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よるのさかなの本

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#文学フリマ

【嘘と本当、あるいはひどく個人的な告白】

【嘘と本当、あるいはひどく個人的な告白】

 二年半前、初めて出店した文フリで同じく初出店していた作家の浅生鴨さんと偶然隣のブースで、本を買ってもらったことをきっかけに小説を書かせてもらったりカバーイラストを描かせてもらったり美味しいお菓子を食べさせてもらったりしている……という嘘みたいな話を信じている人は、一体どのくらいいるのだろうか。

 いや、本当のことではあるのだが、僕の人生は、嘘みたいなことがわりと平気な顔をしてずけずけと起こる。

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【両A面シングル】『祈り/けむりをたおりて』

【両A面シングル】『祈り/けむりをたおりて』

短編小説が好きだ。

もちろん長編小説も好きなのだけど、短編小説の短い時間でさらっと読めるのに何か残る感じ、その鋭利さ鮮烈さとひどく具体的で詳細な世界にグッと近づいたと思ったらすぐにフイッと力なく離れて、本当にそこにあったかどうかも曖昧になってしまうような存在感が。

ありがたいことに世の中にはたくさん短編小説の本があって、しかしその全ては「短編集」という形でしか存在しない。おかしなことだと思う。

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『けむりをたおりて』のこと

 自分が書いた小説の誤字脱字表記ゆれを拾っていたら、一人称の表記ゆれを見つけた。「【僕】に統一でいいのかな…」と直している途中で「あ、違う、こ、こいつ、この子の前だけ【俺】になっているんだ…!」と気付いた時の衝撃。も、もう直しを入れてしまったわい……。多分、書いた時は無意識にそうしていたのだと思うけれど、一年半前の自分が何を考えているか分からなすぎていじるのがもう怖い。

 文学フリマに出す本のた

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【ぼくのあお4 朝型世界の午前二時】

【ぼくのあお4 朝型世界の午前二時】

仕事を辞めてから何もする気が起きなくて、日がなボーっと起きたり寝たりを繰り返して過ごしていた。何もしたくはなかったけれど、なんでだか本は作っていて、性懲りもなくまた自分で印刷して、縫って、綴じている。

過去に何度か、本を読む体力も漫画を読む気力も映画を見るエネルギーもなくなってしまった時期がある。就活中とか、仕事辞める前とか。
その頃は毎日眠りすぎて眠れず、ただ起きていることも辛くて、ずっとはて

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