2023年12月に観た映画の感想
あらすじ程度のネタバレがあります。特にオススメの映画にはタイトルのうしろに🌟つけてます。みた順で書いています。
以下のマガジンに他の月のぶんもあります。
古賀豪『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
映画館でみました。
『墓場鬼太郎』とテレビアニメシリーズ『ゲゲゲの鬼太郎』第6期を履修していくとよいと噂の本作ですが、まったくなにもみずに行きました。嘘です、ゲ謎に狂ったオタクのほのぼの育児二次創作がTLにたくさん流れてきていたのでそれはみていましたが、見事に集団幻覚でしたね。集団幻覚をみないとやってらんねえような辛いお話だったので、それにも妙に納得してしまいました。
というわけで、引用した画像左の鬼太郎の父(ゲゲ郎)と画像右の水木がバディとなり、龍賀一族の深すぎる業にツケを払わせる映画です。
この龍賀一族は一見するとステレオタイプな権力者一族なのですが、細かい設定やストーリーに目を向けるとかなり今っぽいお話になっており、そこが本作の魅力といえると思います。
残念ながらストーリー自体はあまり刺さらなかったのですが、人の死に方がカッコイイのと大変よい喫煙シーンがあり、それだけでも満足して帰ってきました。あと水木役の木内さんが本当によかったです。ありがとうございます。
とても見応えのあるアクションシーンがあるので、劇場でやってるうちに一度はみにいってみてください。
狩山俊輔『メタモルフォーゼの縁側』
アマプラでみました。
BLマンガを通して高校生の女の子とおばあさんが超仲良くなるほのぼのオタク交流映画。嫌なヤツが一人も出てこなくてすごい。とくに画像右の男の子、この世に存在して良いのか?というぐらい良いヤツすぎて「す、すごい…」という感想しか口をついて出ませんせした。すごい。
わたしはジャンル問わずにマンガを読みますが、そういう人ばっかりのコミュニティにずっといたせいで「人と違うものが好きな肩身の狭さ」「それを感じている自分自身もかなりオタクというものへの偏見にまみれている」という板挟みのような状態がどんなものだったのかずっと忘れていました。この映画をみていろんなことを思い出しました。
そういう古傷もえぐられつつ、後半バクマン。みたいになるアツさも兼ね備えている良作でした。縁側でマンガ描くシーン激アツだった。
芦田愛菜さんのオタク仕草がリアルすぎてすごかったのと、やっぱ宮本信子さんとても素敵でした。あと光石研さん。おだやかな気持ちになりたいときにおすすめです。
タイカ・ワイティティ『ジョジョ・ラビット』🌟
アマプラで字幕版をみました。タイカ・ワイティティ作品は高校生のころに観た『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』以来でした。
ちょっと良作すぎてすごかった~~~~~ありがとうございます…
舞台はWW2時代のドイツ。イマジナリーアドルフ(画像左の飛んでる成人男性)というよき友がいつも横にいるほどめちゃくちゃナチズムに傾倒している気弱な少年・ジョジョ(画像右の飛んでる男の子)が、自分の家の隠し部屋にかくまわれていたユダヤ人の女の子と交流していくという作品です。
日常のささいな幸せの描写で笑顔になりつつ、油断していると急に顔面を掴まれて戦争のほうに向けさせられるような緩急のある映画でした。でもどっちの方向性でもやりすぎていなくてすごくみやすい。基本的にユーモラスですが、たまに笑って良いのかどうか悩むユーモアが挟まるのもよかった。
主演ふたりはもちろん、イマジナリーアドルフ役のワイティティ監督やジョジョの母親役だったスカーレット・ヨハンソンがすごく素敵でした。お母さんが家の中でダンスするシーンがお気に入りです。彼女が息子であるジョジョに対してしたことは、そのままこの映画が鑑賞者たるわれわれに対してしたことだな~と思いました。
もしまだみたことなかったらぜひ観てください。マジでもったいないです。
ポン・ジュノ『グエムル-漢江の怪物-』🌟
アマプラで字幕版をみました。大好き。最高。脳が大喜び。ポン・ジュノ作品はこれで2作目でした。
化学汚染によって生み出されたモンスターが漢江を拠点として次々と人を襲うというモンスターパニック映画。ソン・ガンホ演じる主人公の娘(引用した画像にうつっている女の子)が怪物に攫われてしまったため、主人公のきょうだいと父親の家族4人で協力し、娘をどうにかして取り返そう!というお話です。
油断も隙もない映画で、2時間くらいあるのですがマジでずっと映像がかっこいい。全く予想してなかった。ほんとによかった。
お気に入りのシーンは多々あるというかずっと良いのですが、特に中盤あたりの食事シーン(小屋の中で家族で黙々とご飯を貪り食うシーン)が映画における食事シーンとしてもかなり脳天ぶち抜きシーンでめちゃくちゃ好きでした。み終わったあとそのことばっか考えてる。そして良喫煙シーン(タバコの火を消すよいカット)アリ。
ソン・ガンホ演じる今作の主人公は結構抜けてるところがあるのですが、実際問題、「普通の人」がハリウッド映画みたいに上手くやれるのはそれが映画だからなんだよなというのをまざまざと見せつけてくれました。もどかしいし悔しい。でもそういう意味ではラストの畳み掛けはとっても映画だった。そこもよかった。めちゃくちゃオススメ。グロくないし、マジでみてほしい。ポン・ジュノ監督、ありがとう!!
