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「女性のカラダやコンディションへの理解を深めるために、もっと家族や仲間、会社で話し合うには?」

スポーツトレーナー であり、株式会社AILIFE代表の大橋優花さんをゲストにセミナーを開催しました。ゲストの大橋さんは、ご自身の女子サッカー選手としての経験をふまえ、スポーツトレーナーとして多くのアスリートの活動や成長をサポートしています。スポーツに取り組む子どもたちや女性アスリートの活動と成長、それを支える人達に数多く接して来られました。

株式会社AILIFEの代表として、「女子アスリートが成長できる環境づくり」「女性がスポーツ現場で働き続けられる環境づくり」を掲げ、現在はスポーツチームのコンサルタントを、オンラインを中心に行っていらっしゃいます。

株式会社AILIFE

株式会社AILIFE代表の大橋優花さんの活動

まず大橋さんからご自身の活動の紹介をしていただきました。
スポーツのトレーナーとはどんな仕事なのか。
ケガからのリハビリをサポートしたり、栄養やメンタルなどコンディション管理のアドバイスを、チームの要望に応じて対応していく仕事。
その中でも特に女子アスリートが成長できる環境づくりの確立、そしてスポーツ現場で働く女性の働き方改革のサポートや情報発信を続けていらっしゃいます。

興味深い点はそれを主にオンラインでやっていらっしゃること。
北海道という地方でスポーツをされていたご自身の体験から、
地方のアスリートたちにも最新のスポーツ医療や科学を届けたいという想いがあるそうです。

接するアスリートやチームにある課題としては、男女問わずの問題ですが、怪我からの復帰の難しさ、
適切なトレーニングの提供、そしてチームとしての成熟などの悩みに接することが多いとのこと。
思春期の女性アスリートたち特有の悩みとしては、生理による体調不良やパフォーマンスの低下およびそのコミュニケーションの問題。
中学から高校にかけてはホルモンの関係で体重が増えやすいこと、月経痛との付き合い方、メンタル面での不安定さ(女性の方がその傾向が強いそうです)、
あとはコロナで人との関わりが減りサポートやヒントを得る機会が少なくなっている状況などもあるとのことでした。

セミナーに参加してくださった男性メンバーからは、

「男性がどう女性を支えていくのか、必要な役割などを女性の視線から聞けたらと思って参加しました」「会社で働いていても、女性の体調のことまで気が回ってない。気づかえることはないか、そのきっかけになれば」

というコメント。

女性メンバーからは

「最終的には男女の枠はなくなったほうがいいと思っているが、今は過渡期で、社会にも私たちにも知恵がまだ溜まってない。そういう意味で大橋さんの活動は素晴らしいと感じた。そしてオンラインを使ってると、女性の身体の話がけっこうしやすいことにも気づいた。リアルな場で目の前に男性がいるとちょっと話しづらいことも、ZOOMだとみんなフラットに話ができる。ジェンダーの問題がZOOMで前に進む。大橋さんのZOOMでの活動は素晴らしいなと思った。あとは個人的に女性の”(性的に)見られない権利”に関心がある。」

たしかにこのテーマはリアルよりもオンラインのほうが話しやすいかも、と参加者の皆さんも同意されていました。

理学療法士として学校へのアクセスもある方からは

「若い女の子たち、そして親御さんも、婦人科を受診するときに抵抗があると聞く。彼女たちをどう支えていけるかを考えたくて、参加しました。」

というコメントがあり、

これに対しては大橋さんから、「北海道だと婦人科を受診することに抵抗がある子/家庭が多いが、千葉では抵抗ない方が多い。」とのことで、
地域差があること、ローカルの施策で女性の体のケアに対する意識啓発することで、女性の身体をサポートしやすい環境が変わりうる可能性を示唆されていました。

続いて淵上から、日本と世界の動きについての情報共有がありました。

SDGsの「健康」(ゴール3)と「ジェンダー平等」(ゴール5)下のターゲットに「女性の性と生殖に関する権利(リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)」が記載されていること。
スコットランドでは、2020年に生理用品の無償提供を義務付ける法律 、「生理用品無償提供法」が制定され、2022年8月15日に施行されたこと。
ニュージーランドやフランスでは、政府がすべての学校で生理用品の無償提供を行うことを発表したことなどがグローバルの動きとして紹介されました。
経済的な理由で生理用品が購入できないこと、また生理が理由で学校を休む生徒がいることは、女性の教育機会の損失に繋がるという理由によるものです。
これについては副次的に男子の生理への理解にも繋がるのではと個人的には思いました。

