日本企業が社員を売り渡した事件の感想

2018年7月21日 日本経済新聞 より

日本版「司法取引」が初適用された海外贈賄事件で、元取締役ら3人が在宅起訴される一方、捜査協力した企業は不起訴となった。
司法取引は「捜査に協力する個人を免責し、組織犯罪を追及する」とのイメージで語られることが多いだけに、アジア駐在経験のある大手商社社員は「会社は個人を守ってくれないのか」と戸惑いを隠せない。


簡単にまとめると、
「タイで賄賂を行なったのが見つかったけど、東京地検特捜部との司法取引で法人は不起訴、社員(元取締役、元執行役員、元部長の3人)は在宅起訴だよ」
という話です。

さらに『司法取引で会社が社員を「売る」時代に』を読むと、その背景には、不正取引を嫌う、英国米国の動きがあるようです。

今回はこの事件の感想を書きます。

日本は、エニアグラムのタイプ6の国です。
タイプ6は安心・安全・安定が大切で、大抵のタイプ6日本人は、集団に依存することで安心・安全・安定を得ようとします。それと同時に、タイプ6日本人は、所属する集団を維持することに力をそそぎます。

この事件、なぜ、このような結果になったのかと思ったら、単に、アメリカに合わせただけのようです。

海外贈賄に関する著書のある経営倫理実践研究セン夕—の北島純•主任研究員は
「米司法省は近年、企業犯罪捜査で法人を免責して幹部ら個人の刑事責任を追及する方法が、真相究朗と再発防止に有効と位置づけている」と指摘。「今回の事件も米国のスタンダードに沿った捜査だ」と話す。


では、このように書かれています。

日本では、談合やカルテルなど独禁法違反事件が後を絶たない。東海旅客鉄道(JR東海)のリニア新幹線建設工事でも、大手ゼネコン役員らの談合が摘発された。建設会社の社員の中には、まだまだ、談合は必要悪だという意識が残っている。談合を行う社員の側も「会社のため」ということで、罪の意識も薄いというのが実態なのだ。

※用語解説
談合:「話し合いをすること」「相談」「競争入札参加者が事前に落札者や価格を前もって決めてしまう不正な話し合い」(意味解説ノート より)
カルテル:同一業種の各企業が独占的利益を得ることを目的に、競争を避けて価格の維持・引き上げ、生産の制限、販路の制定などの協定を結ぶ連合形態。日本では独占禁止法で禁止されている。(デジタル大辞泉 より)

「会社のため」に犯罪も辞さないという発想は、欧米の社員の間にはまずない。会社のために自分を犠牲にするという考え方がそもそもないうえに、まして犯罪を手を染めるということに何のメリットも見出さないのだ。欧米企業の不祥事などは、個人が自分自身の利益を追求する形の犯罪がほとんどだ。罪を犯すのは自分の利益のためで、会社のためというのはあり得ないわけだ。

タイプ3国家アメリカは、「成功を求める」「効率を求める」「手っ取り早さを求める」の文化です。
社員が犯罪に関わるとしたら、「自らの出世」か、「自らの成功」か、「(何らかの)ショートカット」のためでしょう。

そしてつかまえる側も、「効率良く」仕事を進めたいわけです。

いっぽう、
これが日本だと、タイプ6は「判断」が嫌いなので、社員が自ら判断することはまずありません。大抵は前例踏襲です。

また、タイプ6は「混沌」が嫌いなので、横並び志向、平均志向です。お互いに判断することを依存し、相談しているうちに、似たり寄ったりになりやすい傾向があります。
「混沌」が嫌いなので、事前に相談しておいたほうが安心でもあります。
この傾向は、談合やカルテルと相性が良いものです。

たぶん、今回の事件もそれが結果的に一番「安心・安全・安定」で「混沌」では無かったので、元取締役、元執行役員、元部長らは、3900万円相当の贈賄を行なったのではないでしょうか?


