英国インタビューで言われた「尖閣を中国にあげれば?」 日本人は外国と議論できているのだろうか?というお話です

 『臆病なライオン』に追記しようと思っていたのですが、量が多いので、独立させて記述します。

 尖閣諸島問題について、こんな記事を目にしました。三日前の記事です。

『中国がついに尖閣を獲りに来る「その決意の証拠」(2017/09/19 近藤 大介 現代ビジネス)』
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52928
(Yahoo!で見たいかた↓)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170919-00052928-gendaibiz-int

※リンク先を読むかたは、文章量が多くてくたびれても、少なくとも最後にある「3つの感想」だけは読んでみてください。

8月28日から、中国中央テレビ(CCTV)が6日連続で、『大国外交』と題した6回シリーズの特別番組(各回45分)を放映した。
日本に関する内容は、わずか3回しか出てこなかった。
第1話で(略)0.5秒ほど。
第5話で(略)0.5秒ほどだ。
残り一つは、第4話(略)で、日本との尖閣諸島問題を、10分ほど取り上げている。

 2012年9月11日、日本政府は、中国政府の非難をものともせず、尖閣諸島を国有財産として購入します。
これについて、

鄧小平はこう言った。
「われわれが中日国交正常化を成し遂げた時、双方が、この問題に干渉しないことを約束した」
中国社会科学院中国国境研究所の李国強所長が語る。
「これこそが有名な、『擱置争議、共同開発』(争議を棚上げし、共同開発する)だ。それなのに2012年になるや、日本は『島の国有化』をぶち上げ、釣魚島の主権問題の衝突を激化させたのです」
いわゆる「尖閣国有化」は茶番であり、中国の領土主権の厳重なる侵犯である。そのため中国の強烈な抗議を巻き起こし、中国は徒党を組んで拳を振り上げた。
2014年の新年を迎えてすぐ、中日の駐英大使が、BBCの看板番組『ニュースの夜』で、舌戦を繰り広げ、それがネットで拡散した。その節度を保った双方の叡智によるやりとりで、劉暁明中国大使は、林景一日本大使に完勝したのだった。その二日後、駐アメリカ、駐ロシア、駐カザフスタン、駐エクアドルなど7人の中国大使が、日本の領土と歴史上の問題について、集中的に批判した。

 これが本当か、少しネットで調べてみると・・・

https://newsphere.jp/politics/20140110-8/
より、

(略)安倍首相の靖国参拝を受け、(略)英デイリー・テレグラフ紙で、劉暁明駐英中国大使が、日本をヴォルデモート卿(人気小説「ハリー・ポッター」の悪役)に例えて批判。対して「中国もヴォルデモート卿になりえる」と、林景一駐英日本大使が反撃した。両者の舌戦はついに英BBCのテレビ番組へ持ち込まれた。
両大使は別々のスタジオでインタビューを受けた。
尖閣諸島について林大使は、中国は尖閣の領有権を主張することで国際秩序を乱し、挑発と威圧で現状を変えようとしていると述べた。また、改憲を通じた日本の軍国主義化について、どの程度まで日本は主権を守る用意があるのかと聞かれ、「その質問は中国に向けるべきじゃないですか」と返した。
パックスマン氏は林大使に「尖閣を中国にあげれば?」、「地域全体、世界全体を危険に陥れるほどの価値が尖閣にあるの?」と難問を浴びせたあと、「日本が軍国主義を復活させようとしているのか?」と付け加えた。それに対して林大使は、日本の平和憲法と戦争放棄が核心である信条は変わらないと答えた。
中国の劉大使は、安倍首相の靖国参拝で中国国民は気分を害したと述べ、日本が尖閣諸島において領土問題の存在を認めようとしないと主張した。また、イギリスの元首相チャーチルの「歴史から教訓を学ばぬものは、過ちを繰り返して滅びる」という言葉を引用して、日本を批判した。

 キツイ質問としてでは、ありますが、イギリス人から
「尖閣を中国にあげれば?」
「地域全体、世界全体を危険に陥れるほどの価値が尖閣にあるの?」

と言われる状況なんですね。

 中国の劉大使は、コメントにハリー・ポッターをからめるとか、チャーチル元首相の発言を入れるとか、イギリス人に伝わるような言葉を使っているようです。うまいですね。

 この番組があったときの中国人の反応は、「日本人は英語が下手だ」が多かったようです。

 これ、第二次世界大戦が始まる直前のアメリカで、日本の大使の英語がさっぱり分からないと言われた一方で、中国の英語が誉められた話を思い出させます。

 私としては、べつに、和製イングリッシュでもいいのですが、言いたいことは言えていたのでしょうか? 相手を納得させたのでしょうか?

 日本人の国民性は、エニアグラムのタイプ6と言われています。
 また、官僚組織もタイプ6的なものだと言われています。

 そして、一択を好み、不安定な状態を嫌うタイプ6は討論には不向きな性格です。
 これは、『なぜ口が出せないのだろう?なぜ会話できないのだろう? 世界のコミュ障、日本人』ですでに書いています。

 林大使に文句を言うのは簡単ですが、皆さんは、外国人の友人とこういう討論をしたときに、相手を納得させられますか? そもそも討論を避けたりしませんか? その間に、中国人や韓国人は相手を納得させて味方を増やしているのだとしたら?
 「なにを大げさな」ですと? では、なぜ、「慰安婦の像の問題」で日本は世界の中で孤立しているのでしょうか? あなたの周りの外国人で慰安婦の像に賛成の人がいたら、あなたは議論して納得させられますか?


