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イタリアではどこからがセクハラなのかわからない

昨日はついイタリアのコネの話になってしまったが、本当はセクハラについて一言いいたかったのだ。残念ながらどこの国でもセクハラはある。枕営業はショービジネス界ばかりが取りざたされるが、他の業界でも仕事をちらつかせて肉体関係を迫る男はいるものだ。そこまで行かなくても、上司、またはクライアントだという優位な立場を利用した、言葉や小さなアクションによるセクハラについては、至る所で横行している。前者に関しては、ついて行った時点で女性側の同意があったことになったり、ケースごとに細かい事実関係を調べる必要があって闇が深いので、今回は後者についてイタリアの話をしたい。

女性を見るとすぐ口説いてしまう(何か言ってしまう)うえに、下ネタ大好きなイタリア男。コロナ前のアンケートではイタリア女性の40%以上(880万人強)がセクハラ被害の経験があると答えたとか。イタリア女たるもの、多少の下ネタくらいはひらりとかわす強者だし、みんな自分に絶大な自信があるから多少否定的なことを言われても効かないのが常なのだが、そんな強者がセクハラだというくらいだから、それはもうまさに真のセクハラなのだろう。そして多くの女性が泣き寝入りしているという調査結果も出ている。

つい先日、アウローラ・ラマゾッティというイタリアのとある二世スターがキャットコーリング=セクハラ野次(女性が男性に道端で野次を飛ばされたり、口笛を吹かれること)についてSNSで言及したことで、議論が起こっている。世論的にはこの意見に賛同し、キャットコーリングのようなことはあってはならないという意見が多い。が、その一方で「キャットコーリングってきれいな人がされるものよ」という、女性からの「ブスは黙っとけ」的なコメントも多かったらしい。女の敵は女。恐ろしいことである。

だからこの二世スターに味方すると言うわけではないが、私が思うに、イタリア男たちが道行く女性に「美しい」だの「花のようだ」だの言うのは普通のことで、誰にでも言う挨拶のようなものなので、この二世スターがブスかどうかはそれほど関係ない。ただ、それは逆に言えば、女性への賞賛とハラスメントの線引きが難しいこということにもなる。そんなこんなで、実際のところ、イタリアでセクハラ野次を犯罪として成立させるのは現状では厳しそうだ。

とはいえ、お国柄だからといってすまされるものではない。言われたほうの女性には、それが罪のない“賞賛”か、悪意のある“ハラスメント”かはすぐわかる。前者でも別に嬉しくもなんともないが、後者は犯罪だ。そもそも言っている側は、何が楽しいのか。それが良いことだと思っているのか? 多少の冗談や下ネタ、体や性に関することでも賞賛なら、場を和ませる潤滑油になるとでも?

(写真はAurora Ramazzottiのインスタページより)

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