事件に関して、ひとつの背景が書かれていました。

米国内に支店や事業拠点があれば、その企業がアフリカなどの第三国で贈賄を働いても、米国法で摘発することができる。

なぜって、「第三国であってもズルしたら、こちらは損害を受けるよね」という発想だそうです。これも、アメリカの「勝ちに行く」発想の延長線上にあるものです。
自らの成功のために、敵対する相手を叩こうとしているわけです。

今回、企業が社員を売ったのは、こういった流れの中で、

会社ぐるみで贈賄を行ったとなると、国際的に痛烈なバッシングを受ける可能性がある

からだそうです。

会社は、自分の安心・安全・安定のために社員を売ったわけです。

タイプ3アメリカは、自らの成功のため、
タイプ6日本は、自らの安心・安全・安定のため、
に動きます。

書き忘れていましたが、
タイプ3は、『地位探求者(ドン・リチャード・リソ)』『達成者(レニー・バロン&エリザベス・ウエイゲル)』とも言われる性格タイプ、
タイプ6は、『忠実な人(ドン・リチャード・リソ)』『慎重な人(レニー・バロン&エリザベス・ウエイゲル)』とも言われる性格タイプです。

アメリカが「アンフェアだズルだ」と言うときは、自らの成功とかち合うときです。

アップルが、中国市場向けのiCloudサービスのデータとその運用を中国企業に引き渡したのも、
自らの成功のためです。
ヤフーが05年、ユーザーの記録を中国当局に渡したのも、(たぶん)成功のためです。それにより反体制派やジャーナリストが捕まりましたが・・。

※https://www.sankei.com/wired/news/180321/wir1803210001-n1.html より

これらを見れば分かるように、アメリカは特に道徳観から動いている訳でもありません。
成功を目指す者同士がぶつかり合っているだけです。

タイプ3はハートセンターなので、イメージを使います。
そのイメージにだまされてはなりません。

つまりアメリカの「成功の邪魔だ」という流れの中に、今回の事件はあるということです。そういった側面もあるということです。

話を日本企業に戻します。

いったん採用されれば、定年まで面倒をみてもらえるという「信頼感」が、会社に滅私奉公するムードを生み、「会社のため」というカルチャーを成り立たせてきた。
今回の「司法取引」は、日本の雇用慣行の崩壊を如実に物語っているのかもしれない。

これは過去に書いた
SEALDs(シールズ)と宗教など』や『日本のレベルが落ちている原因』ともつながる話です。

日本の会社は、社員に安心・安全・安定を与えることで成り立ってきました。これにより社員も会社に尽くしてきました。
ところが、今回のように、
会社が社員に安心・安全・安定を与えなければ、社員の方も忠誠を尽くす必要が必要なくなります。
「会社への信頼」も「社員への信頼」も成り立たなくなってしまいます。

つまり、こういった司法取引をしていくと、日本企業から強みが一つ無くなることになります。

2018/11/10追記
http://www.afpbb.com/articles/-/3184962
より

2018年8月4日
米グーグル(Google)が、中国政府による厳しい検閲ルールに適合させた検索エンジンを開発していると報じられたことを受け、同社の従業員の間には怒りが広がる一方、グーグル側は従業員に対し、このプロジェクトに関する文書へのアクセスを制限する措置を講じている
ことが明らかになった。米ニュースサイト「インターセプト(The  Intercept)」が3日、報じた。
グーグルの広報担当者は、このプロジェクトの存在を認めることも否定することもしていない。

「企業としての成功」と、「自由の国アメリカというイメージ」、
どちらも、タイプ3の求める人々からの賞賛につながるものです。
この間で揺れているわけです。

ちなみに、
これがもし日本企業であれば、「相手国との間での安心・安全・安定な関係を結ぶこと」と、「相手国に合わせることで非難を受ける混沌(つまり安心・安全・安定が崩れる状態)」との間で揺れることでしょう。

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