パク・チャヌク『お嬢さん』🌟
アマプラで字幕版をみました。パク・チャヌク監督作品ははじめてでした。遅効性の鈍器映画。よかった。
3部構成になっている作品で、それぞれジャンルというか雰囲気がガラッと変わります。その緩急がかなり憎い。またエロ(たまにグロ)が結構直接的に描写されるので、そういう意味でも刺激強めの映画です。どうしても苦手な人は避けたほうが無難ですが、そうじゃない人にはエログロで忌避して欲しくないです。
第1部はえっちすぎて監督の性癖が若干心配になりました(このエロを見せたいがためだけのこの話なのか??と思った)が、第2部の怒濤の展開で脳みそ焼けました。ミスリードや作品の提示する方向性に素直に従ってみると、ちゃんと作り手に振り回されることができるので楽しいです。お互い腹を探りつつ自分の目的を達成しようとピリピリしている人たちが好きなので、存分にそういうのが味わえて満足しました。そして最後のカタルシス気持ちいい。「私の人生を壊しに来た救世主」、みて数日経ってからじわじわ効いてきました。良い映画だった。
全編通して画面や美術が美麗で、演出も素敵でした(ボートのシーンと札束に埋もれて寝る詐欺師がお気に入り)。爆裂良喫煙シーンアリ。『ジョジョ・ラビット』みたいな異様な完成度の映画としてではなく、監督の癖がこれでもか!!と提示されているという意味ですごく刺さりました。オススメです。
ジョン・スー『返校 言葉が消えた日』🌟
Netflixで字幕版をみました。
同名のホラーゲームを映画化した、台湾の作品になります。
まず雰囲気がめちゃくちゃよかった。原作のゲームの質感そのままで、終始「うれし~~~」と思いながらみていました。
とくにすごく怖いというわけではないのですが(どちらかというと悲しいお話です)、独裁政権下独特の気持ち悪い監視体制の雰囲気がとても(ホラー的な意味で)素敵でした。主人公達の通う学校の雰囲気の不気味さがずっとよかったです。防空壕のシーンと、後半の人形劇のシーン、逆さづりで血まみれになるシーンがお気に入りです。かっこいいシーンも多かった。音楽も素敵でした。
原作のゲームファンのひと、台湾ホラーに興味あるけど急に『呪詛』とかみるのはちょっとハードル高いかも…という人におすすめです。
是枝裕和『ベイビー・ブローカー』
アマプラで字幕版をみました。是枝監督作品ははじめてでした。
赤ちゃんポストに入れられた子どもを売る「ベイビー・ブローカー」を裏家業にする2人(画像の成人男性ふたり)と、自分のうんだ赤ちゃんをポストの前に置きはしたものの、翌日思い直して我が子を連れ戻しに来た女性(画像中央の女性)。彼らは紆余曲折を経て、赤ちゃんを高額で買い取ってくれる夫婦を探すが…というお話です。
「親に棄てられた子どもは、生まれてこないほうがよかったのか」というみぞおちのあたりがずんと重くなるようなテーマで、ずっと歯ぎしりしながらみていました。
この映画は作中で描かれたような人々へ向けた救済のメッセージを含んでいたと思うので、本当にまったく救いのない映画というわけではありません。私個人としてはそこが好みではありませんでした。あとかなり描写が丁寧でしたね。結構言葉で説明していた気がします。そこもあんまり好きじゃなかった。しかし、ソン・ガンホでてると安心感が違いますね。他もみんな素敵な俳優さんばかりで、こういうことできるのかっこいいな~と思いました。
後半画像の5人で遊園地に行くくだりがあるのですが、赤ちゃん含む真ん中の3人の観覧車でのシーンがかなり脳天ぶち抜きでした。あれはほんとうによかった。あとラストのカットもすきでした。
余談ですが、ブローカー2人が「孤児だから兵役に行かなかった」「ちょうど塀の中にいたので兵役に行かなかった」と話すくだりがあり、兵役中の脱走兵を捕まえる若者を描くドラマ『D.P.』をみた直後だったこともありそのシーンもかなり印象的でした。いかんともしがたくて歯がゆい。
パク・チャヌク『別れる決心』🌟
