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ビジネスxデザインの海外ニュースと雑感(2020.07.12)

今週も最近読んだ海外記事の中で、社会変化を予感させる「ビジネスxデザイン」に関する情報を、一言添えてご紹介します。

前回分はこちらです。

時代が変わっても本質的に変化がないものを抑えつつ、急速に社会変化が進むなかで、グローバルの動向をウォッチしていこうと思っています。現代人が1日に受け取る情報量は江戸時代の1年分だったとも言われ、ますます、最新の情報を高速にキャッチしていくことが重要です(元記事)。

高級ブランドが社会事業から学べること

https://www.voguebusiness.com/companies/elevating-artisans-what-luxury-fashion-can-learn-from-social-enterprises

ファッション業界では、社会事業(例えば、給料の低い職人とコラボしたブランドなど)は非常に小さなプレイヤーでしかないが、高級ブランドが学べることがあるという。例えば、one432というパキスタンの靴ブランド(https://www.one432.com/)は、ロックダウン中に事業のピボットを余儀なくされた。外出の機会が減った消費者に対して、靴ではなく、在宅勤務用のパーカーやTシャツに切り替えた。このピボットは非常に早いスピードで行われたが、それを支えたのがローカルのサプライチェーン(職人たち)との関係性だった。同様に、ロックダウン中でも、大きな工場ではなく、職人たちは自宅で仕事をすることができたという。こうしたスタートアップは、社会事業と言われ、利益を追求するというよりも、職人たちの給与水準をあげることに寄与していたり、お互いの人間関係をリスペクトしていたり、有事の時にフレキシブルなサプライチェーンが事業の強みとなっている。特に途上国の職人たちは、大量生産型のブランドに価格や品質の面で勝てないため、職を諦めている人が大勢いるという。職人たちが働く機会を得るためには、こうした社会事業によって、デザイン性やストーリー性でブランド価値を高め、大量生産型のブランドが提供できていないものを創ること重要で、そのことにより、職人たちの自信といった人間性の追及にも繋がるだろう。

都市のクルマを禁止する社会実験

都市の道路は"クルマ"によって占領されている。日本でも2車線あるうちの1つは停車中の車で通行できなかったり、狭い道にも所狭しと車が並ぶ光景をよく見かける。しかし、オランダなどの一部の国では、コロナの影響で思いがけず、都市の車を締め出すという自然な社会実験になっている。3密を避ける必要があるため、歩行者の道幅を広くとるよう、車のルートと歩行者のルートを分けるなど、規制が行われている。また、これまで遠方までドライブに出かけていた人が、感染リスクを抑えるため、家の周りで遊ぶなど、行動の変化も見られるという。都市開発の専門家は、こう行った変化に対して公共団体は理解を示し、実験をしながら発生する問題を解決していくことで、新しい形の"生活者のための道路"が戻ってくるかもしれないと期待する。私の近所でも、電車やバス、自家用車を用いた、移動が少なっていると感じています。近くの公園には以前までには見られなかった賑わいがあるなど、生活圏が地元に回帰し、それに連れて、道の使い方も(子供とボールで遊ぶなど)変わってきているのではないでしょうか。

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[Photo: courtesy City of Ghent]

失われた"空気感"のやりとり

新型コロナウィルスの危機により、私たちの働き方は大きく変わった。職種にもよるが、オフィスに出勤して顔を突き合わせて働くスタイルから、自宅でリモートによる遠隔で働くスタイルへと変化した人も多いだろう。私たちが新しい働き方に対応するなかで失ってしまったものがInformal Feedback (空気感のやりとり)だと考えられる。オフィスではちょっとした休憩時間に話をしたり、プロジェクトメンバーが話をしているのを横から耳に入るなど、知らず知らずに、緩やかなコミュんケーションをとることができていあ。しかし、リモートワークでは、テレビ会議を設定する、チャットを打つ、電話をかけるなど、全てのコミュニケーションは能動的に行わなければならなくなっている。4月に行われたアメリカでの調査によると、従業員が燃え尽き症候群に陥る理由の45%は、コミュニケーションの欠如が原因だと言う。私たちが想像するマネージャー(上司)からのフィードバックはもちろん、従業員の指揮を高めるが、それ以上に、同僚からのフィードバックはモチベーションに繋がるという調査結果が得られているという。トップダウン型のコミュニケーションスタイルだけでなく、分散型の組織体制による、横との繋がりの重要性が高まっているのではないだろうか。

あなたは何を自動化したいですか?

毎週、Derek Siver氏(ブログ著者のデレック・シバースは、元ミュージシャンで、オンラインCDストアのCD Babyの起業家)のブログから抜粋しています。Derek氏は、Gmailのオートコンプリート機能(最初の文字を打つだけで文章を予測したり、宛先を自動で入力する機能)にうんざりして、Gmailを使うことをやめたという。その理由として彼は、"auto"とか"smart"と名のつくもの全てがそうであるように、何かが裏で操作している感覚をメールには求めていないと説明している。むしろ、"Full Manual Control(完全なるマニュアルな自由度)"をメールという行為には求めているそうだ。これは完全にDerek氏の好みだと思うが、次の3つの点を考えることが自動化することと、自動化しないことを分けるのではないかと考える。
・あなたはその行為をすること楽しんでいるか?
・あなたはどれくらいその行為が得意(専門家)なのか?
・あなたは自動でアシストされることが欲しいだろうか?
皆さんはこれから迎える自動化・AIの時代のなかで、何を自動化して、何を自動化したくないですか?

常識と行動の変化が求められる時

世界のビジネスプロフェッショナルに支持され続けている経済誌のエコノミストから。世界中でコロナの第2波の影響を受けてはいない。現在も第1波でさえ乗り越えていない国が大半だからだと考えられる。治療やワクチンなしで1番大きな課題は「人々が行動を変えることを学習するかどうか」だと述べている。日本では常識化しているマスクの着用や3密の回避は世界ではまだ当たり前ではない。ヨーロッパやアメリカの一部の人たちは、去勢をしているように見えるからという理由で、マスクの着用を拒む人もいるという。また、手洗いの実施をしない人、数ヶ月以上の間、パーティーをせずにいられない若者たちがたくさんいるという。このような「社会常識の変化」が求められる場合、歴史的にみて対応に時間がかかると言われる。エイズは安全な性行為と清潔な注射器によって防ぐことができるが、数十年かかって封じ込められたことが知られている。「行動を変える」ためには知識や情報を信頼することが重要であるが、世界では政治家を信じない人も多く、ルールを守るということは当たり前のことではないようだ。私たちはコロナウィルスへの関心を徐々に失って行くかもしれないが、コロナウィルスは私達のことを忘れるわけではない。

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コロナの状況によって我々のライフスタイルや経済環境、グローバルな移動が変わるなか、ますますマクロ環境の変化をウォッチする重要性が上がっているような気がします。毎日SNSをなんとなく見る時間を、能動的なインプットの時間に変えていきたいと思っています。

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash


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