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CHAROPをクローズしました -リリースしてわかった3つの誤算-

こんにちは。ミクシィでデザイナーをしてるえんあかです。立ち上げから1年半以上関わってきたSNSアプリ「CHAROP」ですが、実は7月末日をもってサービスを終了いたしました。初めて本当のゼロから企画、開発、運用を行なったサービスだったので、思い入れは強かったですし、本当に残念で悔しい気持ちでいっぱいです。

CHAROPがクローズになってしまことにはいくつかの誤算がありました。なかなか自分の中でも整理できず、サービス終了から記事として公開するまで時間がかかってしまいましたが、今回はその誤算と、サービス終了の判断に至った理由をまとめました。
以下長文となりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです🙇‍♂️


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CHAROPとは

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はじめに簡単にサービスの紹介を。CHAROPは人とつながらず、好きなものの「#(ハッシュタグ)」でつながるSNSです。大きな特徴としては以下の3つがあります。

1. 何の話題かを#で表現
「#アニメ」「#音楽」「#サッカー」などそのトピックの#をつけて投稿。
2. 共感してくれる仲間が見つかる
人のフォローはなく、#をフォローする仕組み。#にはその話題が好きな人しかいないので、共通の話題で盛り上がれる。
3. 投稿内容は24時間しか残らない
投稿は24時間しか残らないので、ちょっと言いたいっていことも気軽に投稿できる。

さらにCHAROPの詳細を知りたいって方はこちらの記事をご確認ください

人とつながりすぎてSNSで何も投稿できなくなったという課題に対して、CHAROPは人とのつながりを排除し、とにかく気軽さを追求したアプリでした。事前のインタビューでも好意的な意見が多かったCHAROP。しかし、いざリリースしてみると想定外の誤算がいくつか見えてきました。


【誤算1】 投稿内容が「好きなこと」ではなく、「愚痴」や「感情」がメインだった

CHAROPは好きなものでつながるSNSというのがメインのコンセプトでした。なので狙いとしては、「#アニメ」や「#音楽」など話題で盛り上がってもらうことを想定していました。
しかし、実際には「#恋愛」や「#愚痴」など日常の中で言えない感情を投稿する人が多かったです。なぜ感情系が多くなってしまったのか?その要因としては以下のように考察します。

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感情系の投稿が多い要因
1.  まったく素性が分からない人と趣味の話はハードルが高かった
2.  趣味の話は消えるのではなく残したい。
3. 言いたいだけの感情系は人目を気にせず、また消えるので気軽に投稿できる

1.  まったく素性が分からない人と趣味の話はハードルが高かった
これに関しては、Twitterでも知らない人と趣味アカで盛り上がってる人いるのに?と思うかもしれません。しかし、CHAROPとTwitterには大きな違いがありました。それは知ることができる相手の情報量です。
CHAROPは他のユーザーの情報としてはニックネームとその人がフォローしているハッシュタグしか知ることができません。その人が過去にどんな投稿しているかも分かりません。
気軽さの追求として、匿名性やお互いの情報を極力見えないようにしたのでが、趣味や好きなことにおいては、相手の熱量や好きの方向性が自分とあってるのかなどが分からないと盛り上がるのが難しいようでした。

2.  趣味の話は消えるのではなく残したい。
24時間で消えるメリットも趣味の話題ではマイナスに働くこともありました。「#コスメ」などで一時期おすすめのコスメの紹介投稿が多くあったのですが、このような有益な情報も24時間で消えてしまうため、次第に投稿量は減ってしまいました。

3. ただ言いたいだけという感情系は、人目を気にせず、また消えるので気軽に投稿できる
逆に感情系にはCHAROPの匿名性や24時間で消えるメリットがプラスに働き、何気ないことや人に言えない悩みなどの投稿は割合として大きかったです。また、感情系の投稿はみんなが共感しやすく、コメントやリアクションも活発に行われていました。

結果として、「アプリの訴求としては好きなことで話そう」なのに、実際のアプリ内では感情をつぶやいている人が多い。このことで、せっかくアプリをインストールしたくれたユーザーも離れてしまうという悪循環が生まれました。特にネガティブな投稿が多いタイミングなどはよりそれが顕著に現れていました。


