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[イーグルアイ 感想 85/100点] ※後半のみネタバレ有

「LINEをインストールするとインカメラから自分の顔を撮影され、犯罪に利用されるらしいぞ。」

などという陳腐な噂をかつて耳にした事はあるだろうか。

私は当時、完全に信じきっていた陳腐な人間であった。

なぜ信じていたのだろうかと阿呆らしくなるのだが、信じていたものは信じていたのだ。

周囲がLINEでコミュニティを築く中、私は頑なに同アプリケーションのインストールを拒み、1人、Twitter詮索と友達コレクションで自分だけの完全感覚コミュニティを築き上げるべく孤軍奮闘していた。
友達コレクション世界での私は唯一神と言っても過言ではない。
さながらキラの様だ。という住人たちの解釈一致があったとかなかったとか。

そのせいで失った現実世界の友達コレクションは数知れずだ。今やTwitterすらXになった。

しかしだ、私の当時の愚行は今作において大変意味を成す適切な処置であったと鑑賞後確信した。

思春期の黒歴史が肯定された気がした。ありがとうイーグルアイ。ありがとう友達コレクション。
祖母に私が告白した事もあったがそれも水に流そう。

それでは気になった点を前半はネタバレなしの見どころ、後半でネタバレの内容を踏まえて僭越ながら私の感想を述べさせて頂く。


1.できる弟、できない兄(ネタバレなし)


兄弟を持つ方なら特に、そうでない人でもジェリーの劣等感に少しでも共感してしまう人は多いのではないだろうか。


私個人的に大好きなトランスフォーマーで主役のサムを演じていたこともあり、大変馴染みのあったシャイアラブーフ。彼が演じたのは主人公ジェリー。

彼には優秀で全てをそつなくこなすスーパーエリートの弟イーサンがいた。

そのイーサンと双子として瓜二つの容姿で生を受けたがために、幼少期からずっと比較され続けてきたジェリー。

ジェリーはイーサンと違い、特段優れた能力もなく、なす事全てがイーサンに劣っていた。

決して不仲ではない。

両親の愛がないわけでもない。

だが、却ってそれが本人を苦しめている事もあるのではないだろうか。

比べられたくて何かをするのではないのに、いつも脳裏に浮かぶのは弟と比較される自分。

弟は良くしてくれる。なんなら自分のミスを庇ってさえくれる。いっそ弟が嫌な奴であれば、自分の能力の低さを弟のせいして楽に生きれたのに。
言い訳もできない。

世間から見れば一般的で不自由なく、なんなら恵まれているのにも関わらず、不満を感じてしまう自分にもいつしか嫌気がさしてしまう。

同じでなくとも、この様な経験をしたことがある人はきっと少なくないはず。

私も似た様な経験をしてきた。

そんな持たざる者ジェリーにスポットが当てられているので、彼がどう行動し、何を感じて、何を得て、どう変わっていくのか目が離せなくなるはずだ。


2.スピルバーグ総指揮のアクション(ネタバレなし)

冒頭でも少し触れた様に、今作は暴走した監視システムが主人公たちを巻き込んでド派手なアクションが繰り広げられる。

監視システムならではのアイデアが盛り込まれたアクションはこの映画でしか味わえない体験であり、大変興奮した。

前半からド派手な炎上とクラッシュが、原因もわからないまま続き、徐々に革新に迫っていくという話の展開も非常に引き込まれた。

それもそのはず。今作の制作総指揮はスティーブンスピルバーグが務めているからである。

もはや説明不要な説得力を名前で備えている巨匠だ。

通りで、主役がトランスフォーマーのサムなわけである。

スピルバーグのアクション、というだけで一見の価値ありなのではないだろうか。

3.総括(ネタバレ含む)

ジェリーが必要とされた理由

社会から必要とされず、父親からも煙たがられ、しまいにはAIにまでも兄の代役としてしか必要とされていなかったジェリー。結構きつい。人間が誰しも己なりに抱える承認欲求を真正面から木っ端微塵に砕かれたのだ。

正直ここで私はガッカリしていた。

ジェリーにはなにかマリアに選ばれた特別な理由があるのではないかと期待してしまっていたからである。

何ものでもない自分をジェリーに投影し、私は特別な存在であると期待してしまってた。ジェリーにそう証明して欲しかったのだ。

だがその後、FBIに思いを託され、ジェリーが自分自身の決断で、自分自身の命を捨てる覚悟で引き金を引き、自らの運命を切り開いた。

その結末を見て私はハッとした。

環境のせいだと思ったり、周りにならって導かれるように日々を送ったり、誰かに自分を投影し他力本願で運命が変わることを祈るのは楽で、選択も容易い。

が、どのみちを選択しても最後に決断を下すのは他でもない自分自身なのだ。

逆に言えば、大切な決断を自分で下せるからこそ、己を己足らしめているのである。

非常に良い終わり方であったと思う。

以上。

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