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指導の引き出し②〜クエスチョン指導〜

さてここでは、元通信制高校の職員、そして後進の育成に携わった経験を活かし、指導をしていく際に自身が意識したことや、実践したことを元に私の引き出しを少しずつ開示していければと思います。

色々な場面で応用することもできる内容にしていけるよう、是非参考までにご一読いただけると幸いです。

第2回目のテーマとしては「クエスチョン指導」

これは私が2年目…に出会った大先輩から教わった(というよりは学んだ)指導の方法でこれはずーっと人とのコミュニケーションをとっていく際にも本当に大事にしている手法です。

指導となると、やはり辞書的にも下記内容のようになります。

① 教えみちびくこと。特に現代では、勉強・研究の方法などに関する助言を与えてみちびくこと。
② 団体などの組織、目的、方向などを決定し、成員を導くこと。
③ 具体的にさし示して案内すること。

指導(しどう)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp)

ここで大事なことは、皆さんも子どものころに感じた疑問。
そして大人になってからも感じる疑問。

先生って本当に常に正しいこと・正解を伝えてくれる存在なのか?

私は、はっきりとNoと伝えます。何が正解を考え、そして何がより正解に近いものなのかを常に追い求めることは必要です。
しかし常に正しい、そして正解を教える存在なだけであるならば、その先生はすぐにChat GPTにその役割を譲ってあげて下さい。

世の中に100点満点の解答が出るものは、本当に少ないものなのだと思います。なぜならばそこには”現段階での”というような時系列が入ったり、”違う視点から見たら”というような多様性・多角的視点が入ると、どこかに「もっ
ともっと」という部分が現れてくるものだからです。

よくその大先輩は、子どもたちに対して、こう話をされていました。
「ベストの選択肢というのはなくて、常によりベターな選択肢を考えていくということが大事なんだ」
「ベストを超えるというのが、よく言われているけど、この言葉は否定するつもりはないけど、ベストといった時点でいったん”最上級”になってしまっているからね。出し尽くしたとか、燃え尽きたにならないように、よりベターを常に目指すくらいで人の成長は止まらないんだよ」

ここまで一言一句覚えているということは、私の中にも染みついているんでしょうね(笑)
一緒によりベターを考えていく存在。
それが子どもたちの先を行く人たちの、役割なのかもしれませんね。それが導くということであり、教えることが指導ということではないのです。

そうした中で、よくこの子どもたちへ指導をしていく中で、私もこの大先輩と色々と議論をしながら構築していったものが「クエスチョン指導」でした。特に生活指導相談や、進路相談などで一番多用していますので、一人一人に対して、どう本気で接していくかによって、効果が大きく変わるものだと思います。

ただ会話の主導権を相手に委ねるという意味で使うということではないことは絶対に確認しておく必要があります。
間違った使い方をした新人の先生で、そのまま続けてしまったようで、子どもたちから
「あの先生に質問しても、いつも質問返しされるから、話したくないんです」「なんかあの先生が答えられない質問だったのかな?って時に、逆質問されてる気がして、ずるい気がします」
と言われていた時もありました。その先生はポイントがずれていただけ。今では子どもたちからの相談No.1の指導者になっています。※本当に目覚ましい成長で、私もたまに相談したりしています!

クエスチョン指導を実際に行う場合に、大事な視点は3つあります。
①関係性の構築(信用・信頼を得ているか)
②質問の適切さ(相手に合わせた質問が出来ているか)
③相手の動向(常に相手の様子を伺い、場のマネジメントが出来ているか)
です。


まず①から見ていきましょう。
「関係性の構築」は何もその相手とは、絶対的な信頼のもと、普遍的な間柄を築きあげていないとできないということを言っているわけではありません。簡単に言うと
「信用に足る人物である」と相手にその場で思わせられるかどうか
というこれだけです。
教育の現場では、これは実はかなり本来では有利なはずなのです。なぜなら既に、「先生と生徒」という関係性があるので、生徒側からすると先生という役割を持っている信用していいはずの大人の存在が「先生」だからです。しかし、これも実は脆く崩れやすい。何故ならば、その信頼・信用は、役割肩書で得ているだけなので、その人物像から得られているわけではないからです。

1つ教科指導のパターンの場合で例示します。
よくある英語の質問で「この文章の解釈(英文和訳)がわからないんですけど…」というような相談があったとします。質問をうけた英語の先生は、解説する時間も取れなかったので、模範解答の和訳を見て比較しながら、「この単語の意味は調べた?」「この文章の文法的な構造は調べた?」など逆質問をその場で沢山して”もう一度調べてから、おいで!”というように接したようでした。一見間違っていないのですが、私はここに大きな落とし穴があるように感じました。
何故ならば、英語の教科担当としての専門的なアドバイスというよりも、どちらかというと学習指導のみのアドバイスを行っており、誰でも出来てしまうようなアドバイスをその場でクエスチョンとして投げかけたように思えたからです。つまりその生徒がしてきた質問の本質(深層ニーズ)に答えていないことによる、モヤモヤ感が発生してしまっていたのです。
私には、その生徒の質問は
「”英語の先生”に見てもらって、考え方を知りたい」が奥底にあったのではないかと思います。
※誤解を恐れずに言うと、専門家に見てもらえることで安心するという、気持ちを安定させるための質問というジャンルだったのかもしれません。
そこを勇気を振り絞って、質問に行ったところ、定型文のような形で返されたことによる喪失感…。しばらくはその生徒が、その先生に質問に行くことはなかった記憶があります。

