Q 開示請求のスケジュール感を教えてください。
A ①IPアドレスの開示請求については、裁判所の決定が出るのに2~3か月程度、決定後に情報が開示されるのに一般的には1~2週間程度、サイトによっては1~2か月かかります。②氏名住所の開示請求については、裁判所の決定が出るのに1~3か月程度、決定後に情報が開示されるのに2~4週間程度かかります。
解説いたします!
1 IPアドレスの開示請求について
IPアドレスの開示請求のスケジュールを考えるにあたっては、⑴裁判所の決定が出るまでの時間と、⑵裁判所の決定が出てから、実際に情報が開示されるまでの時間を考慮する必要があります。
⑴ 裁判所の決定が出るまでの時間について
仮処分を使う場合、裁判所の決定が出るまでにかかる時間は、サイトがどこまで強く反論してくるかによっても左右されます。あまり反論しないサイトの場合は、3週間程度で開示決定が出る印象です。これに対して、強く反論してくるサイトの場合は、2~3か月程度です。
⑵ 情報が開示されるまでの時間について
情報が開示されるまでにかかる時間についても、サイトごとに異なります。通常は1~2週間程度ですが、海外のサイトなどでは1~2か月かかることもあります。そのため、保存期間のQにも記載しましたが、特に海外のサイトの場合は、投稿から4週間以内には開示請求を始めないと、投稿者の特定ができない可能性が高くなります。
2 氏名住所の開示請求について
氏名住所の開示請求のスケジュールを考えるにあたっては、⑴訴訟手続を使うのか、開示命令申立を使うのかといった手段の違いを考慮する必要があるほか、IPアドレスの開示請求の場合と同様に、⑵裁判所の決定が出るまでの時間と、裁判所の決定が出てから、実際に情報が開示されるまでの時間を考慮する必要があります。
⑴ 訴訟手続を使うのか、開示命令申立を使うのかについて
法改正前は、氏名住所の開示請求は、訴訟手続を利用して行われていましたが、法改正によって、訴訟手続のほか、開示命令申立という手段を使うことができるようになりましたので、どちらを使うのかを選択する必要があります。
これについては、訴訟手続を使う場合、判決が出るまでに3~6か月程度の時間がかかる一方で、開示命令申立を使う場合には決定が出るまでに1~3か月程度で足りることが多く、開示命令申立のほうが時間的に短いというメリットがあります。
また、訴訟手続を使う場合、担当する裁判がプロバイダ責任法について専門的知見を有しているとは限りません。(私も、法改正前に訴訟手続を利用した際、裁判官から非常に基礎的なことについて質問された覚えがあります。)これに対して、開示命令申立を使う場合、担当する裁判官はプロバイダ責任制限法の専門部のメンバーに限定されます。
こうしたことから、法改正後は、開示命令申立を使うのが良いと思います。
⑵ 裁判所の決定が出るまでの時間について
上記のとおり、開示命令申立を使う場合には、1~3か月程度となります。
⑶ 情報が開示されるまでの時間について
裁判所の決定後、情報が開示されるまでの時間は、2~4週間程度です。