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法務と監査の違いって??~常勤監査役就任1年経過時点での雑感~

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【この記事の概要】
リーガルの専門性を持った人材のキャリアパスとして、「監査役」は1つの選択肢。そう思って監査役になったものの、「常勤監査役」であったために想定よりも深く監査業務をすることに。
そこで思った、「法務と監査って思ったより違う!」を少し整理する試み。


法務と監査の大きな違い

①執行と監査の違い

まずはここですね、私は「監査」というものが全くわかっていませんでした。監査役就任前に、常勤・非常勤含め何人か監査役の方にお話を聞いたりして、イメージはありましたが、自分がインハウスだったときに、がっつり一緒に仕事をするというほどではありませんでした。
 しかし、実際に常勤監査役として仕事をするようになったときに、これまで自分がやってきた仕事はあくまで執行側の業務であり、監査とは目的もやることも違うのだと実感しました。それは一言で言うと、「執行と監査の違い」でした。

②組織的位置づけにも反映

 「執行と監査の違い」は、当然ながら組織図にも現れます。
 下の組織図は、私が各社の組織図を参考に、架空のものとして作成しました。
 監査役は、株主総会によって選任されるので、株主総会の配下におかれます。特徴的なのは、独立性を保つために、監査役の事務局機能以外にはどこの組織とも繋がっていないという点です。企業の組織内に位置しながら、独立・客観的な立場を保ちます(結構孤独)。
 一方で法務は、色々なところに位置することがありつつも、共通するのは経営者の配下であるということです。
 組織図からわかるのは、「誰のために」仕事をしているか、ということですよね。

監査役と法務の組織図内の位置づけ

③目的の違い

 一口に法務(この場合、企業内法務)といっても業務内容が多岐にわたりますし、 「監査」に関わる役職だけでも色々ありますが、両者はやはり目的が違います。
 組織図を見てもわかるように、法務は経営の実働部隊の一部なので、法的な領域を扱いますが、その目的は事業運営を円滑に行うことにあると思います。
 一方で、監査役が行うことも、究極的には事業運営を良い方向に行うことではありますが、経営監督や株主の利益保護を促進し、健全な経営を確保することが目的といえます。ただし、(最近知ったのですが)日本では証券規制はアメリカ法、商法はドイツ法を基礎として明治期に定められたので、監査役(監査役会)の権能がアメリカともドイツとも違う、結構特殊なものになっているのですよね。 

 ・・・まだ抽象的ですね。次は、業務レベルでの違いを。
 

業務レベルでの違い

業務レベルでの違いってどんなところにあるのかな、と思っていたところ、内部監査の勉強の際に出てきた「契約監査」と普段行っている契約審査の違いが面白かったです。監査役監査と内部監査も、立場等色々違いますが、ここでは、「執行」と「監査」の違いの方を重視して比較してみます。

以下の表は、私が普段行っている契約審査や、監査を勉強している際に考えたことなので、完全に私見です。

契約審査と契約監査の違い(私見)

日々仕事をしたり勉強していて感じるのは、契約審査のほうが、個々の取引にまず着目しており、契約監査のほうが、より全社的なリスクコントロールの一環といった目線が強いというような点です。

同じ契約書を見るといっても、役割によってこんなにも違うのか!と思います。
取締役会に参加するときにも、求められる役割の違いを感じます。監査調書一つとっても、何を書くべきかがいまだに右往左往で、経験豊富な非常勤監査役のお二人や、会計監査人、他社の監査役の皆さんのお力を大いに借りて学ぶ日々です。

弁護士であれば、監査役に適任か??