 昨日のニュース『意見食い違いの場合 6割超「事を荒立てないで収めたい」(2017/09/21 NHK)』では、文化庁が行なったコミュニケーションに関する調査の結果を照会しています。

 調査結果には以下のようなものがありました。

他人と意見が食い違う場合の対応を聞いたところ、「なるべく事を荒立てないで収めたい」と答えたのは61.7%、「納得いくまで議論したい」と答えたのは24.9%でした。
「なるべく事を荒立てないで収めたい」という回答は8年前の調査より10.4ポイント高く、中でも、20代は23.5ポイント、10代は19.1ポイント、それぞれ前回より高くなるなど、若い世代を中心に大幅に増えました。
さらに、他人と意見交換する時、「ふだんの人間関係を優先し、自分の意見を主張しない」と答えたのは58.6%と半数以上に上ったのに対し、「ふだんの人間関係を切り離し自分の意見を主張する」と答えたのは21.6%にとどまりました。

 専門家は「スマートフォンの普及などで常にコミュニケーションにさらされ、あつれきを避けたいと考える人が増えているのでないか」と語っているそうですが、
 私から言わせると、「タイプ6社会が求める安心・安全・安定が崩れてきているストレスから逃れるために、身の周りに安心・安全・安定を求める欲求が強くなってきて、その結果として、そういう あつれきを避けているのではないか」ということになります。ちなみに、なぜ、「タイプ6社会が求める安心・安全・安定が崩れてきている」のかは、過去に『日本のレベルが落ちている原因』で解説しています。
 専門家の言うように、スマートフォンの普及が原因というのが本当なら、これは国際的な傾向になるはずですし、また、北朝鮮にスマホを送る運動をすれば、徐々に国際関係は改善されるはずです。私は専門家の言うことに懐疑的です。

 今の日本では混沌が強すぎて、安心・安全・安定への欲求も強くなっているようです。それで、「なるべく事を荒立てないで収めたい」と、安心・安全・安定が崩れる議論をさけるようになっています。

 タイプ6社会の中で、若い世代ほどその傾向が強く出ているのが気になります。
 若い世代で、タイプ6的傾向が強く出ていることは、以前にも『「個性的」は、否定の言葉?』で取り上げました。

 ですが、国際社会を生き抜くには議論になれる必要があります。

 昔の話ですが、ロシア語通訳の米原万里さんは、こんなことを言っています。

日本人は交渉ごとでも、なるべく対立をぼかそうとする姿勢が強いですね。ロシア人も含めてヨーロッパ人は、中国、韓国人もそうですが、問題点を鮮明にしようとしますから、対談は対決で、それは一種のゲームなのです。ところが日本人は、人間関係までも壊れるのではないかと慮って、対決を避けよう、対決点をぼかそうとする答え方になる。だんだんまどろっこしくなって、相手は「通訳が下手だから通じてないのではないか」と誤解して、さらに攻撃的になってくる。(以下略)

『言葉を育てる 米原万里対談集』より

 文化庁が行なったコミュニケーションに関する調査結果からは、この「なるべく対立をぼかそうとする姿勢」=「なるべく事を荒立てないで収めたい」が若者を中心とした この国全体で、さらに強まっていることが分かります。
 昔から議論になれていないタイプ6日本人なのですが、国際社会で自分の立場を説明できないと今後も不利益を被るでしょう。
 議論できる人材が日本には必要です。

 これらに対応するために、アクティブラーニングやらC領域の学習やらが必要になるのでしょうが、さて、今回のようなアンケート結果が出ている中で、そのような教育が成功するのかという問題も出てきます。また、自分より下の世代が討論や議論を言ってくるようになったときに、それを押さえ込んで、討論ができる日本人をつぶすようなことを大人が行なわないかが気になります。

 『日本のITは何故弱いか』で出てきた話のように、若者を教育しても、社会がそれを打ち落とす現象が起きたなら、日本は、このまま「世界のコミュ障」のままで終わることになります。

蛇足
 混沌が嫌いなタイプ6日本人が、その混沌に耐えられなくなったときには、尖閣や沖縄を手放す可能性はあると私は見ています。
 それは、北方領土を2島返還で良いとする考え方と似ていますし、
北朝鮮の拉致被害者や中国に拘束されている人たちを無視してきた態度とも重なります。

 安心・安全・安定が崩れそうになったときに、自分の周りの安心・安全・安定"だけ"を確保して、あとはどうでもいいという態度、
リソ&ハドソンの言うところの「極端に党派的」な態度になっているタイプ6ならば、
それも起こりうるとみています。

2017/11/30追記
2017年11月、モンゴル人横綱日馬富士が暴行問題で引退することになりました。
これを受けた、モンゴルでは、「土俵上で日本人が勝てないのでモンゴル人が締め出されたと考える人が多い」「強すぎるモンゴル人力士が疎まれた」と思われているようです。
これは、朝青龍が知人を暴行して引退した時もそうでしたが、日本人のマスコミ関係者ならびに、日本人そのものの説明責任が問われている問題です。
相手の意見のみ聞いていて、「なぜ、問題なのか」を相手に説明していません。

他にもアメリカ黒人兵が問題を起こしたときに、来日した家族が「これは黒人差別だ!」と言ったときにも、どこまで反論したのでしょうか?

議論できない日本は、これらの人々から嫌われた存在で居続けます。
嫌った相手は、いざというときには、日本人の対立相手の肩をもつでしょう。

それでいいんですか?

※参考『「モンゴル人疎まれた」日馬富士の母国に日本不信:朝日新聞デジタル


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