせられた。「そこまでして本当に立ち会わねばならないのか…」と、そのときはげんなりしたものだ。

今でこそ、出産に立ち会って良かったと思える。ただ、それはあくまで結果論。出産に立ち会うかどうかを迷っている人がいれば、僕の個人的な感想を伝えこそすれ、立ち会うことが絶対に正義だとはやはり思えない。少なくとも「立ち会いをしない」という決定に非難めいたリアクションをされるのはやはり違う。夫婦や家庭ごとに事情や考え方はあるもの。その多様性も、受け入れてもらえる社会であるといいな、とは思う。

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