沖縄の子どもを取り巻く貧困の現状
私たちエンカレッジは、沖縄の経済的困難を抱える子どもたちに12年間関わってきました。
なぜ、沖縄の子どもたちの貧困率が高いのか、広報部で改めてまとめてみました。
入社の半年後に事業所が倍に
こんにちは、広報担当のシロです。
2015年の秋からエンカレッジに関わっています。ちょうど、「子どもの貧困」というワードがニュース等でも見かけるようになった時期だと記憶しています。
入職当初、エンカレッジの運営する学習支援教室は5市町に5教室、職員は代表含め10人足らずでした。
その翌年、11市町村で15の教室を運営するように。教室数は3倍、併せて職員も増員し、急速に規模が大きくなりました。
そこから毎年、沖縄県や各市町村からの委託を受け、現在は14の市町村で、25箇所、教室を運営しています。
事業の拡大は喜ばしいことです。子どもたちがエンカレッジで学習や様々な体験を通して成長する姿に胸が熱くなります。
しかし、窮地に立たされている沖縄の子どもたちがあまりにも多い現実。まだまだテコ入れは始まったばかりだ、と、思う日も少なくありません。
子どもの貧困の定義とは
子どもの貧困とは、どういうことを指すのでしょうか。
まず、貧困の定義は大きく2つ。「絶対的貧困」と「相対的貧困」です。
絶対的貧困とは、毎日の衣食住もままならない状態。
相対的貧困とは、住んでいる国の文化や生活水準を満たさない状態で、「子どもの貧困」とは、これに該当する18歳未満の子どもやその生活のことを指します。
相対的貧困となる基準は何か?
まず各世帯の等価可処分所得(ざっくり言うと手取りでもらえる金額)を、世帯人数の平方根で割ります。そして出た値を、世代別で順番に並べて真ん中、つまり中央値を推定し、その中央値の半分に満たない状態が相対的貧困です。
例えば、4人家族で世帯の等価可処分所得が400万円とします。
400万÷√4=200万、つまり、この世帯の家族一人一人は年間200万で生活している、となります。
この200万を中央値とすると、同じように計算した時、100万未満となると相対的貧困になります。
日本は子どもの7人に1人が貧困、そして沖縄では・・
日本では、子どものおよそ7人に1人が貧困状態にあるという調査結果が出ています。
そしてこの貧困状態を放置すると、経済や国民へ甚大な影響を及ぼすことになることが、日本財団の調査結果から明らかになっています。
沖縄だけで考えるとどうなのか。
次でも述べますが、沖縄は様々なワースト1を抱えています。県民所得、非正規雇用の割合、失業率、離婚率、ひとり親世帯率、進学率、等々。
これらを見ると、全国的にも貧困率が高くなりそうなのは明らかです。
全国では7人に1人が貧困と言われているが、沖縄はもっと多いかもしれない。施策を全国と横並びにしては、とても間に合わないかもしれない。
県は沖縄県子ども総合研究所へ実態調査を依頼し、沖縄の子どもの貧困について、独自の実態調査を実施しました。
29.9%の子どもが貧困状態にある、という結果に。
実に3人に1人、全国の2倍となるショッキングな数値に、胸が苦しくなったのを覚えています。
数字で見る沖縄の貧困
なぜ、全国の2倍もの数値が出ているのか。
沖縄の貧困問題は、先の大戦の爪痕も大きく、なぜこうなったのかをここで言及することは正直できません。
しかしどれほど全国と比べて厳しい状況下にあるのか、近年の調査から見える数値を集めてみました。
全国と比べ、一人当たりの県民所得が少ない。
非正規雇用で仕事をしている人が多く、若年層の無業者率も高い。
離婚率やひとり親世帯率、そして10代の出産割合も高い。
生活保護を受けている世帯や、就学援助を受けている世帯が全国と比べて多い理由に、すべて起因する事実であると思います。
「行けない」 「できない」 ・・・あきらめるきっかけが日常に
貧困にあるとされている子たちは、一般の子たちと比べて、経済的理由から様々な体験や機会の場が少なく、そしてそれは時として、自己否定につながったり、社会との関係性を脆弱にする原因となります。
お家に車がない。友達から聞く、家族でドライブへ行った話が羨ましい。
遊びに行きたいけれど、妹弟の世話をしないといけない。
ユニフォームや遠征費が高くて、好きだったサッカーを辞めてしまった。
学校の宿題や勉強を集中してやりたいけど、家ではできない。
だから塾に行きたいけど、なかなか言い出せない。
体験は行ってみたけど、とてもこんな金額払えない。
エンカレッジ代表の坂は、学習塾を経営する中、授業料を捻出できずに入塾を諦める子どもや保護者を何人も見てきました。エンカレッジ代表の坂は、学習塾を経営する中、授業料を捻出できずに入塾を諦める子どもや保護者を何人も見てきました。
そこに危機感を感じ、エンカレッジ設立に至っています。
負の連鎖を断ち切るために
沖縄の社会・経済的な課題が、教育機会の均等化を図れず、高校進学率や進路未決定率に影響を与えている。そしてまたその教育的課題が、社会・経済的課題に繋がり、「負の連鎖」が続いている。
そしてその連鎖を断ち切るため、教育に力を入れるべきだと考えた代表の元、エンカレッジは13年間、学習支援に勤しんでいます。
活動を続ける中、今必要と感じているのは教育や福祉だけでない、社会との繋がり。
その繋がりは、子どもたちの成長と、また、自立までの道筋を作るサポートの基盤となると考えています。
例えば社会で活躍する大人を見て憧れる、大人が本気で何かに取り組む姿勢を見て自分も本気になる。
やってみたいやこうなりたい、といった願望に繋がり、彼らの成長の糧になっていきます。
また、エンカレッジに通う子の大半が、中学卒業と同時に手を離れていきます。しかしながらその後、新たな問題に直面し、妊娠や非行等止むを得ず中途退学を選択したケースも少なくありません。
けれども、教育、福祉、社会で子どもたちをサポートする基盤が整えば、中学卒業まで、という一過性の支援ではなく、社会へ出るまで継ぎ目のない支援を実現することができると考えています。
子どもたちが諦めることなく、夢や希望を持ち続けられる社会を実現するために、皆様のお力が必要です。
日々、子どもたちが安心しておしゃべりしたり、勉強に勤しむ姿、成長が見れるのはもちろん幸せ。
けれども、今支援している子どもたちの「子ども」が、エンカレッジに来ることがないような社会にしていかねばならない。
彼らの未来が明るいものであるように、そしてその基盤を、私たち大人が作っていけるように、一緒に考えて頂けたら幸いです。