溢れる情報の活用法。そして本質にたどりつく方法
紹介サービス、提携サービスで得られる情報の傾向を、登録される側の事例から詳細解説。沼にはまらず本質を見抜く方法を最後に述べるよ~^^v
昨今の街頭無料相談では、皆さんほんとうによく勉強していらっしゃり、あふれる終活情報に翻弄され、情報過多で疲れてしまっている人も見かける。
少し前の日経新聞にも、民間・行政それぞれの終活サービスが多数紹介されていた。
※参照したのは有料記事だけれど、サムネに一部出ているから、伝わるとは思う。
「情報提供サービス」は、概要を大づかみするために使おう
記事で紹介されていたサービスのうち、東京電力エナジーパートナーの「さいごまで安心サービス」は、社会保険労務士との提携により、死亡後に必要な社会保険関係の手続き(国民健康保険資格喪失届、介護保険の資格喪失届、年金を受給していた場合の停止手続きなど)を代行するもの。また、専任のファイナンシャルプランナーに老後資金や相続対策について相談できるサービスも付帯している。
縁者がまったくない人で、あとの始末をしてくれるのが血縁でない場合は、世話をしてくれる人への負担を減らすことができるので、利用価値は高いだろう。
マネーフォワードの「お金のバトンβ」は、ウェブサイトに自分の年齢や配偶者・子どもの有無、現預金や家屋など財産の金額を入力すれば、相続税の試算結果を表示するもの。「やることリスト」も充実しており、終活を志してから、あるいはいざ親が亡くなったときに、何をしなければならないのかがずらっと羅列されている。希望者には税理士、行政書士など相続に関する専門家も紹介する。
鎌倉新書は「いいお墓」「いい葬儀」のウェブサイトを運営している。情報量としては、業界最大手。ゆうちょ銀行とも提携して士業などを登録させ、「終活なんでもご相談ください」と、0120の電話番号が記載されたリーフレットが全国の郵便局で数年前から配布されていた(うちの近所の郵便局では最近みかけないので聞いてみたところ、「もう残部がありません」とのことなので、刷新はされていない模様)。
紹介サイトに登録されやすい情報とは?
これら民間企業の終活情報サービスは、いずれも公益的な観点ではなく収益を目的として企画運営されている。すなわち提携士業との成約による手数料や広告収入、掲載された墓地や葬儀社との成約時のマージンにより、運営されている。
葬祭業者や士業によほど懇意な友人でもいないかぎり、終活に関する情報を一個人がゼロから包括的に収集するのは難しい。
だから、これらの「なんでもお任せ」的なサービスの説明会に出たり、パンフレットを読んだりして、「何が必要なのか?」という大枠をつかむことは、とても有益と思う。
ただ、周囲の士業を見てみると、相続にほんとうに長けている士業は多忙であり、こうしたところへ登録してまで仕事をとろうとは、しない(私も、登録していません^^;)。
登録サイトに登録している士業者の過半数は、仕事が足りないが広告を打つ資力もないという状況であることが推測される。
また私は行政書士として墓地許可申請や永代供養墓の使用規定を作成することも多いので、新たに墓地を建立した顧問先には、鎌倉新書はじめ3社くらいの「登録サイト」もご案内しているが、二の足を踏むご住職が多い。
私の顧問先寺院は、日ごろから困窮者や心の悩みを抱える人々の相談に応じていらっしゃる僧侶も多く、大手石材店に丸投げではなく、ご住職自らが思いをこめてデザインしたオリジナルの永代供養墓ばかり。葬祭カウンセラーとして、お近くのおかたから相談をいただいたら〝ぜひともオススメしたい有料墓地ばかり〟である。それらの墓地の大半は、こうした紹介サイトには、載っていないのである。
その理由は、これら〝ほんとうにいいお墓〟の運営主たるご住職は、
とおっしゃり、紹介サイトへの登録を敬遠なさるからだ。
ほとんとの登録サイトでは(士業も、お墓や葬儀の紹介サイトも)、登録するだけならば無料で、成約してはじめて手数料がかかる設計になっている。
それでも、ほんとうにいいサービスの運営主からは、敬遠されてしまう傾向があるのである。
