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エンカレッジの子どもたち -5

こんにちは、エンカレッジ広報部のシロです。
今回は、先週土曜に掲載した「エンカレッジの子どもたち−4」の続編として、これまでの那覇市での取り組みを引き続き照屋先生より伺います。
前回の記事は下記よりご覧いただけます。


17の中学から1つの教室へ

開校の翌年度から、生活保護世帯の中学1・2年生を、さらに翌年は、準要保護世帯の中学生のサポートも開始しました。
90名の定員はすぐ埋まる状態。進級まで入塾を待ってもらう子も少なくありませんでした。

登録の半数から7割近くは、受験を控えた3年生。志望校や学力レベルはバラバラです。
それぞれの学力を把握し、志望校合格へのルートを計画する時間は一般の塾よりかかっていると思います。

那覇市内2教室目である首里教室が開校するまでの5年間は、1教室で17の中学校から生徒を受け入れていたので、定期テスト対策も工夫が必要でした。
学校によってテスト日程が違い、例えば1学期の中間テストを5月後半に実施する学校もあれば、6月後半のところもある。範囲も変わってくるので、それぞれの学校に合わせた対策プリントを作っていました。


学習以外の関わりを通して

教室で日々生徒と関わる中で、自己肯定感が低い傾向にあったり、発達障害等、学習以前の課題を抱えている子の多さとその現状を徐々に知るようになりました。

学力向上のための学習指導や教育環境の提供だけでなく、常にアンテナを張り、生徒たちの小さな変化にも気づけるように意識しました。
そしてそれぞれの特性や性格、好き嫌い、得意不得意も理解し、生徒たちの自己肯定感が上がるような関わり方に力を入れました。

生徒たちが学習に身が入らない時は、教室の掃除や掲示物の作成など、学習以外の作業を一緒に行いました。一緒に手を動かしながら話すことで、徐々に心を開いてくれるように。
また、教室にいていいんだ、という安心感、学習に身が入らない時も何かをやり遂げる達成感を感じてもらうために、教室内での役割として作業をお願いすることもありました。

掲示物に靴箱や本棚、生徒と一緒に作ったもので溢れています。


ノックから挨拶に

現在は、法人として「自立プログラム」という段階を明確にした指標がありますが、まだ明確でなかった時、生活習慣の改善についても必要性を感じ、様々な「訓」を教室に掲示していました。

挨拶をしない子が多く気になっていた時期がありました。こちらから挨拶しても反応がなかったりなど。
まずは私たちが明るく出迎えること、生徒たちがせっかく来てくれるのだから、何よりも最初の挨拶を徹底してほしいと講師(アルバイトの大学生や社会人)へも話していました。
しかし、学習指導中は生徒が入ってきても気がつかないことも多く、生徒たちにとってみたら誰に向かって挨拶をしたら良いかわからないのではないか、と思いました。

そこで、ノックを習慣化することに。生徒たちのノックで、私たちは来たことに気づく。そこで挨拶を徹底できる。
また、生徒たちにも、笑顔で挨拶してもらえるという安心感が生まれるのではないかと思いました。そうすると、自然と彼らも挨拶を返すようになり、そして自ら挨拶をするようになりました。
挨拶してね、ではなく、ノックしてね、と伝えるようにしました。ノックなしで入室した場合はやり直し。
ノックはもちろん、徐々に挨拶も定着するようになりました。


自主性を育てるために

生徒の自主性を育てることも意識しました。
大人から言われるより、自主的に目標を決めてほしい。やりたいことを形にするために、自ら動けるようになってほしい。

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これは、以前生徒たちが作成した教室目標です。
一番目立つところに張り出していました。
フォローはしつつ、生徒たち自身で話し合って内容を決めてもらいました。
自分たちで決めた、ということが、大事だと思っています。
それに目標があると私たち大人も褒めやすい。生徒たちもできている実感を得やすくなり、それが自己肯定感を高めることに繋がると思います。


「やりたい」を形に

また、教室でのイベントも多数実施しました。
思い出づくりや交流はもちろん、イベントによっては、生徒たちが成功体験を積み、自信をつけることのできる機会になるなど、沢山の成果に繋がるのではと思っています。

基本的にイベントは、生徒の「やりたい!」を形にします。
なので毎回生徒リーダーを立て、その子を中心に企画・準備をするようにし、スタッフはフォローへ回ります。
私はリーダーとなった子へ、イベント準備をする上での問題点を指摘する係。「ただやりたいって言っただけなのに、めんどくさい」とヘソを曲げる子もいました。

実施した中でも特に生徒の達成感が見られたのは、2015年の秋休みに実施した合宿ですね。
もちろん、これも生徒からの希望です。実行委員を立ち上げ、日程や場所の選定、予算、合宿のスケジュール企画など、日々の学習の合間を縫って準備を進めました。

宿泊、という、他人と1日以上過ごす機会は、協調性やマナーをより意識する必要がありますし、ルールを守らなければいけない場面がたくさんあります。それに気づくことも学びだと思います。
また、長時間一緒に過ごすことで、生徒同士や講師との信頼関係をより深めるきっかけになったと思います。

当時参加した中1・2年生にとっても良い刺激となった様子で、翌年からは合宿イベントが定例化するようになりました。


2つの成果

那覇市では、2016年に首里教室、2018年に真和志教室が開校し、現在は年間250名の中学生をサポートしています。
3教室でエリアを分担することで、学校や地域と連携が取れやすくなったり、また、生徒や保護者にとっても通塾する上での負担が軽減し、より必要な生徒が継続して利用できる体制が整ってきていると感じます。
こうして事業が拡大したことは、社会から、エンカレッジの活動が貧困の連鎖の解消に繋がると評価頂いたからだと思います。

また、講師として戻ってくる生徒もいます。現在、高校卒業以上は、どの年も必ず一人は講師としてエンカレッジに関わっています。
次は自分が寄り添って、後輩たちをサポートしたい、と面接にきます。負の連鎖からの脱却の一歩、とても大きな成果だと思います。

将来、社会課題を解決する仕事につきたい、誰かの助けになることがしたい、と考えている子も結構います。
エンカレッジでの学びが、こうした目標に繋がっているのではと思っています。


継ぎ目なくサポートできるように

昨年に第一子を出産し、現在は育児休暇を頂いています。
母子手帳を受け取りに病院へ行った時、かつての教え子が子どもの1歳半検診にきていました。
高校進学後、妊娠したと担当支援員から話を聞いていましたが、もうこんなに経つんだなと思いました。

生徒たちが若年出産、そしてその支援の対象となる。シングルマザーで頑張っている子もいます。
エンカレッジがなかったら、そういう子はもしかしたらもっと増えていたかもしれない。そうした現実と隣り合わせの子が多いことは事実です。

2017年からスタートした高校生のフォローアップ事業は、高校進学後に非行や妊娠などで中途退学を選ぶ子が少なくない事実から、一過性でなく、社会へ出るまでの継ぎ目のないサポートの必要性を感じて事業化を進めました。
担当スタッフからは、やはり高校進学後も居場所や寄り添いを必要としている生徒が多いこと、そしてまだまだ手が足りてないことを聞きます。
小中学生、そして自立を目前とした高校生世代へ、何があっても一緒に考え、社会へ出るまでのサポートができる環境をもっともっと作っていきたい、と思います。



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