【誤算2】 想定していたメインターゲットにハマらなかった

CHAROPはメインターゲットとして都内に住む大学生を想定して、ユーザー獲得やマーケを進めていました。サービスリリース前に都内の学校に通う大学生、約400人にヒアリングを実施。その学生の皆さんを最初のユーザーとしてアプリを配布しました。

大学生をターゲットしたのは、SNS上での人とつながりが社会人の私たちより格段に広いため、つながりに疲弊しているのでは?という仮説が元になっています。また、流行を作るのは流行に敏感な10代後半から20代前半という目線もあったりします。

実際にヒアリングしてみると、こちら仮説通りの課題感を本人たちも感じていて、CHAROPのコンセプトやモックに対して好意的な声が多かったです。しかし、いざリリースしてみるとさほど定着しませんでした。逆に投稿が多くて継続率が高いのは、育休中や専業主婦のママさんや仕事に悩む社会人など、20代後半から30代の人だったのです

その要因としては以下のように考察します。

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大学生ではなく20代後半から30代に刺さった理由
1. 言いたいけど言えない感情でもやもやしているのは20代後半〜30代。20代前半までの学生や社会人は友人となんでも話せる距離感や関係性がある。
2. 20代前半まで学生や社会人は仲の良いリアルな友人に何でも話せちゃう

1. 言いたいけど言えない感情でもやもやしているのは20代後半〜30代。
投稿内容として「言いたいけど言えない」といった感情系の投稿が多いということが誤算1でありました。そしてこの感情を多く持っているのは20代後半〜30代で、なおかつ女性が多いということも次第に明らかになってきました。

その大きな要因の1つが就職・転勤・結婚・出産などのライフステージの変化だと考察します。20代後半から30代にかけて起きるこれらの変化によって、その人の価値観であったり、環境が大きく変わるかと思います。会う頻度も減り、共通の話題や話せる話題も減る、このことでどんなに仲の良かった友人でも、物理的にも気持ち的も以前の様になんでも気軽に話すということが難しくなってきます。

逆に学生のうちは生活スタイルや価値観にそこまで違いがないようでした。会う予定も比較的調整しやすいので、言いたいことは会った時に何でも話すことも出来ます。また気持ちの距離感も近いのでSNS上やLINEなどでも気軽にやりとりしているようでした。そして、社会人2~3年目ぐらいまではその関係性が続いているようにも感じました。

ただ誰かに言いたい、共感してほしい、人とのつながりがほしい。そのような課題を抱える20代後半〜30代の人の女性には、見ている人を気にせず、思ったことを発言しやすいCHAROPが刺さったということが考察できます。


2. 20代前半まで学生や社会人は仲の良いリアルな友人に何でも話せちゃう

どんなにSNSが普及しても、「実際に会って何でも話せる相手が欲しい」っていう思いは変わらないと思います。でも実際に会えないからLINEやSNSを使ったり、その話題で話せる相手が身近にいないからSNS上で話せる相手を探すのでしょう。先ほど述べたように20代後半〜30代の人は特にそれが顕著に現れています。

しかし、20代前半までの学生や社会人は、そのニーズはリアルな友人で満たされているようでした。CHAROPのリリース後のヒアリングで気づいたのは、結局はなんでも話せる関係性が築けていたら、その友人が興味がない自分の趣味の話題でも話せてしまうということでした。

相手もその趣味に興味持ってもらえたらラッキーだし、そうでなくても自分はこれが好きと開示することで、それ以降もためらいなくその話題を話すことができる。言われた側も好きな友達のことなら何でも知りたいので、嫌悪感は感じない。この繰り返しが何でも言える関係の構築に繋がると感じました。20代後半〜30代の人には、ここが構築できるほど密に会ったり、連絡するのは結構ハードなことじゃないかなと思います。

これらの要因から、20代前半に対する「SNSで人とつながりすぎて話せない」という課題の解決策としては、CHAROPが提案した「人とのつながりを排除する」ではなく、つながりを絞って本当に仲の良い子だけとつながるの方が強いバリューだったのでは?と考察しています。仲の良い子だけつながるTwitterの少人数アカウントInstagramの公開範囲を設定する「親しい友人」機能など、人数を絞ってSNS上でやり取りしている人が日を追うごとに増加していったのが実感としてもありました。


【誤算3】 コアユーザーが友達にサービスを勧めてくれない

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誤算1、2を受けて、サービスとして20代後半から30代の人にターゲットを変えて訴求メッセージを変え、改めてマーケティングするというピボットもあるかと思います。しかし、CHAROPではそれは難しいと判断しました。

