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かつては浮気、今はロックダウンで殺される女たち

キャットコーリングやセクハラの話に続き、今日はDVや女性が被害者となる殺人事件の話。
イタリアでは「女性=femina」と「殺人=omicidio」からの造語(?)で「女性が被害者の殺人=feminicidio」という言葉が使われており、このところこの言葉がニュースで飛び交っている。というのも、昨年から断続的に続くロックダウンの影響で家庭内での女性の被害はさらに増えていて、2020年では、この手の事件発生率は前年の10%近くアップし、3日に1度は女性が被害者となった殺人事件が起きているいう計算になるのだとか。

これまでのイタリアでは、女性が殺される事件の原因としてよく聞くのは「情のもつれ」というやつではなかったかと思う。ニュースを見ていても、新しい彼氏ができた元カノや浮気が発覚した妻を、嫉妬と独占欲から逆上して殺してしまう一般の男(犯罪歴や性格的問題は特にない普通の人)が結構いた(今もいるが)。逆のパターン、つまり女が元カレや元夫を殺すというのはあまり聞かないから、やはり女というのは過去には執着しないもので、その一方男はいつまでも引きずりがちなのだろう。特に嫉妬心の強いイタリア男においては。

恋愛観の男女差の話はさておき話を戻すと、過去の男尊女卑が当たり前だった時代にイタリアでは、浮気した女性を殺しても軽い罪で済む、というような決まりがあったそうである。もちろん現在はそんなことはあり得ないが、もしもイタリア男の意識の奥深くにその当時のことが今もすり込まれているのだとしたら、恐ろしい。

ちなみに、同じイタリア人でも嫉妬深くて激情的なのはやはり南イタリアのほうだろう。一般的な決めつけはよくないが、基本的に私たち北イタリアの人間は冷たくてドライだ。2020年の女性被害者の殺人事件の地域別内訳として、北部イタリアは前年比に対してアップしている一方、中・南部イタリアでは減少していると言う結果が出ているそうだ。つまり、この結果を勝手に分析すると、ロックダウンで家から出られないので、浮気や不倫(少なくとも肉体的接触)ができないなか、自動的に情のもつれによる女性殺害は減る一方で、これまで「情のもつれ殺人」の少なかった北イタリアでは、そんな皆が家の中に閉じ込められる状態においてDVが増え、ひいては殺人沙汰になってしまったりする・・・というわけなのではないか。

DVに関しては、それを公にできない女性たちもたくさんいるので、表面化している以上に問題は深刻だ。それを苦にしての自殺者も増えているらしい。家の中で安心して暮らせないなんて、なんと恐ろしいことだろう。情のもつれで殺されるのも、浮かばれないが。

( thickfogyukiさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございます)


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