世界最大規模のベーシックインカム実験の話を読みながら思ったこと

『世界最大規模のベーシックインカム実験でわかったことは?』

非営利の慈善団体・GiveDirectlyは2016年からケニアで、数万人が参加する世界最大規模のベーシックインカムの実験を行っています。マサチューセッツ工科大学の経済学者であるタヴニート・スリ氏と同じく経済学者で2019年にノーベル経済学賞を受賞したアビジット・バナジー氏がこの実験の内容から、ベーシックインカムをどのような形で行うのがよいかという知見を明らかにしています。

非営利の慈善団体・GiveDirectlyはケニア南西部にある小さな村のすべての大人に対して、2016年から2028年までの12年間、毎月2280シリング(約2200円)を支給するベーシックインカムを行っています。受給者は約6000人で、このほかにも「一括で約7万円を受け取る」や「2年間で合計約7万円を受け取る」という異なる給付方法でベーシックインカムを受け取っている人が数万人います。

一括受給グループの人がもっとも多く事業を立ち上げ、多くの額を教育に費やすことで、大きな効果を上げたことがわかりました。短期受給グループで見られた効果は、その半分だったとのこと。

長期受給グループは、一括受給グループに近い結果を出していました。スリ氏とバナジー氏が調べると、長期受給グループのメンバーは、共通基金に定期的に少額を払い、必要なときに大金を引き出せる、循環型貯蓄信用組合(ROSCA)を作って利用していたことが明らかになりました。

事業を行うにあたっては大金が必要となるため、一括給付の方が利便性が高いのですが、一方でベーシックインカムを毎月受け取っていた人は、一括で受け取っていた人に比べて概して幸福度が高く、精神的な健康状態がよかったこともわかりました。

ベーシックインカムの議論では「お金を給付すると仕事の意欲が削がれるのではないか」「アルコールなどの購入に充てられるだけなのではないか」といった懐疑的な意見が出ますが、少なくともケニアの場合には、そういった事例はみられなかったとのこと。多くの場合、賃金を得るために働いていた人たちが、労働する代わりに起業したことで、賃金労働を巡る競争が減って、村全体として得られる賃金が上昇したとのことです。

これは国民性や地域性が出る話だと思いました。
これが日本の場合だと、ベーシックインカムを行っても起業には結びつかないはずです。
日本は未知と混沌を嫌うエニアグラムのタイプ6の国ですし、
保守傾向が強く変化を嫌うビッグファイブの開放性が低い国となるからです。
どちらも、起業には向いていない性格です。

一方で、ベーシックインカムを受け取ることで、安心・安全・安定が得られれば、タイプ6の国民性は、良い面を見せ始めるとも思います。

ということで、
日本でベーシックインカムをするなら、目的別に二種類用意する必要があるようです。

一つ目は、安心・安全・安定を提供する意味でのベーシックインカム。これは、大きくとらえると、最近出てきている高校無償化の話も入ってくるかもしれません。ただし、高校無償化は、それに便乗(びんじょう)して私立高校が学費を値上げする可能性が問題点として指摘されていますが・・。
あと、これは、政治家にとっての票稼ぎ政策になるので、内容が吟味されない粗悪な政策になるかもしれません。

二つ目は、起業を目的(目標)としたベーシックインカム。この場合は、申請性にするか、今何か行動している人を対象にするか、専門家に探させるか、これは結果として日本に新しい会社なり産業を興すことを目的としているものなので、対象者は限られます。

一種類のベーシックインカムでは、日本において起業は期待できないんじゃないか
そんな感想を持ちました。

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