その大きな要因が、現状サービスが刺さっているコアユーザーは、友人にサービスを勧めてくれないということです。現状サービスが刺さっているのは、「日常の中で言いたいことが言えない20代後半から30代の人」です。心の中に秘めていた言えないことを言える、この居心地の良い場所を人には教えないのです。

CHAROP自体は、好きなことで盛り上がるというバリューで、リアルな友人や趣味の友達に「ここで盛り上がれるから一緒にやってみない?」と勧める、というバイラルを想定していました。

「言いたいことを言える匿名SNS」というバリューでは口コミでのバイラルは期待しにくく、広告からの集客に頼らざるを得ないということ。またそれに加え、そのバリューだと愚痴や悩みなどネガティブな投稿が増えてしまうのでは?という懸念もありました。

また、チームとしてはCHAROPというサービスを通じて、自分を好きなことを人の目を気にせず好きなだけ話して欲しい、そこで一期一会のような出会いをするという今のSNSとは違うつながり方を体験して欲しい、という想いがあります。この当初から大事にしてきたコアとなるバリューを変えるということは、もうそれはCHAROPではないと思いました。これらの要因から、メインのサービスのバリューを変えてという手段は選択しませんでした。


サービスクローズという判断

私自身CHAROPというサービスが今後伸びる可能性がゼロだったとは思っていません。ユーザー数が増えたらもっと好きなことや趣味の話も増えたかもしれないですし、個人が特定されるリスクも減ってもっと人に紹介しやすいサービスになったかもしれません。

しかし、現状のサービスの状態では短期間にユーザーが爆発的に増える可能性は正直かなり低いですし、チームとしても会社としてもゆっくりサービスの成長を見守るという判断は難しいという結論に至りました。


投稿の気軽さは実現できていた

いくつかの誤算の中でも想定通りに成功したこともあります。それは他のSNSアプリよりも投稿の気軽さを実現できていたということででした。他のSNSのDAUに対する投稿率は多くてもせいぜい30%程度ですが、CHAROPは驚異の70%の数字を出していました。

投稿の気軽さに関してはチーム内で一番議論したポイントであり、デザインスプリントでも何度もその課題に向き合い、改善を繰り返した部分でもありました。改善を繰り返す中でユーザーの投稿やリアクションなどの数値が改善されていることも日々感じることができ、デザインスプリントはCHAROPでは効果的であったと思っています。


さようなら、ありがとう、CHAROP

サービス終了の告知後、多くのユーザーさんからサービス終了を悲しむ声が寄せられました。

「ここだけが私の居場所でした。もう話せる場所がなくなってしまう」
「CHAROPのなんでも受け入れてくれる空気感が好きでした」
「CHAROPを辞めないでください」

思うようにユーザー数が増えず、泣く泣くクローズの決断をしたのですが、CHAROPが好きで、サービスが終了してしまうことをこんなに残念に思ってくれる人がいることに感動したとともに、私たちの力不足でクローズという結果になってしまったことを申し訳なく思いました。

初めてのゼロイチプロジェクト。何もかもが手探りで、悩み、苦しむことも多々ありましたが、それでもここまでやってこれたのはCHAROPチームの皆さんのおかげだと思っています。時にはぶつかり、議論しながらも、チーム全員が同じベクトルを向いて、サービスの成功に全力でコミットしている。本当に良いチームでした。チームメンバーの皆さんには本当に感謝しています。

ケーキ

🎂リリース記念ケーキ🎂

失敗を失敗で終わらせないためにどうしたらよいか、今回の反省を次に活かすことだと思います。今回の経験で「あの時もっとこうしてたら」、「次はもっとこうしたら」という気づきや反省が色々ありました。
(今回は長くなるので上手くいかなかったという誤算の事実だけまとめましたが、そのうちもっとこうしたら良かったという改善の気づきについてもまとめたい✊)

やっぱり私自身はサービスを作るのが好きですし、世にインパクトを与えられるようなサービスを作りたいという気持ちは変わりません。この失敗の経験を私の大きな財産とし、この経験を活かしてまた新しい挑戦をしたいと思います。

最後に、CHAROPを愛してくれたユーザーの皆さん、本当にありがとうございました🙇‍♂️

\🐰 THANK YOU 🐰/

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