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依存できるからこその自立ー広石コラムVol.13

年齢を重ね、気が付くと周りに色んな道のスペシャリストが増えていました。皆それぞれの分野での経験を積み重ねてきて、色々話をしていると自分の得意不得意についても考える時間になったりします。こちらのコラムは、今の自分自身について考えたり、これからの状況を乗り越えるヒントになると思います。(事務局 新村)
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千代田区には、子育て家庭のためのイベントを開催するサークル「ちよママ」があります。
その主宰者の一人、勝連万智さんが、こう話してくれました。「よく仕事と子育てのバランスを取ると言いますよね。その前提には自分の10070:30に割るとか、50:50に割るイメージがあると思います。でも、それって結局、どっちも中途半端なんじゃない?と思うのです。私は仕事も子育ても目一杯したいと思ってしまうのです。そうすると、当然自分の100は超えてしまう。だったら、その分はアウトソースすればいいんじゃない?と思うのです。一人でできないことは家族や他の人と一緒にする。それが、ちよママの原点なんです」

この話を聞いて、僕が地域活動の講座で話す「活動は、できないが鍵!」を思い出し、とても共感しました。活動を始める人は、「こんなこと実現したい」「社会を良くしたい」という思いから始まります。しかし、少し動くと、色々な難しさがあることに気付きます。壁も多くあります。「あったらいいのに」と思う活動がないのは、それなりの理由があることがわかるのです。そんな時に「自分の力の足りなさ」を痛感します。

実は「自分の力の足りなさ」を実感できた時が、活動の広がる芽が生まれる時なのです。「実現したいこと」「自分の力」のギャップがあるからこそ、そこに他の人の力が必要なことがわかります。ギャップがあるから、他の人が自分の夢に入り込む余地が生まれます。そして、「自分のできない」をしっかり自覚できる人は、「他の人のできる」を認めることができるようになります。「自分のできない」「他者のできる」が見えた時、活動が広がるチャンスが拓けるのです。

よく「私は何もできないから・・・」という人がいますが、そういう人に限って、自分の力で何とかしようと自分で抱え込む傾向があります。「自分のできない」をしっかり自覚しないと、「自分のできる」も見えてきません。本当に「何もできない」という人はいないのに、「何もできない」と思うと、「自分のできる」=「自分でできる範囲」も見えてこないから、自分でしようとしてしまいます。「できる/できない」は、いつもセットなのです。

社会活動家の湯浅誠さんが、以前、NHK「視点・論点」で「自立」について話していらっしゃいました。「他に依存しないことが自立なのか?」と湯浅さんは問いかけます。「障碍者の人はエレベーターがなければ階を降りれないが、健常者は階段でも避難ハシゴでも降りることができる。つまり依存先のたくさんある人が、特定の依存先に強く依存せず、それに支配されたり、自らを委ねたりする必要がなくなる。毎日の暮らしを、他人の手や公共物など手に届くたくさんの選択肢の中から、悩みながら、試行錯誤しながら必要と思うことを選び取り、自分の人生を築いていける。それが自立ではないか」

子育ても、介護も、ビジネスにおいても、「自立」とは自分の力で何とかすることではなく、たくさんの依存先を選択肢として持てていることだという考え方は、これからの時代、ますます大切になっていくでしょう。

たくさんの依存先を選択肢として持つには、多様な人とつながり、機会を知り、そこに参加もして、関係性をつくっていく必要があります。そのような関係をつくる場を広げていけたらと思います。
                     エンパブリック代表 広石
                        (2018年12月14日記)
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コロナで自粛期間中に、売り上げの減少した飲食店が宅配サービスを始めた際に、配達手段としてタクシーの運転手さんに配達を頼んでいたり、観光業がダメージを受けた時期には、旅館の従業員の方達が農家にお手伝いに行ったりといったお互いに得意分野を出し合って、乗り切っている方々の姿をメディアが報じていて、まさにこのコラムに書かれていたことが積極的に行われているなと思って見ていました。出来ないと諦めてしまったら、そこで終わってしまったかもしれない事も、それが得意そうな人に声をかけてみることでプラスになって広がって、皆が助かるって素晴らしいなと思いました。こんな時だからこそ、人との繋がりの大切さを実感します。(新村)

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