アマプラで吹き替え版をみました。キメ〜〜〜〜!最高です!!パク・チャヌク監督作品は『お嬢さん』に続き2作目でした。
ある中国人の女性(画像手前)が夫が死んだ事件の事情聴取で刑事(画像奥)と出会い、2人は徐々に惹かれ合っていく…というサスペンス・ロマンス映画。沢城みゆきのファム・ファタール(?)の誘惑にあらがえず、吹き替え版でみました。よかった。
ファム・ファタールは出会った男の人生を破壊するらしいですが、この映画はファム・ファタールの方も破滅します。主人公の刑事が彼女を喪失したあとどう生きていくか謎ですが、あのラストはかなり最悪で最高でした。
複雑な演出も美麗な衣装・小道具も、とにかく目にうつるものが美しかったです。また同監督前作の『お嬢さん』からは考えられないほど直接的なエログロ描写が抑えられており、そのことで言い訳のきかないキモさが浮き彫りになっていたのが嬉しくて小躍りしました。おもろい。
『お嬢さん』もそうなんですが、追い詰められたりいろいろ振り切れて極限状態にある人間の醸し出す滑稽さみたいなもの描かれているところが好きです。どれだけ真剣な不倫(?!)でも、結婚という契約にまとわりつく規範を破っているという前提がある時点で強制的に滑稽になってしまう。お話にならないから。でも本人達はいたって真面目なんですよね。そこがさらにおかしみに拍車をかけている。
人生ベスト映画に選ぶようなタイプの作品ではないのですが、なんかいつでも手の届くところに置いておきたいと思わされるような映画でした。超オススメ。サンキューパク・チャヌク!
スティーヴン・スピルバーグ『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』🌟
アマプラで字幕版をみました。たしか2回目。前回みたのは高校生のときでした。この作品個人的に結構思い入れがあり、映画版のサントラだけでなくアーロン・トヴェイト主演のミュージカル版のサントラや原作小説(ほとんど事実らしいですが)も持ってます。サントラはマジですり切れるくらい聴いた。映画版もミュージカルも音楽素敵です。
レオナルド・ディカプリオ演じるフランク・アバグネイル・ジュニアは高校生のティーンですが、両親の離婚をきっかけに小切手詐欺に手を出します。その後はパイロット、医者、法律家と様々な職業に身分を詐称しながらアメリカじゅうを逃げ回ります。スタイリッシュな犯罪映画で、カッコイイ詐欺師のレオをトム・ハンクス演じる中年のFBI捜査官が追いかけ回す、というストーリーです。
主人公のフランクは本当に良い子なのですが、彼が良い子すぎるあまり両親のクソさが目につきます。前回みたときはフランクよりも年下だったのに、とっくに彼の年齢を追い越してしまったという変化もあるかも。人生のどこかのタイミングで、「母親」「父親」以外の、人格を持ったいち人間としての彼・彼女らに触れるときが来ると思うのですが、そのときのちょっとおぞましいものを垣間見てしまったあの腹の底が冷たくなる感じ、それでも自分は両親を愛しているのだと自覚したときの混乱、そういう葛藤がよく描かれていてとても好きです。
原作小説やミュージカル版では度々強調されていますが、フランクは父親の言った「制服」の大切さを詐欺にうまく活用するんですよね。彼の父への尊敬が犯罪の成功と、映画のスタイリッシュさへ貢献している。そこも好きです。
また、毎年クリスマスにフランクと捜査官が何度も邂逅するという構成も、人生が螺旋になっているように思えておしゃれです。そういう意味ではクリスマス映画ですね。オススメです。
アルフレッド・ヒッチコック『鳥』
アマプラで字幕版をみました。ヒッチコック作品ははじめてでした。
原因とかなんもわからんけど、すごい数のあらゆる鳥が人間を襲ってくる!!というお話です。自分が中学生くらいのとき、母親にホラー映画の話を振ったらヒッチコックが好きと言っていたことをとふと思い出したのでみました。
