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散文「受賞の言葉――交流と孤独」

 このたびは『しなる川岸に沿って』に対して福田正夫賞という栄えある賞をいただき、誠にありがとうございました。選考に携わった委員の皆様に深く御礼申し上げます。
 福田正夫は詩「世界の魂」にて〈泣け、/いまひとりだ。/しかしいまこそ自分の胸は世界の魂を抱く。〉と語った。受賞に際し、この詩を読み直して他者と自己との「関係」について考えた。『しなる川岸に沿って』は多くの人との交流と経験によって書かれた他者との「関係」の詩集だ。また詩は読者のものであるから詩集と読者は作者を遠く離れて独立した「関係」性を生み出してくれる。しかし忘れてはならないのは詩には内包された孤独な自己がいることだろう。話者ではなく読者でも今の私でもない、詩を書く瞬間に孤独な心を抱えながら世界へ向かって小さくペンを振るっていた姿を忘れることはできない。
 孤独に対峙しながら、日々人々との交流に詩心を奮わせる――そんな矛盾の中でこれからも詩作に励んでいきたい。

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