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Deep Local

19:00。もう、だいぶ暗い。片側2車線の国道沿い。対向車のハイビーム。鬱陶しい。通りすがり、眉間にシワを寄せ、気付かれない程度、睨む。

田舎道を車で走る。左側にセリアが出て来た。住宅地に続く細い路地を挟み、ツルハドラック。次は木、そして少し空き地を挟み林、ココス、マック、小さいコメリ、軽く畑、またツルハドラック、森。「田舎だなぁ」珍しい物が何もない。「まじか、このユニクロ、駐車場がある」これは少し珍しい。

長く、味気のない道。国道沿いに、個人経営の店は無く、全国チェーン店の、目立つためだけに作られた赤、青、黄色、目がチカチカするような発色の看板が立ち並ぶ。虫が集っている。

田舎にしかない自然、開いた空は消え、自然の色が薄れて来ている気がする。それが少し悲しい。




家電量販店に行きたい。Apple Pencilのペン先が潰れてしまった。Googleマップで検索。「まぁ、だよね。ヨドバシは無いよな」知っていた。この近くにあるのは、ケーズデンキ。でも、19:30閉店。ダメだ間に合わないな。じゃあ、ヤマダ電機は?20:00閉店。ギリ行ける。

ヤマダ電機が、街の中心であるかのように聳えてる。1Fは駐車場、店舗は2F。エスカレーターで上がる。全面、鏡貼り。なぜか少し、前髪を整える。もちろんAppleコーナーは無い。あって携帯コーナーのiPhone。まぁそんなもんか。田舎だし。


いつの間にか、田舎を舐めている。

かつては田舎に生きていた。他の世界を想像することもできなく、「東京なんて」と、僻みも込みで言っていた。

一週間遅れで放送される人気バラエティ。「東京は12chまで全部あるらしい」それを、有り過ぎてキモいくらいには思ってたはずなのに、気づけば東京に染まってる。

それは、舐めざるを得ないのかもしれないし、もしくは、舐めさせられているのかもしれないし。田舎に対して悪意はなく、舐めようと思って舐めているわけではないが、舐めてしまっているので、自分でも驚く。



木の立て札に、筆で書かれた公民館の文字。掲示板に貼られた更新する気も無い、気があっても費用がなく、色褪せれるだけ色褪せたポスター。

街の行列店の数は限られていて、片手に収まるくらいの情報量。スタバが出来たがニュースになる。携帯はauしか電波が入らない。何だそれ。

小さな自治体のホームページ、デザイン力ゼロ。街から産まれたデザイン力がある人間は自治体に務めない。小さな自治体がデザイン力に力を入れるわけがない。

日本の原風景みたいな風情は無い。田舎ってあんなにいい物じゃ無い。リアルはこの感じ。これって日本の田舎にしか感じない。アメリカの田舎は、イメージ田舎感はない。片田舎の洋館で、孤独にデジタルアートをやっているイメージ。



しかし、誰も歩いてない。給油しよう。19:50。ガソリンスタンド、20:00閉店なのに、もう閉まってる。5km先、21:00閉店のエネオス。そこにしよう。

押し寄せる過疎で人手不足。セルフ給油。給油しようと、車を降りる。「いらっしゃいませ」録音された女性の声。ちょっとビビる。でも、エネオスで、まだタッチパネルじゃない。それにもビビる。多分、電気信号を知らない。

飯食おう。すき家くらいしかない。意外にも外国人店員しかいない。彼らは、どうしてこの地を選んだんだ?気になる。

さて、ホテル行くか。ビジネスホテル。椅子に座る。リモコンを探す。机の引き出しを開ける。宗教のパンフレットを見る。リモコンを取り出す。テレビをつける。ローカル番組をみる。ローカルタレント、地方の通販番組で張り切ってる。やっぱり面白い。つい目が止まってしまう。

田舎生まれだからこそ知ってる何もない半端な田舎。やっぱり舐めてしまっている。


お茶でも買いに行こう。少し離れたローソン。割れた看板に虫の死骸。腰の曲がった、ばあちゃん店員。心配になる。そのばあちゃんに「これいけますか」と念の為、バーコードを見せる。「はい、PayPayね」とスムーズに読み取られる。

まじか、現金以外、行けるんだ。クレジットカード、タッチも行けるんだ。

やっぱり舐めている。



#創作大賞2024
#エッセイ部門

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