そして日本の事例紹介が続きます。

「就業が著しく困難な場合」に従業員が申請した際に付与される休暇として、生理休暇制度が労働基準法で定められていること。
しかし厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、生理休暇の申請者がいた企業および事業所の割合は 3.3%、生理休暇を申請した割合は0.9%という結果で、活用は全く進んでいないという現状があること。

ポジティブな動きとしては、日本でも、これまであまり認識されてこなかった、生理の貧困や、その要因となっている女性特有の課題に目が向けられつつあります。
具体的には、東京都立の250校では、2021年9月から公費で購入された生理用品がトイレに無料設置されていることや、
タブーとされがちな女性の健康課題について世界各地の声を集め、オープンに語り合うことを通して、
女性たちのQOL向上やエンパワーメントに貢献しようという試み“「Let’s talk! in TOKYO”(https://letstalk.tokyo/)などがあることがシェアされました。

これらの共有を経て後半は、「家族や仲間、組織の中で、女性の生理や身体の変化について、どうしたら話がしやすいか?」
「自分の身近な場所で、どんなことができるか?」をテーマに、3つのグループに分かれて対話を行いました。

ルーム1

会社で全く生理休暇が使われてないこと。上司の理解やいいにくさに加えて、
「仕事を休むと契約を競合他社に取られてしまう」ことが心配で、という自分の体よりもビジネスが優先されてしまうという事情もあるというお話。

ルーム2

学校現場での教育の必要性、そして女性自身が自分のカラダのことをきちんとわかってる人少ないのかもしれない、オトナも知識を得ることが大事では、という意見が挙がりました。

ルーム3

女性が自身の体調のことを言いにくいのはやはりなにかしらの権力関係があるからであって、ジェンダー平等すすんで社長や上司が女性になれば一気に変わるのではないか、というお話。意識よりも環境を変えることの重要性という視点が示されました。

最後に大橋さんから、
スポーツ業界の外の方のお話を聞いて、自分が今やっている活動の励みになった。ひとりじゃないんだなと思えた。
もっと若い子たちの相談にたくさん乗れる、話を聞いて欲しいと思われるような人として素晴らしい存在になっていきたい
」という感想をいただきました。


参加者の皆さんからの感想もいくつかピックアップして紹介します。

「このテーマで話をする機会が少ないので、みなさんがそれぞれに悩んでいることを聞けて刺激を受けました。男性ができる環境づくりを考えてみたいと思いました!」(男性)
男性の方もいらっしゃる中で生理のことを話せてとてもよかったです。耳を傾けてくださる男性がいるというだけでも心強い・・・!どうもありがとうございました。」(女性)
今まで、このテーマで同業者との話はしたことがありましたが、色々な方と話せてすごく新鮮でした。ありがとうございました。」(女性)
「私が生きている間に、スポーツの世界くらいの感じで、女性の身体についてなどフラットに話せるようになると良いなと思いました。」(女性)

ほかにも、参加する前より話したいことが増えてしまったという感想や、女性のことを理解しているような言動や環境が逆に女性の自尊心を低下させてしまうこと
(好意的差別、という考え方があるそうです)について、いつか色んなひとと話せたらいいなと思っているというお話もいただきました。

開催するまでは、中年男性がこういう話をテーマに対話をするということに、若干の遠慮や躊躇がありましたが、
大橋さんの前向きなキャラクターと女性アスリートを支えるんだという強い気持ちに引っ張られたこと、
また会場からの意見にもあったように、オンラインという場のフラットさと非身体性もあり、普段は話すことができないことを話せる場になったように思いました。

職場や組織、そして家庭内でも、大橋さんのような前向きに話を受け止めてくれる存在、
フラットな対話の場の設定ができれば、生理の話、性に関する対話を少しづつ広げていくことができるかもしれません。
また、男目線ではフラットな場だと思っていても、女性からするとそうではない場もたくさんあるのかもしれないということにも気づきました。
生理のそしてもっと深めてみたい、話をしてみたいトピックもたくさん出てきました。
今回はスポーツという分野から女性の性の話を掘り下げる対話の会でしたが、次回も別の角度から、生理のこと、性の話、そして女性が抑圧やプレッシャーを受けない社会とはどういうものなのか、対話の企画をしてみようと思っています。ご期待ください!

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