無茶を承知で今後の選挙を占う

少し前に書いた『オリンピックを控えた2021年7月東京都議会選挙の結果をメモとして残しておく』の続きのような話です。

基本的に、判断が嫌いな日本人は、選択を行う際もっとも負荷の無いところを選びます。
それは、勝者であり多数派である与党や現政権となります。
今は、新型コロナや、その中でのオリンピック開催などが問題となっており、その中心が与党と現政権なので、判断に負荷がかかっている状態です。

与党・自民党や公明党には、固定支持者がいます(野党支持者にもいると思いますが、ここでは語りません)。
世論調査で何があっても政権支持は3割を堅守するので、自民や公明のそれは国民の3割・・・少なくとも2割くらいはいるものと思われます。堅牢な支持層と言えるでしょう。これが自民単独なのか公明合わせてなのかまでは不明です。

そして現在、浮動層と言われている人達の中に、いつもの支持政党以外には入れる気の無いプランA固定の人達がいます。
このプランA固定の人達は与野党ともにいます。
劇的に判断を変えることが苦手な人達です。日本は判断や決断が苦手なタイプ6の国民性なのでプランA固定の人は多いと想像できます。
潜在的固定層の人達とも言えます。この人達も意外に堅牢です。
この人達は、何も問題が無ければいつもの支持政党に入れますが、政策において問題が出た場合や事件が起きた場合、世間の非難が大きくなってきた場合(自分が不満に思う場合、自分の周りが問題にしている場合)は、“積極的”に他の政党に入れるようなことをせず、立場的には、ときに無党派となり“消極的”に反対し、選挙で投票しないことにより意志表示をします。何があってもプランAを実のところ変えていない人たちでもあります。

政権支持のプランA潜在固定層に関して言えば、現在は、新型コロナやオリンピックに関する政府の動きに不満があるので、あとは世論の不満に押されて、
“消極的”反対派となっています。

不満があるときは、いつも行っている選挙にはあえて行かず、いつもの投票先に投票しないことで意思表示をします。
そういう人が多いときには投票率が落ちることになります。


では、日頃選挙に行っていない人たちはどうなのかというと、
この中にも支持政党を固定しているプランAなかたが一定数存在します。この層の心理は「自分が行かなくとも支持政党の候補者は当選するだろうから行く必要は無い」というものです。
これは余裕のある政党に存在する層となります。なので多くは自民党支持者となります。
この層は候補者が危機のときに、自分の日常を守るために動きます。
日本はアメリカのように「政権を変えることによって急激な変化を起こすこと」に抵抗がある人が多いです。
なので、この層は、急激な変化が起きそうなときに、それを止めるブレーキの役割を担っています。
投票率が上がったときに、与党が圧勝するときのパターンがこれになります。
ただし、今回は、この層の中にも、新型コロナやオリンピックに関する政府の動きに不満がある人が多そうなので、与党が負けそうになったとしても動かない可能性があります。

また、浮動層の人たちの中には、
「よく分からない」「面倒だ」などの理由から投票に行かない人たちがいます。
何があっても動かない不動層と言える人たちです。


ということで、政党の移動をするような本当の浮動票の人たちは、世論調査で出る数よりもずっと少ないと想像しています。

これは、アンケートや調査を行って、過去数回分(全部と言いたいところだけど、全部言える人はいないのでは?)の投票/不投票の経験と、今まで入れてきた政党を聞けば分かると思っています。


日本は、お金や成功を求めるよりも、日常(現状)の維持のほうに意識が向かいます。

内田樹は、こんな文章を書いています。

 ふたりで六畳一間のアパートに住み、発泡酒を呑みながらTVでサッカーを見て、たまの休みの日には甲子園球場の外野席で阪神戦を見て、帰りにラーメン屋に寄るだけで「ほっこりしあわせ」というような感受性が若い人たちのあいだに根づきつつある。

先ほども書いたように、浮動層の中に、劇的な変化を起こす人がいる割合は、低いと想像しています。
将来の問題点を指摘する人(専門家)がいても、それが自分の現状維持を妨げるのなら無視する。抵抗すらする。
・・・ということです。

こういう態度は、政権も国民も大差無いということです。

今後の選挙で言えば、今現在、国民にリアルに不安を与えている新型コロナの状況によって、与党の得票数が変わってくるでしょう。
状況が悪くなれば、“消極的”反対で本来与党支持者である人たちが投票に行かず、投票率の低下分の票が与党から逃げる可能性があります。
いくら不安や不満があっても投票する政党を変えるような“積極的”反対者は思うほど増えはせず、「現状に不満な人の票が野党に流れることは無い」ということが留意点です。

「選挙の結果として、率としては与党の割り合いが減り野党の割り合いが増えるかも知れないが、得票数としての増減は率ほどでは無い」
「なぜなら、“消極的”反対者が増えても、“積極的”反対者はあまり増えないから」
ということです。

2021年7月4日の東京都議会議員選挙結果から、そういった想像をしています。

「魅力的な野党が無い」という意見もありますが、真に受けないほうがよいです。
現状維持の人が言っている言い訳です。
過去にも書いていますが、結婚をしたがらない人が「良い人がいない」というのに似ています。
ですから、言い訳のテンプレ発言を信じて「この人なんてどう?」なんて言っても、相手は乗り気にはならないでしょう。

