日本がオリンピックを止めないわけ

過去に書いた『プロジェクトに失敗した日本企業について
で引用していた
『東芝・シャープが勝ち目のない案件に挑んだ理由
大失敗の共通項を神戸大学の三品和広教授に聞く(2017/11/13 日経ビジネスオンライン)』

で説明できそうなので、これで説明を試みます。

まず先に、日本はエニアグラムのタイプ6の国民性で、
タイプ6は、安心・安全・安定を求めて「石橋を叩いて渡らない」性格であることを前提に次をお読みください。

―――日本企業の経営者は、「石橋を叩いて渡らない」イメージがありますが。

三品:ところが全然違うのです。プロジェクトに関するリスクを、2つの側面から考えてみましょう。

 1つ目は「損失の期待値」。思い通りに進まなかった場合、どれぐらいの「持ち出し」が発生する可能性があるかという考え方です。「失敗する確率」と「投下金額」のかけ算で、損失の期待値は計算できます。

 米国企業は、投下金額を小さくすることで期待値をコントロールしようとします。ベンチャー投資が1つの象徴ですね。失敗する確率は高くても、少額なら経営を揺るがすような損失にはなりませんから。その中で成功が出てきたら、徐々に金額を増やしていきます。

 一方で日本企業は、まずは失敗確率を低くしようと考えます。この傾向が強いので「リスクテークが足りない」と批判されるのでしょう。半面、失敗確率が低いと判断したら、一気に巨額の資金を投じて勝負に出る。私から見たら、ものすごいリスクを取っているわけです。単純に経営が「乱暴」と言っていいと思います。


安心・安全・安定を求めるタイプ6は、一度動かし始めるとそこ(動き続けている状態)に安定を見い出し、変更を行うことができず、最後まで突っ走ってしまう傾向があります。

「石橋を叩いて渡らない」のは最初のうちだけです。
時間をかけて、失敗確率を小さくして、万全の準備をしたと思ったなら・・・、

もう止められないのです。


 ここで、リスクのもう1つの側面を考えねばなりません。最悪のケースに陥ったら、最大でいくらの損失が発生するかということです。

 仮に発生確率が0.1%程度に過ぎなかったとしても、不運が重なることはあり得ます。そうした時に、財務が耐えられるのかを考えておかないといけません。

オリンピックは、今回、新型コロナで一年延期されました。起こらないはずの不運が起きました。
でも最悪のケースを想定していませんでした。
現在、「一年後のオリンピックは絶対にやる」と言っています。
ここでも最悪のケースは想定されていません。
一度動き始めたら、今度は、石橋を叩かず渡ろうとし始めます。それは、安心・安全・安定が崩れる可能性を考えるとストレスに押しつぶされてしまうからです。


 シャープの場合は液晶を長年手掛けてきたので、テレビ事業なら何とかなると考えていた。東芝は数十年間にわたって原子力ビジネスを手掛けてきたので、米国でも原発建設をこなせると思っていた。

 三菱重工業のMRJも同様です。米ボーイングの下請けで経験を積んでいますし、防衛省向けの戦闘機も手掛けている。航空機に関しては全くの素人ではないという自負があるでしょう。

 つまり、自分たちが経験を積んでいる事業ならば、まさか手痛い失敗にはならないだろうと思い込んでいるわけです。失敗の確率が低ければ巨大な投資をしても大丈夫。そういう理屈なのです。

「失敗の確率が低ければ巨大な投資をしても大丈夫」も問題ですが、
失敗しつつあっても、オリンピックは大丈夫で進んでいます。

タイプ6日本にとっての大丈夫というのは、ある意味、危険を知らせるフラグです。

新型コロナは数種類もしくはそれ以上に枝分かれしているようです。
もしかすると、ある種の新型コロナに免疫ができても、別の種類の新型コロナには免疫が無いかも知れません。私たちはまだよく新型コロナのことが分かっていません。なんていったって出てきて半年も経っていない病気なのです。
そのような中で、オリンピックを開催して、世界から人を受け入れるのは大丈夫なのでしょうか?






蛇足です。
実はこれ、一年前に書いた文章です(だから本文中に「出てきて半年も経っていない病気」なんて書かれている)。
文章の流用をしようとパソコンの中で過去の文章をあさっていたら、この題名のテキストファイルを見つけて、すっかり忘れていて「なんだろう?」と開いてみたら「こんな文章を書いていたんだ」となったわけです。
プロパティを見ると、「更新日時2020年5月1日」となっていました(作成日時が「2020年8月22日」となっていて意味不明。あの頃、パソコンがおかしかったから一度外に退避していたファイルなのかも知れません)。

てっきり投稿済みと思っていたら、自身の過去記事において、昨年一年間を確認してみても投稿されていないようだったので、ダブっているかも知れませんが、こうして投稿してみました。
読み難い箇所だけ、加筆訂正しています。大きく変えると面倒なので、そのまま投稿しました。
たぶん、あのころは、黒川三密賭けマージャン事件やらアメリカの黒人問題やらの文章を書いていたので、投稿を後回しにしているうちに忘れたのだと思います。
サッサと文章を上げていなかった自分自身にちょっと失望している次第です。


参考

インタビューを受けていた三品 和広(みしな かずひろ)神戸大学大学院経営学研究科教授のウィキペディアのページです。
インタビューを読んで著作に興味が出た方は参考にしてください。


2021/05/09 追記1
題名が悪かったですね。
元々が一年前の文章なので、今であれば、
『日本がオリンピックを止めないわけ』ではなく、
『日本が一年前にオリンピックを止めなかったわけ』にしたほうが良かったのかも知れません。

2021/05/09 追記2
1年後の今の視点で書いてみると、
『日本がオリンピックを止めないわけ』は、
「(「上手くいく!」って、もう)決めちゃったから」
となります。

タイプ6は、アドリブや判断が苦手なので、事前に根回しなどして、
(誰も責任を取りたくないので)総意で決めます(ワンマンが嫌われている側面もある)。
行くとなったら、後は自動運転です。
そこからは、事前の取り決め通り動き続けることに安定を見い出します。
そうなると、そのうち目的も、当初のもの(「コンパクト五輪」「新型コロナに打ち勝った証拠」)から、いつの間にか、「止めないこと」「変化変更させないこと」に すり替わってしまいます。

これを書いていて「猫が車道を横断するときのようだ」との感想を持ちました。
猫って走ると決めたら もう止まらないですよね。あれと一緒かも。

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