では、どうすれば良かったか。

正解はありませんが、私ならば「じゃあ、この質問に後でしっかり答えるから、また別の時間に来てもらえる?」や、「一緒に考えたいから、この問題コピーさせて?あるいは、あとで渡せるようにメモ書きもらえる?」のようにあえて時間をとるということを選択していたかもしれません。
※教師という忙しい業務の中で、この時間をとれるかどうかはわかりませんが、姿勢として見せるということと、やはり子どもたちとの接点こそ「真実の瞬間」と捉え、そちらを優先させてしまうかもしれません。

大事なことは、どのようにして「信用を得る」か。
自身の一挙手一投足は、子どもたちは本当に見ています。背中を追うという言葉もありますが、背中どころか、足跡すら見ているともいえると思います。信用・信頼の得る方法は様々ですが、瞬間的とはいえ、相手の表層や深層のニーズにどれだけ対応できるか、そして、その場での対応が難しければ「タイムアウト」するという手法も一つかもしれませんね。


そして②です。質問の適切さに関しては、やはり訓練が必要です。
ここについては、その一例として質問の方法にクローズアップします。
いわゆる
・オープンクエスチョン
・クローズドクエスチョン
です。

<オープンクエスチョン>
「これについて、どう思いますか?」「今後どうしていく予定ですか?」などのように、相手が答える範囲に制約を設けず、自由に答えてもらうような質問の仕方です。オープン・クエスチョンは相手からより多くの情報を引き出したい場面で有効です。

しかし、親しくない相手に選択肢が多過ぎる質問をすることで、心理的負担をかけてしまうこともあるので注意が必要です。そのため、5W1H(いつ/どこ/だれ/なに/なぜ/どうやって)を用いて、答える範囲をある程度限定するとよいでしょう。

<クローズドクエスチョン>
オープン・クエスチョンは相手が自由に答えられる質問でしたが、クローズド・クエスチョンは相手が「はい、いいえ」の二者択一や「AorBorC」の三者択一などで答えられるような、回答範囲を狭く限定した質問の仕方です。 クローズド・クエスチョンは相手の考えや事実を明確にしたい場面などで有効です。オープン・クエスチョン同様にあまり多用すると、相手を無理に誘導したり追いつめてしまい尋問のように感じさせてしまったりする場合があります。

オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを理解して、商談をスムーズに進めよう! | Urumo! (innovation.co.jp)

私は、この2つについては、かなり意識して使いわけをしました。
子どもでも大人でも、質問に答えられるかどうかの得意・不得意はありますし、まだ考えがまとまっていない状態でのオープンクエスチョンは、引用にもあるように、心理的負担をかけてしまうことも多々あります。

ですので、①の関係性の構築を踏まえながら、まずはクローズドクエスチョンから入っていきながら…というのが、多かったと記憶しています。しかし、本質の部分に関しては、逆に本当の意味での「オープン」なクエスチョンがひたすら有効です。何が大事なポイントかというと、

「相手に少しずつでも、話をしてもらうこと」

これが目標です。つまり言語化のお手伝いをすること。
言い換えをしたり、違う表現で同じことを言ってみたり、頭の中でボヤッとしているものの”解像度”を高めていく作業を、一緒にしていくことが出来るのが「オープンクエスチョン」なのです。

近年、企業・団体の中でも1on1ミーティングの重要性や必要性が叫ばれていますが、あえて問います。

自身が話している時間は、相手と比べてどのくらいの比率ですか?

自分と相手の比率が、8:2だったり、7:3だと、なかなか…かもしれません。
でもまずは数値指標として、5:5を意図的に目指してみてはいかがでしょうか。※比率ではなく、内容が大事ですが、まずは指標としてです。
クエスチョン指導は、教師・先生・講師と呼ばれる職業のある意味武器である「話が上手い」が逆に諸刃の剣となるパターンです。


そして最後の③は、いわゆるタイムマネジメントです。
しかしこれは短ければよい、長ければよいではなく、相手に合わせた状況作りが出来ているかどうかということです。

商談(営業職経験時)でも、三者面談でも、個別面談でも、全てにおける面接・面談時における個人的な理想の流れは、最後の方にピークを持ってこれること。そして来てよかった・会えてよかった、笑顔で帰れること。

実際、三者面談を15分で終わらせてしまったこともありました。
その時のことは、生徒から冗談で「差別!」といわれましたが、私は毅然と「区別!」と切り返すようにしています(笑)
でもタイムマネジメントは大事なことで、いかにその時自身が客観的に慣れているかを試す指標にもなります。
冒頭部分で、じゃあ「30分程度のお時間をいただきますが…」
話が長引きそうならば「もう少しお時間いただいてもいいですか?15分程度とか…」
ちょっと本腰を入れたい場合は、一旦あえて席を外して「時間の調整をしましたので、●時まで大丈夫です!」
というように、自分自身も相手にも時間は意識させる。

以前、私が担当していた職場のスクールカウンセラーの先生の話によると、どんなに長くても30分~60分がカウンセリングの時間とお話されていたことを思い出しました。

クエスチョン指導は、相手に投げかけをします。
当然、待つ時間も、聞く時間も、そして言い換えをする時間も必要ですし、さらにその場限りでない複数回にわたる指導が続くこともたくさんあります。タイムマネジメントは自身も相手も客観的になれる指標です。

是非、上述内容を参考にしてみていただけると、何か一つ変わるかもしれません。

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