もちろん、登録したての数年はスキルが低くても、数をこなせばノウハウはどんどん蓄積されるので、ベテランが混じっていることだって、もちろんあるだろう。サービス運営会社のほうも、質が悪いと言われては困るだろうから、もちろん最初のうちは、自信をもって紹介できるベテランを引き抜いて登録していることだろう。
しかし、営利企業が運営している以上、バックマージンによる利益が優先されたら次第に玉石混交になっていくであろうことは容易に推察できるし、周囲を見渡しても、ほんとうにすごいスキルを持った(そして法外に高くはない)弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士は、こうしたサイトに登録していないことのほうが圧倒的に多い。
生前契約するお墓や、相続を任せる士業者には、けっこうまとまった金額を支払うことになるのだから、ウェブサイトの紹介だけでなく、信頼できる人からのクチコミや、血の通った情報とも比較して、慎重に選ぶのがよいと感じる。
情報か、本質か。それが問題だ。
つぎに、概要や大枠をつかんだあとで、「手足を使って調べる」その具体的な方策。
じつは、あまり知られていないけれども国税庁のウェブサイトでも、相続税の試算はできるようになっている。
私企業のサービスに登録しなくても、われわれの納めた税金で、すでにそうしたサービスがネット上に構築されているのだから、まずはそちらを利用したらいいと思う。
社会保険関係の手続きも、市役所へ1回行けばだいたい済んでしまうことで、遠方でも子があったり、甥姪に遺産を遺せるのであれば、さして負担に思うこともなくやってもらえる話と思う。
また、親族の社会保険関係の停止手続き等を通して、自分が老後になったときのことに思いをはせることもできるので、縁者が手続きを自らおこなうことにも意味はあると感じる。
また、墓じまいしたあと、改葬先となる納骨堂や永代供養墓を探すかたには、法話会や坐禅会、写経会などを定期的に開催している寺社をネット検索で探してみるよう推奨している。
そうした寺社主催の催しに何度か通ってみて、終わってからは茶話会などが催されることも多いので、周囲の人ともなじんでみて。
「ここで、人生の終盤をお世話になりたい」
と実感できる場所を見つけることから、はじめたらいい。
そのお寺に新規で契約できる墓地がなくても、今後、永代供養墓を建ててくれるかもしれない。和尚さまに相談すれば、信頼できる知人僧侶のお墓を紹介してくださるかもしれない。
戒名をいただいて仏式のお墓に入るということは、仏弟子として修行をすることになるわけで。
尊敬できてもいない師匠のもとで修行する(民営霊園で、顔も知らない住職が墓地許可申請しているお墓に入る)なんて、ほんとうはおかしな話です。
そうおっしゃるなかれ。
ほんの20年前まで、日本の葬儀は95%以上が仏式で行われていたのだから、あなたの祖父母やご両親は仏式で送られている可能性が圧倒的に高いわけで。
弔いがどうして宗教と密接に関わっているのか?
無宗教ではダメなのか?
といったことについてココでは語らないけれども、「花をたむける」、「ろうそくを灯す」といったことだけでも、「あなたはそれをすることで、故人が安らかに旅立てると、信じている」わけだから、立派な信仰のひとつなのですよ。
人は、なんらかの心の指針がないと、〝いつ訪れるかわからない死〟といった人智を超える問題に対処することが難しい存在だから。
もし、将来入る墓を探すとか、将来の相続に備えて準備をする、つまり何年もかけて準備をするのであれば、「なにを心のよりしろとして、のこされた時間を、よりよく生きてゆくか?」を観じ考えることが宗教(=よりよく生きるために、宗とする教え)なのであるから、祖父母の代から親族がみな支えにしてきた寺社に教えをこうのが近道といえるんじゃないかと思うのである。
※おもに「私は無宗教です」とおっしゃるかたへのご提案なので、個々の信仰をお持ちなのであれば、もちろんそれぞれの信仰で構いません。
「情報過多」に翻弄されず、「本質の終活」をしよう
ここまで読んでくださったかたは、情報にあふれかえる終活が前哨戦にすぎず、手足をつかって人生を預けられる場所や人脈をつむいでいくことこそ、本質の終活なのだということを、ご理解いただけたと思う。
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