鬼相手にマウントをとる
「うちはご先祖様が鬼退治した家系だから、ほんとは豆まきしなくていいんだぞ」
今は亡き父の言葉だ。
そう言いながらも、実家にいたころは毎年節分には豆まきをしていた。
父と一緒に。
各部屋を回り、豆をまきながら声をそろえて叫ぶ。
鬼は外 鬼は外!
福は内 福は内!
鬼の目ん玉ぶっつぶせーーーー!!
うん、けっこう物騒。
さすが鬼退治の家系、容赦ない。
ひとりで暮らすようになってから、豆はまいたりまかなかったり。
今年は何もしなかった。
だって思うのだ。
退治された相手の子孫なうえに、毎年笑いながら目ん玉つぶしにかかってくる家にわざわざ来ないよね。
それならもっと行きやすい家あるでしょ、と、
けっこうなビビりだが、節分の鬼には負ける気がしない。
やはり血のなせる業だろうか。
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