※ 「“積極的”反対者が増えない理由」については『行動変容』という視点からも説明ができますが、今回はこの話はしません。これは次回で取り上げる予定です。

ちなみに、テンプレ発言も、理由の言葉をいちいち考えなくてよいタイプ6日本人の思考停止な動きのひとつです。
テンプレに依存して自分で考えていないわけです。

「本当に良い政治家がいない」というかたには、「白馬の王子様を何もせずに待つだけですか?」と聞きたいです。
日本の国民性でもあるタイプ6は通常、依存的だと言われています。
白馬の王子様願望も依存の一形態だと言えます(でも、白馬の王子様っていいですよねえ。これに関する話をいろいろ書きたいところですが、話がそれてしますのでグッと我慢して、ここではしません)。

思考停止や依存なんて書いてますが、
どのタイプであれ、ストレスがかかれば悪い面が目立ってくるものです。
他文化であれば別の悪い面が出て来ます。
ですからエニアグラム的には、「タイプ6の国民性の問題ではなくて、国民性の負の部分が出ているのが問題」ということになります。
何をストレスととらえるのかも性格タイプによって違いがあります。タイプ6の場合は、安心・安全・安定が崩れること、未知や混沌がストレスとなりす。判断や決断や責任も未知や混沌に関わることとしてストレスになります。

2021年7月頭時点での感想です。今の日本をそういうふうにとらえています。



2021/07/10追記
はてな でのコメントに、

前回都ファについた公明が、今回自民についた、という前提がないと、「自民勝ってるじゃん」って思っちゃうよね。公明ブーストなしでここまで取れた都ファは躍進だし、公明ブーストつきでここまでしか伸びない自民。
文京区の共産トップは五輪中止、都立病院独法化反対を掲げてたのが共産だけだったから、コロナ病床で振り回された大病院を多く抱える文京区の医療従事者も流れたんじゃないかと推察(なお前回も共産は215票差で次点)

というのがあったので、調べてみました。

東京都議会議員選挙、共産党が一位だった文京区の場合

        2017年             2021年(今回)
全体      95964            ⇒ 85989(-9975)
共産(福手裕子)26782(落選)        ⇒ 30815(1位当選)(+4033)
都民(増子博樹)42185(公明支持、1位当選) ⇒ 30077(2位当選)(-12108)
自民(中屋文孝)26997(2位当選)      ⇒ 25097(公明支持、落選)(-1900)

簡単な解説
共産党に4千ちょっとの票が動いた。
都民は、公明の支持が無かった。オリンピックの影響は不明だが1万2千百の票が逃げた。それでも2位当選した。
自民は、公明の支持があったにも関わらず、全体として千9百の票が逃げ、3位落選となった。
全体としては、前回より1万の人が投票をしなかった。
都民・自民、合わせて1万4千(14008)の票が逃げたが、共産に動いた票はその内、4千ちょっと(4033)、約3割(29%)だった。残りは無投票だった。


別の区もひとつだけ調べてみました。
世田谷区の場合
2021年の候補者が18人・議席8

        2017年   2021年(今回)
全体      375635 ⇒ 285601(-90034)
都民(福島理恵子)70471 ⇒ 43096(-27375)
共産(里吉ゆみ) 34621 ⇒ 34225(-396)
公明(栗林のり子)42208 ⇒ (高久則男・公明・新人)32200(-10008)
自民(小松大祐) 25805 ⇒ 26486(+681)
自民(三宅茂樹) 33019 ⇒ 25819(-7200)
立憲(山口拓)  29838 ⇒ 25644(-4194)
立憲(風間穣)新人      23849
自民(土屋美和)新人     22040

世田谷区の場合は、前回に比べ9万もの人が投票に行っていなかったようです。
その中で、自民の小松大祐氏が一人光っています。
天候が悪く、新型コロナで出歩くのに抵抗がある人がいる中、また新型コロナやオリンピックの問題で逆風が吹いている自民党において得票数を一人伸ばしています。

世田谷区の場合、全体に票が少なくなっているのを見ると、新型コロナやオリンピックに不満を持つ人の票がどこにも流れていないことが分かります。
というか、ちょっと無気力なような感じすら受けます。
「都民ファーストの会」の福島理恵子氏は元東芝社員、前回、今回とも支持・推薦なしでトップ当選です。
ですが、得票数は、前回に比べ2万7千票落としています。

各候補者への落胆度合いがマイナス票で分かるようにも思います。


2021/07/11追記
有権者数を選挙ドットコムで調べました。以下の記述は選挙ドットコムと朝日新聞デジタルのデータで書いています。

文京区の2021年投票率は48.66%、前回投票率は、56.5%。
有権者数は、180,945人 前回より +7,790人だそうです。
今回は、2人目の最下位当選が30077なので、16.2%で当選となるようです。全投票数で言えば35%です(1位が35.8%)。
前回の2人目の最下位当選は26997で、有権者数は173155なので、15.6%で当選となるようです。全投票数で言えば28%です(1位が44%)。
1位の共産党候補は前回(3位落選)より4033票増えたわけですが、これは、全有権者数の2.2%です。
この2.2%が浮動票となるようです。かなり少ないですね。


世田谷区の2021年投票率は 43.93%、前回投票率は、51.33%。
有権者数は、761,047人 前回より +18,842人だそうです。
今回は、8人目の最下位当選が22040なので、2.9%で当選となるようです。全投票数で言えば6.7%です。
前回の8人目の最下位当選は18048で、有権者数は742205なので、2.4%で当選となるようです。全投票数で言えば4.8%です。
世田谷区では、はっきりと浮動票と分かるものはありませんでした。

この2つの区だけで結論を述べるのは乱暴ですが、
浮動票は0~3パーセントの間なのかも知れません。

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