なぜ鳥が人間に波状攻撃を仕掛けてくるのか、それがいつ終わるのかとかマジで何ひとつ解明されないし、登場人物たちは不合理な行動をたくさんしますが、それが不快でとてもよかった。不快さのホラーなんですね。「鳥が襲ってくる」という手口は1回目の攻撃で割れるのに、量で圧倒されてやっぱり怖い。素敵です。
レストランでみんなパニックになって「どうすんねんこれ!?!」とひたすら言い合うシーンがお気に入りです(レストランでのシーンは全体的によかった。急にようしゃべりだす鳥に自信アリ婆さんとか)。関係性的には逆なんでしょうが、『ミスト』のスーパーでのシーンを彷彿とさせるあの感じでした。
ラストカットがとても美しかったのもよかったです。ほかのヒッチコック作品もみます。
八鍬新之介『窓ぎわのトットちゃん』🌟
映画館でみました。黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』を映画化した作品です。私は原作未読でした。
完成度高すぎ傑作アニメ映画です。「アニメ映画ってこうでなくちゃ!!!」を、『スパイダーバース』以後久々にみせてくれました。めちゃくちゃかっこよかった。
予告がそそられなさすぎて観にいく予定がなかったのですが、度々TLに「絶対に劇場でみるべき」というツイートが流れてくるため素直に観にいきました。たしかに本当に映画館でみたほうがいい。素直なオタクでよかったー。
トットちゃんのかわいらしさ、それを受け入れるトモエ学園の素晴らしさにニコニコしていたらいつの間にか戦争が日常に入り込んできていて、気づいたときには戦争が日常になっている。その畳みかけが激カッコイイ映像表現とともに提供されるため、頭抱えながらみてました。途中で3回ほど挿入される作画や演出がまったく違うシーンもすごくよかった。こういうことできるのかっこいい。
トットちゃんという子ども(小学生)の目にうつるいわゆる子どもの世界を描いていますが、数少ない大人がとても印象的に描写されています。大人が涙するシーンがとても秀逸です。誰も安易なニヒリズムに陥らなくて、そういう意味で誠実な人ばかりが登場して素敵でした。とくにトットちゃんの通う小学校・トモエ学園の校長先生が教育者としてキマっていてすさまじかった。校長役の役所広司さんのお芝居マジでやばいです。役所広司さんのために観にいってもいいくらい。
とにかく言葉で説明するわけでもなく、映像で「最悪」を描ききっていて本当にすさまじかった。声優さんもみんなうまい。完成度の高いアニメ作品を求めるオタクこそ観にいってください。WW2の日本の民間人を描いた映画としてもかなり良作ですので、そういうのを見たい人も…まあ対象を絞る必要ないですね。お近くの劇場でまだ上映中でしたら、次回の候補に入れてください。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』
アマプラで吹き替え版をみました。
その星を支配する者は全宇宙を支配するといわれる「砂の惑星」に出向くこととなった、なんか高貴っぽい未来がみえる能力持ちの男(ティモシー・シャラメ)が、宇宙支配をめぐって闘いを繰り広げる話です。詳しくは公式HPとかウィキペディアとかみてください。
とにかく映像がかっこよくて、「SFってこうだよね!!!」の喜びを存分を味わえました。カロリー高めです。シャラメに関してはいろいろ複雑な思いがありますが、それにしたって顔が絵画すぎる。あと音楽も超よかった。
説明は多いしタームも多いのでかなりついていくのが大変でしたが、なんとか『ハリー・ポッター』に重ねながらついていってました。ありがとうローリング。
映画館でみればよかった。2も楽しみです(茶色一辺倒にならないか心配ですが)。
ドラマ🌟
この月は良作Netflixオリジナルドラマシリーズ『D.P.』もみました。そのうち感想記事出します。
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