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エンカレッジの子どもたち−2

こんにちは、広報担当のシロです。
今月から始まったエンカレッジnote、いつもご覧頂きありがとうございます。
様々な子どもが通うエンカレッジ。学習以前の課題を抱えている子も少なくありません。
まずは寄り添って、彼らが安心できるように、話を聞きます。話をしてくれるまで待つと言ってもいいかもしれない。
今回は、エンカレッジに携わってから、子どもたちへ傾聴の姿勢を忘れず、たくさんの子どもたちを高校進学まで導いてきた阿嘉先生から、これまで関わってきた子どもたちについて伺いました。


ニュースで見てすぐ行動へ

一番ヤンチャな時期であるであろう、中学生に関わっていきたいと考え、中学校で臨時教員をしていました。
そこで目の当たりにしたのは、関わっても救えない子がいる現実でした。学校は、子どもたち一人ひとりに対してどこまでもできるわけではない。救える環境について考えていました。
エンカレッジの活動をニュースで知った時、こうした学校からこぼれ落ちる子たちを中心に見ることができるかもしれないと思いました。


1,500kmの軌跡

保護者や兄弟、親族に進学経験がなく、自分自身が高校へいくことにイメージができない、自信が持てない子がいます。
だから、背中を押してくれる第三者は必要なんだと感じます。

入職した年の4月、エンカレッジは沖縄県より委託を受け、嘉手納に新しく教室を開くことに。教室長として、立ち上げから関わりました。
当時嘉手納教室は、中部県域の生活保護世帯を対象として開校しました。そのため嘉手納町だけでなく、近隣の北谷町、読谷村からも生徒を受け入れていました。

生活保護世帯は、車を持つことができません。保護者の送り迎えはもちろん望めない。生徒たちは、徒歩、自転車、バスなどで通ってきていました。

入塾してからほとんど毎日、自宅のある北谷町から嘉手納町まで、自転車で通ってきた女子生徒がいました。
これまで部活をずっと頑張ってきた彼女。引退後、エンカレッジへとつながりました。入塾当初の成績は、下から数えた方が早かった。
彼女は何度も、自分が高校に行けるのか聞いてきました。
詳しく聞くと、親兄弟や親族はほとんど中卒で、身近に高校へ進学した人がいない。実例がないので、イメージができない、自信が持てない。
話を聞き、何度も励ましました。
彼女が入塾開始してから、中学3年生の授業日は全部で151日。彼女はそのうち141日、出席しました。
住んでいた北谷から嘉手納まで、往復11kmの道のりを、141日。
約1,500kmかけて彼女は、高校合格を掴み取りました。


自分が変われたのはエンカレッジのおかげ

病気などで、子どもたちの背中を押せない保護者もいます。けれども、保護者や子ども本人、どうにかしたい気持ちがあるから、エンカレッジへやってきます。

福祉事務所からの紹介で、中学3年生の時にエンカレッジへつながったS君。彼は母親と妹2人と4人暮らしでした。
母親はうつ病を患っており、体調も良くなく、昼過ぎまで起きてこない。
子どもたちはもう何年も、母親の作った朝ごはんを食べていない状況でした。

S君は毎朝、妹たちに朝ごはんを食べさせて学校へ向かいます。自分の準備だけでなく、妹たちの世話もしながらなので、S君自身は遅刻や欠課が多かった。
彼は母親の体調のことを理解してて、冷静な対応を心がけているようでした。しかし、母親の機嫌が悪い時には口論になったり、八つ当たりを受けることも。
家庭内の雰囲気は良くなく、いたたまれない気持ちになった時には家出をすることも度々だったそうです。

喫煙や素行不良等で、学校ではいわゆる問題児。学力や学習習慣も身に付いていませんでした。入塾当初はまず、挨拶や時間を守る、通塾習慣をつける、などの基本的な生活態度の改善から。
地域清掃や音楽レッスン、老人ホームへのボランティアなど、様々な社会体験も経験させました。彼にとっての負荷をかけ、それを何度も乗り越えさせることで、成功体験と可能性の幅を広げました。

学校や家庭のこと、不安や不満、どんな話も、聞くに徹しました。信頼関係を構築するためです。
エンカレッジを通じて、学習・生活面共に着実に改善していきました。高校入試直前の模擬試験、国語の点数は60点中54点を取れるように。
無事第一志望に合格し、高校3年間の内申は4.9。テストも80点を下ることなく、充実した高校生活を送った様子でした。
高校卒業後は美容関係の仕事へ。現在も続いているかは定かではありませんが、「自分が変われたのはエンカレッジのおかげだ」と話てくれたこと、誇りに思っています。


家出の先に

エンカレッジで心を開いてくれても、子どもたちのハンディの全てを取り除くまでには時間がかかります。
救えなかった、ではなく、どうしたら、どういったサポート体制があったら良かったのか。それを切に考えなければいけないケースも。

ある年の夏に入塾してきたO君。耳に20個のピアス、小学生からの喫煙習慣、いくつもの入れ墨。学習どころではありませんでした。
両親の離婚後、父方の親族に引き取られた彼。母親へは恨みを抱えており、また、O君を引き取った親族は父親と仲が悪く、絶縁状態。
口からは不満や恨みが絶えず、後ろ指を刺されることばかりしている。
しかし不憫に思った一方、少しずつ心を開いているようにも感じました。自分の将来の夢について話したり、「誰にも言わないで」と秘密を打ち明けてくれたり。どんな話も、何時間でも聞きました。

エンカレッジに来るようになって4ヶ月が過ぎた頃には出席も安定し、学習にも取り組むようになりました。態度や身なり、授業への姿勢も良くなり、休み時間とのメリハリもつくように。
冬休みの講習からは、本格的な受験勉強に取り組ませようと考えていました。
しかし状況は一転。講習の始まる直前に、パッタリと来なくなりました。同居している親族からは、「塾はやめます、Oはもう家にはいません」と、連絡がありました。

年が明けて一月経った頃、来なくなった理由を話すために顔を見せてくれました。
親族と喧嘩し、荷物を外に出され鍵を閉められたため、そのまま家出したこと。家出している間は先輩の紹介でキャバクラで働き、夜はラブホテルで寝泊りしていたと教えてくれました。
もう一度、受験勉強を頑張ろうと話しましたが、すっかりやる気を無くしていました。そこから彼が出席することなく、エンカレッジでの支援も終了。

本当はもう一度頑張りたかったのではないのだろうか。辞めるつもりなら、わざわざ報告に来ないと感じます。
もっと話を聞きたかったし、伝えたいこともまだまだあっただけに、今でも悔やまれます。


おわりにーエンカレッジへ来るからこそ

色々なバックグラウンドを背負った子どもたちがやってくるエンカレッジ。彼らが自立した社会人になるために、エンカレッジでは生活面の支援、キャリア教育にも力を入れています。それが私たちの強みでもあります。

次回は、再び阿嘉先生から、教室で実践してきた取り組みを伺いたいと思います。


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