あえて言いたい。弁護士だから監査役に適任、といいきれるものではない、と。
弁護士には「あぁ、天才。」と思う方もいるので、そのような方であれば、別ですし、ガバナンス分野の経験豊富な方、インハウスでなんらか監査経験がある等あれば。。
ですが、執行側の経験しかない普通の弁護士が、何の監査知識もなく監査役になるのは、特に常勤監査役の場合難しかったです(私見)。法律上の立て付けがわかることと、実際の実務としての監査役監査を行うことは違いました。

また、会社側が監査役として弁護士を考える際のニーズは適切か?ということも、考えたいところ。

弁護士は、常勤監査役というよりは、圧倒的に2人目、3人目としての非常勤監査役としてニーズが高いです。

そこで思うのは、外と社内に法務専任者や弁護士がいないから、監査役に弁護士をと望む会社もいるのでは?と言う点です(何社かの監査役のオファー面談を受けながら感じた実感)。
しかし、本来は監査役に求めることと、顧問弁護士に求めることは違うはず。
その点を踏まえた上で、是非適切と思う候補者を選んでいただけた方が、マッチングの成功率も高くなるし、選任後にも良い結果になると思います。
もちろん、常勤監査役と非常勤監査役で求められることは違います。その意味では、常勤監査役と非常勤監査役とで、候補者の弁護士に求められるスキル・経験も当然違うので、会社側もその点を自覚的にJDを決める必要があります。
このあたり、思うところはありますが、まだ言語化するのはまだ心許ないので、又機会があれば。。一つ言えるのは、監査役としてのニーズが弁護士以上に高い公認会計士について考えた場合でも、経験やパーソナリティの点から、「この方は監査役っぽい。こちらの方は執行側の方がむいてそう」という違いがある点です。
うーん、書きながら、採用する会社側からの弁護士資格を持った監査役候補者の見るべきポイントもまとめたくなってきました!

監査素人が監査について学ぶ方法

なんだかくどくど書きましたが、個人的には常勤監査役になったことは後悔しておらず、ビジネスを色々な立場(インハウス、外部の法務部的立ち位置、通常の顧問弁護士、そして常勤・非常勤監査役)から関われていることはとても楽しいです。
 一方で、「監査役って何?」というのを早くキャッチアップするのはやはり大変でした。監査役になりたての自分に何かアドバイスするなら、以下を勧めたいです。

①日本監査役協会

 まず入って、会に積極的に出ましょう。私は1年後くらいから出席を始めましたが、遅かったなと思います。そしてオンラインよりも対面で参加した方が、貴重な話を聞けます。
 また、有名ですが、「新任監査役ガイド」は一読すべきでしょう。また、各種の雛形は協会のもの絶対に使うと言えます。雛形を探す際はまず協会から探します。

②いろいろな本

 会社によって、監査スタイルは全然異なるので、「自分の会社で何を監査すべきか」がそのまま載っている本はありません。しかし、やはりまとまった本は知識習得にも役立ちますし、孤独で社内に相談相手があまりいない監査役の助けにもなります。
 以下の本は、他の監査役からも良いと聞きました。 

最近出た本では、こんなものも。

「監査役のヒーローはいらないんですよ」

「はじめに」より

か、かっこいい。。

③CIA

 公認会計士の勉強をするというのも、1つ。USCPAもかっこいい。でも、そこまでできない人にはCIAがお手軽では、と思います。
 「捜査機関?」と思った方、私もそう思いましたが、世の中にはCIAと略す言葉はたくさんあるのですよね。今回は公認内部監査人、という資格です。
 アメリカの内部監査の手法を学ぶものですが、なかなかまとまっていて、私にとっては非常に勉強になっています。 
 「監査とは何か?」をある程度体系的に講義形式で学ぶには良いのかなと。
 CIAの勉強を始めてから、他にも内部監査士等の資格があることを知りましたが、ひとまずはCIAの勉強を通じて、監査についての知識を深めたいと思っています。
 参照:「内部監査に資格は必要?CIAとその他7つの資格の特徴を紹介

以上、後半大分脱線しましたが、監査役就任後1年経って考えたことでした。どなたかのお役に立てれば幸いです。

まだまだ続く#裏legalAC 。明日は、@hiro_oceanさんです。皆様お楽しみに!

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