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DX時代におけるデータガバナーとは?

はじめに

DXで重要なものの一つとしてデータガバナンスがあります。よく一般的なコンサルではDXにおける「システム構成図」は出すのですが、このデータガバナンスについてしっかり触れていないのもあります。
これは推測ですが、彼ら自体が体験していない、気が付いていないせいではないかと考えています。今回はこの「データガバナンス」およびそれに携わる人=「データガバナー」について説明したいと思います。

データガバナンスはなぜ必要なのか?

DX時代では、どんどんデータが生み出されていきます。これは会計中心のデータ(業務処理系データ)の比ではありません。IoTからのデータ、POSデータ、営業時点における情報、顧客導線情報・・・ありとあらゆるものがデータ化されていきます。
しかし、貯めるだけでは何ら意味は有りません。それを活用して初めて意味を成します。そして、その活用のためには「データの生成、利用タイミング」、「データ接続」、「データ分析」などが重要となってきます。

データ利用のタイミング、データ精度

今まで顧客コードなどを保有したマスターデータは業務系にあったと思います。これは会計入力に必須だからです。また、実際に取引が発生した際に更新が必要となるものです。
ですが、実際の取引前の行動=例えば営業中の場合を考えたらどうなるでしょうか?営業データを考えるのであれば、まだ取引が発生していない顧客、商品のマスターも入っている必要があります。つまり、データが必要となる「タイミング」が異なるのです。これに応じたデータメンテナンスが必要となります。
具体的には、「営業先顧客」。会計システムでは、取引が発生した顧客コードだけ持っていればよかったわけですが、今後は見込み顧客などのマスターデータも必要となります。つまり、取引がされる前にマスター登録されている必要があるという事です。

また、会計に必要となる顧客データ、精度と営業時点で必要となる顧客データ、精度が異なります。会計であれば、相手先住所などが重要でしょうが、営業の場合は、その部署、相手担当者情報の方が重要となるわけです。同じ「顧客マスタ―」と言ってもその内容、求める精度が異なるわけです。

引合データ?

「会計データにも営業情報を入れてるじゃないか?引合はそれでは?」と言う意見も出てきそうです。ですが、会計システムにおける「引合」情報入力は実際の営業における「引合」とは似て非なるものです。
会計システムにおける引合入力は後の取引入力のプレ入力のような位置づけです。意味が異なります。

システム連携としてのデータガバナンス

そして会計システムだけではなく、目的に応じた様々なサブシステムが構築されることになります。そのシステム間連携がDXでは重要となります。
このシステム連携で最も重要となるのが「ID」です。
IDが異なっていては、システム接続が困難となります。
実はIDについては2種類あります。
1)参照系ID
2)完全ユニークID
1)はとにかく今、そのモノを識別(Identify)できれば良いという考え。JANコードなどが例に挙げられるでしょう。この参照系IDの特徴は「(桁数制限があったりするので)使いまわしされることがある、という事です。
つまり、10年などの長い期間で分析しようとしたら、もしかしたら違うものをポイントしてしまうかもしれないという事なのですね。似たようなものとしては、証券取引での4桁の「証協コード」があります。これも使いまわししますし、この場合は、会社の合併などもあるわけです。これらをきちんと認識している必要があります。

次に重要となるのが、その内容データの定義。
データの中身は何か?「売上」とあるけど、その計上基準は何か?注文書受取時点?検収時点?支払い受入時点?
営業の場合、注文書時点が見たい場合もあります。会計的に考えれば、検収基準、受け渡し基準でしょう。と言うように、同じ「売上」と言うだけでも意味が異なります。
さらに、それが更新されるタイミングも重要です。会計データの場合、データを受け取ったとしても確認の時間がありますので、即時には不可能です。要は業務プロセスを理解していなければならないという事です。

分析としてのデータガバナンス

会計データの場合、一度経理処理して締めてしまった後は、そのデータ自体を修正しません。つまり、きちんと仮定も含めて記録するわけです。
ですが、分析データの場合は、過去データも修正しなければならないケースがあります。
プラント系ビジネス+保守メンテナンスを行っている場合を考えてみます。
メンテナンスによる経費を計上するわけですが、これが「施設構築時の瑕疵」なのか「単なる故障」なのかわからない場合があります。まずはメンテナンス科目で計上します。その後(会計期間締め後)、調査の結果、「これは施設構築における瑕疵」と判明しました。そこで振替処理をします。
ですが、保守データでの分析で考えるとなると、このデータを使った場合、ゴミ(ノイズ)が乗っていることになります。時系列に分析するとなれば、過去データに遡り、データそのものを修正しておく必要があります。
会計データにおけるデータメンテナンス要件と、分析データにおけるデータメンテナンス要件が異なるという事を意味しています。

以上、簡単に説明しましたが、ざっと見ただけでもこれだけの事柄が列挙されます。おのずとデータガバナンス、そしてそれに携わる人々の重要性がわかっていただけたと思います。(まだまだ語り切れていないです。)
早い話、今までは会計系(業務処理系)のデータがほとんどだったのですが、今後は、情報処理系のデータが増えてくることになり、さらに活用方法も多様化するわけです。この分野のデータガバナーが必要となるのはすぐにお気づきと思います。

データガバナーは社内に存在するのか?

経理部は会計データのデータガバナー

実はすでにデータガバナーは既に社内にいるのですね。
経理部がまさにそれです。経理部は、会計データにおけるデータガバナーであるという事ができます。
そもそも会計処理を行う場合、科目定義、それに合わせた仕分け修正などが重要となるわけです。当然、数字の正確さも求められます。
まさにデータガバナンスを求められるところであります。
データガバナーとしての資質を持ってい人たちと言えます。

営業補佐の人々

これと同様に、営業系、分析系のデータガバナーも必要となる、と考えるとわかりやすいかと思います。こちらは…と言うと、営業などの補佐をしている方々に潜んでいる可能性があります。
俗に言う「縁の下の力持ち」ですね。
おそらく今は、
「私がこのデータをきちんと修正管理していないと、大変なことになる。」
と言う思いから業務を行っている方々です。
かなりの高い確率で、上長や経営者から気が付かれていない人財と言えます。(上長や経営者はその方々が作っている結果のみしか見ていません。その過程について気が付いていないケースが多いのですね。)
要は、今後はこれらのデータ管理を行っている方々に対しフォーカスを当てていくというのが重要と考えます。

データアナリスト?データサイエンティスト?

この話をすると、中では「これってデータアナリストを雇えば(育てれば)良いのですか?」と言われる方々もいます。
ですが、巷にあふれている「データアナリスト」「データサイエンティスト」は与えられたデータをもとに(それを正しいと思い込んで)分析をしている人々です。優れた「データアナリスト」「データサイエンティスト」はデータそのものに関しても考察する「データガバナー」であるべきなのですが、そういう方々は非常にわずかです。ほとんどが「ツール使い」「統計使い」レベルでしょう。

早い話、きちんとデータ活用、分析ができるようにお膳立てをしている人々となります。そして、社内データにおいてはそこに問い合わせれば明確にわかる。そういう人々を育てていく必要があります。

最後に

このようにデータガバナンス、データガバナーが今後のDXに必要不可欠であるという事がわかると思います。
DXは単にシステム連携の話ではないです。そこに存在するデータをどう管理するかで活用できるかどうかが決まるという事です。これがきちんとできていなければ、分析もAIもできません。ゴミデータからはゴミしか出ないのです。その意味では、DXを支える根幹機能とも言えます。

もし、もう少し詳しく話が聞きたいとお思いであれば、お気軽にお問い合わせください。






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