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対面だと見積もりが甘くなるのをやめたい

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#やめたい瞬間」です。

先日、普段あまりやらないマーケティング関連の仕事を受注した。その作業にかかる工数の見積もりが甘く、ヒーヒー言っている。フリーランスになってから幾度となく訪れるこの瞬間を、やめられるものならやめたい。

これを書く今もその仕事は終わっていない。なかば現実逃避でこちらを先に書いている。皮肉なことに、こういうときは筆が走る走る。このテーマで書くネタを得られたことは幸いだが、やっぱりやめたい瞬間には変わりない。

ちなみに、見積もりが甘かったことで先方に迷惑をかけるわけではない(だから堂々とこの文章を書いている)。締め切りには余裕を持たせる癖がついているので、十分間に合う。その面で問題はない。ただ、「半日でいけますね~」と言った仕事に2日以上かけているので、時給換算するととっても安い仕事になってしまったことと、想定より作業時間が増えたため家事育児などの日常生活にしわ寄せがいくことが問題である。

何が悔しいって、冷静に考えればもっとマシな見積もりができたはずなのだ。知らない作業ではないし、似た作業に以前は2日見積もっていた記憶がある。それがどうしてこうなったのか。

思い当たる節はいくつかある。ひとつは、その作業が久しぶりすぎて忘れていたこと。2日かかる可能性はそもそも頭になく、「まあ1日あればなんとかなるんじゃないかな〜」くらいに考えていた。だが先方に伝えたのは半日だ。頭の中では1日だった見積もりが、なぜさらに減ってしまったのか。

それこそがこの問題の本質である。ズバリ、対面での打ち合わせだったからにほかならない。経験上、対面で伝える見積もりは、メールなどのテキストで伝えるものより2~3割少なくなる。ひどいときは、今回のように半減することもある。テキストのやり取りなら起きない問題が、なぜ対面では起こるのか。

心当たりがあるとすれば、それは見栄やプライド、あるいは恐れといった感情だ。対面で見積もりを伝えるときは、どうしても相手の反応をうかがってしまう。「そんなにかかるの?」という表情をされたり、「それなら結構です」と言われたりするのが怖くて、確実に相手の期待を裏切らないであろうラインを伝えてしまうのだ。

本来であれば、自分にとって余裕のある見積もりを伝えて、折り合いがつかなければ価格交渉をするのが筋だろう。頭では理解している。しかし、対面になると価格交渉も前向きになれない。そんなことでよくフリーランスをやっていられるなと思うが、零細事業主なんてそんなもんだとも思う。

学びは、対面で金額や日数といった見積もりの答えを出さないこと。自分の場合はテキストベースのやりとりなら真っ当な見積もりを出せるので、これが一番確実だ。

やむを得ず出さざるを得ない場合は、50%くらい上乗せしたものを伝えること。ついでに、確定的なものではないので別途相談の必要がある旨なども添えられるとより良いだろう。後日の連絡を許さず、その場で言質を取ろうとするようなクライアントには出会ったことがないので、これでなんとかなるはず。

……なんて、それくらいのことは今まで同じような瞬間が訪れるたびに考えている。問題は、学んだはずなのにそれを繰り返していることだ。対面の打ち合わせでは自分を客観視できず、自分が冷静でないことを認識できなくなる。冷静でない自分は、それがたとえ合理的でなかったとしても、とっさに目の前の人の機嫌を取るような行動を選択してしまうのだ。

根本解決のためには、そもそもどうして期待を裏切れないのか、がっかりされるのが怖いのか、自己理解を進める必要があるだろう。

ネットで読める本や記事では、他人の期待に応えようとし過ぎる人は、自己肯定感が低いと説明することが多い。そして、「ぜんぶの期待に応えるなんて無理だ」とか「期待に応えすぎると相手も不幸になる」とか、期待に応えすぎることのデメリットやリスクを挙げて、それをなんとかやめさせようとする。

でもきっとこれは逆効果だ。そんな説得をいくら重ねても、その瞬間の自分は冷静ではないのだから、意味がない。頭で考えて「期待に応えよう」としているわけではないから、行動をあらためようがない。むしろ、冷静になったとき、過去の「期待に応えすぎた自分」を責める材料が増えるだけだ。

じゃあどうすればいいかというと、例えば心理学者の加藤 諦三氏は、「隠された真の動機を見つけだすことだ」と言う。なぜその行動を取るのか、何に突き動かされているのかがわかれば解決に向かう、と。

理屈はわかるが、そのレベルの自己省察を一人でやるのはとても難しい。わかったつもりが、実は違うということがいくらでもある。それが一人でやれれば、トラウマに悩む人はもっと少ないはずだ。

見積もりの甘い自分を変えたいなら、まずはカウンセリングで専門家に相談でもしてみるべきだろうか。うん、それもいいかもしれない。


……いろいろ考えたけれど、まあ、まずはいい加減現実逃避をやめて、目の前の仕事をするべきに違いない。

文章:市川円
編集:べみん


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